破棄ですか?私は構いませんよ?

satomi

文字の大きさ
5 / 6

5.変わりゆく領地

しおりを挟む

 1カ月チョット後、領地に再び足を踏み入れたのです。やっぱり荒れています。気のせいなんかじゃありません。
 領主の館を見て驚きました。小さい!
 これは…一体?
 先日、代表として話したシューに話を聞きました。

「この領地に客人を呼ぶことはないでしょう?」
 今はね。今後はわかりません。
「でしたら、必要最低限の大きさの館で十分でしょう?厨房に食堂に領主一家のお部屋。客室は必要なのでしょうか?」
「……」
 どうしよう?お父様が閉口してしまいました。
「えーっとね?領地の館でも大きさでその家門の格みたいなものが示されるのよ。この大きさだと……ね?」
 わかってくれるかな?
「とにかく、建て直すにしろ時間がかかるので今日のところはこの館に滞在してください!」
 
 滞在と言っても、料理人は連れて来ていないから私達親子が食事にありつけないわ!
「領民の中で料理に自信のある方はいるかしら?その方に今回は料理人をしてもらおうかしら?そうねぇ、場合によっては料理人として公爵家が雇う事も考えられるわ」
 すごいわね。公爵家が雇うと言ったら、目の色が変わったわ。「我こそは!」って料理人に名乗りを上げてくれました。一人でいいんだけどなぁ。
「そうねぇ、今昼を過ぎたから、この後のディナーを美味く作れた方がいるといいんですけど」
 候補者たちは競うように館の厨房に入って行きました。
「どきなさいよ!」「狭いじゃない」等の声が聞こえました。だから大きく作ればよかったのに……。

 とりあえず、今夜のディナーまでの食料は確保されました。…明日からはどうしましょう?
 親子で顔を見合わせてしまったのです。
 ディナーでの料理は宮廷料理っぽいものが多かったのは気のせいではないでしょう。それは王都で散々食べて、ちょっと飽きているので、地元の味を感じたかった私達の想いは伝わらなかったのでしょうか。
 そんな中、サブという男が作った料理は地元の物を使い、地味だが丁寧に味付けされていて美味しいと思いました。他の方から「田舎料理で恥ずかしい」とか言われていましたけど、私達親子が求めていたものはこのようなものです。

 サブは「明日の朝にでもどうぞ。公爵様親子のお口に合うといいのですが……。普段私どもが食べるような粗末なものなので……」
 どちらかというと、領民の生活具合を知りたかったのでサブの申し出は非常に有難かったのです。料理も心遣いも素敵でした。

 翌朝
「ふむ。平民と言うのはこのようなものを食しているのか?」
「そのようですね?荒れた領地……。そうですわ!まずは全体にソバという東のほうに伝わる植物を植えるといいわ。その内の半分を食用に収穫し、残りの半分の農地は焼く」
「ほう、焼畑農業か?」
「ええ、ここまで荒れた土地を蘇らせるにはそのくらいのことが必要かと」
「確かに、ソバは荒れた土地でもそこそこの収穫が期待できるな」
「食べ方について、東方ではほぼ決まっているようですが、ここでは千差万別!新たな食べ方を生み出してもいいのではないでしょうか?」
「そのようにシューとも話をしてみよう。上手くすると、ソバこそがこの土地の特産物となる可能性だってある」
「そうですね」
 私が始めようと思っている事業がソバに関わる事になる可能性も考えられます。まずは領民の生活を整えることからですね。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

答えられません、国家機密ですから

ととせ
恋愛
フェルディ男爵は「国家機密」を継承する特別な家だ。その後継であるジェシカは、伯爵邸のガゼボで令息セイルと向き合っていた。彼はジェシカを愛してると言うが、本当に欲しているのは「国家機密」であるのは明白。全てに疲れ果てていたジェシカは、一つの決断を彼に迫る。

【完結】婚約破棄されたら、呪いが解けました

あきゅう
恋愛
人質として他国へ送られた王女ルルベルは、その国の人たちに虐げられ、婚約者の王子からも酷い扱いを受けていた。 この物語は、そんな王女が幸せを掴むまでのお話。

「婚約破棄だ」と叫ぶ殿下、国の実務は私ですが大丈夫ですか?〜私は冷徹宰相補佐と幸せになります〜

万里戸千波
恋愛
公爵令嬢リリエンは卒業パーティーの最中、突然婚約者のジェラルド王子から婚約破棄を申し渡された

お前を愛することはないと言われたので、姑をハニトラに引っ掛けて婚家を内側から崩壊させます

碧井 汐桜香
ファンタジー
「お前を愛することはない」 そんな夫と 「そうよ! あなたなんか息子にふさわしくない!」 そんな義母のいる伯爵家に嫁いだケリナ。 嫁を大切にしない?ならば、内部から崩壊させて見せましょう

婚約破棄された令嬢、冷酷騎士の最愛となり元婚約者にざまぁします

腐ったバナナ
恋愛
婚約者である王太子から「平民の娘を愛した」と婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リリアナ。 周囲の貴族たちに嘲笑され、絶望の淵に立たされる。 だがその場に現れた冷酷無比と噂される黒騎士団長・アレクシスが、彼女を抱き寄せて宣言する。 「リリアナ嬢は、私が妻に迎える。二度と誰にも侮辱はさせない」 それは突然の求婚であり、同時にざまぁの始まりだった。

婚約破棄されたので、あなたの国に関税50%かけます~最終的には9割越えの悪魔~

常野夏子
恋愛
隣国カリオストの第一王子であり婚約者であったアルヴェルトに、突如国益を理由に婚約破棄されるリュシエンナ。 彼女は怒り狂い、国をも揺るがす復讐の一手を打った。 『本日より、カリオスト王国の全ての輸入品に対し、関税を現行の5倍とする』

愛しの第一王子殿下

みつまめ つぼみ
恋愛
 公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。  そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。  クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。  そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。

処理中です...