テューリンゲンの庭師

牧ヤスキ

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愛について

5-26

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朝、シムは重い瞼をあげる。
すると自分の身体はカスパルの腕の中にいた。


カスパルはシムを抱き込み密着したまま目を閉じ静かな寝息を立てていた。

「……、…」

シムはカスパルのその穏やかな顔に、昨晩何をされ何をし合ったのか走馬灯の様に鮮明に思い出し息をとめた。

どうしようもなく赤面し、汗の垂れる顔をどうにか反対側にしようと身体を捩った瞬間、全身が筋肉痛の様な激しい鈍痛に悲鳴を上げそうになる。


「っ…痛…!」

全身の中でも肛孔は特に突き抜ける鈍い痛みでシムは顔を歪ませた。

痛みに震え身を捩るシムの動きに気づいたのか、カスパルもまた目をゆっくりと覚ました。

「痛むか?」


不意に声をかけられたシムはびくりと肩を震わせるも、あまりに恥ずかしくカスパルを直視することが出来なかった。


「はい、…少し……あの…」


羞恥で上擦ったシムの声を、カスパルは痛みからそうなっていると思ったのか申し訳なさそうに眉を潜めて抱き込む腕に力を込めた。

「意識を飛ばすまでお前を貪ってしまった、すまない…」


カスパルの謝罪にシムは慌てて痛みに耐えながら首を振った。
カスパルが謝るべき事ではない。

寧ろ快楽を甘んじて受け止め、淫らに喘ぎ続けた自分が愚かで恥ずかしくて消えてしまいたくなった。



「俺はシムに気持ちを伝えられただけでもう十分な程に幸せ者だと思っていたが、お前が俺を愛してくれていると知った時…どんなに嬉しかったか。

もう俺はシム無しでは生きては行けない。」


シムは恐る恐る振り向き、吐息が肌にかかる程近くにあるカスパルの顔を見た。

「…カスパルさん、」


カスパルは出会った時の太陽の様な微笑みでも、昨晩の妖艶な獣の表情でもなく、甘く蕩ける様な眼差しで微笑んでいた。


「絶対にシムを守る。
何に変えてもお前の全てを誰にも汚させない。」

まるで軍人として称号を得る式典の時の様に、強い意志を滲ませて放つ言葉はシムの心をとても熱くさせた。



「…俺も貴方を一人にしません。
貴方のどんな姿も愛します。」


シムもまた強い意志の滲む声色でそう告げる。

もうこの二人の間に、身分の差や同性という障壁は瑣末なことのようだった。
カスパルとシムという人間同士が惹かれ合った尊い愛だった。






シムとカスパルはその後もカスパルの出勤が迫る時間までベッドの上で互いを見つめ合いながら時に笑い合い談笑した。


シムは朝起きると綺麗な肌にサイズの合わないシャツを着せられており、あんなに汚したベッドのシーツも取り変わっていた。

夜シムを寝かせる前に色々と片付けたカスパルに改めて礼を言った。

「…昨日はあんなに汚してしまったのに綺麗にしてもらって…有難うございました。」

「俺が無理させたんだ。
あんな状態で寝かせられない。
…昨晩はとても、幸せだった。」

カスパルのその言葉にシムは瞠目し赤面する。

シムの身体はもう触られていないところはないのではないかと言う程に全身愛撫を施されたそのどこもかしこもまだジンジンと快感が残っている様だった。

「…は、はい……とても…………」

消え入りそうな程にか細い声で肯定した後直ぐ様カスパルを見る。
幻滅しているだろうか?自分は淫乱なのだろうか?見損なっているだろうか?不安な想像は溢れて止まない。

しかしカスパルは嬉しそうに微笑むだけで、シムの不安がる顔は一度もしなかった。


「…そろそろ出勤しないと。
名残惜しいが。」

そう言ってカスパルはその身を起こす。

シムは大きなシャツを着せられていたが、カスパルの上半身は何も身に纏っていなかった。

改めて見ると武人として完成されらた綺麗な筋肉と形に、引き締まった腕にシムは思わず見惚れてしまう。


こんなに近くでこの人のこんな姿を見る事が出来る未来なんて、テューリンゲンにいた頃では予想もつかなかった。

先程まで抱き締められ続けた温もりが離れていくのが寂しく、シムも慌てて起き上がりベッドから離れようとするも気づいたら尻餅を付きベッドから転げ落ちていた。


「どうしよう…、力が入らない…」

全身が痛いのは勿論だが、腰が麻痺した様に全く力が入らずその付近の筋肉が壊れている様な感覚だった。


「無理するな。」

カスパルは笑いながら、転げ落ちたシムの腕を掴み引っ張り上げるとベッドの寝ていた場所に戻す。
シムは気が動転しながらも素直に寝転がる。

そうか、肛孔のあの様な使い方を、酷使するとこのような事になるのか。
何となく腑に落ちながらも、言う事の聞かず砕けた腰に目を伏せた。


「一旦ここで休んでいればいい。
俺が“迎え”に行くから。」
 

カスパルはほんの一瞬だけ鋭い表情をした後、すぐ甘い微笑みに戻る。

襲撃の話題が昨晩少しだけ出た事をシムは思い出す。


危険な目に合わせたくないと言うカスパルの気持ちが痛い程伝わってくる様であった。
しかしシムもジェーンを助けたいという気持ちを強く抱いていた。

「…。」

カスパルのその言葉に何も返事が出来ないうちに、カスパルは手早く身支度を整え終え、黒紫の羽織を身に纏った。


「行って来る。」

カスパルは最後にシムの額に軽く口付け微笑んだ。

黒紫の服はカスパルの背負う闇を深くさせていく様で、優しく微笑んでいても恐ろしい雰囲気を感じた。

「後で迎えに行く。」


それだけを告げると、カスパルは部屋にシムを残して去って行ったのだった。











  
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