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第2話
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バードに会えないまま、17才を迎え私は男の子を出産致しました。
バードによく似た銀髪碧眼の男の子です。
子供を抱え、お父様は私達親子を勘当しました。孫を無くすのは辛かったろうと思います。侯爵家は親戚から養子を取るのでしょう。
私も平民になりました。
バードの凄さがわかります。
商家の次男ですが、ほぼ家を継ぐような能力を持っているようですし、社交界でも多くの令嬢から秋波を送られているようです。ダンスも素晴らしかった。
この子を育てなくてはならない。
幸い、私は住み込みで働けるところ、“SI亭”を見つけた。昼間は普通の食事処だが、夜は居酒屋というスタイルの店だ。住み込みなので、ライク(男の子の名前)が泣いてもどうにかなる。お客さんもライクを可愛がってくれるので、非常に助かる。
「俺が噂できいたんだけどよぉ、あのでっかい商家次男が継いだって話!長男を押しのけて次男かよ?って感じ。よっぽど次男の腕がいいんだろうな」
「ああ、あそこの商家で取り扱ってるものに変なものはないからな。ほら、きちんと保証書とかついてるし」
ライクが泣き出す。
「ああ、ごめんよ?つまらない話でちたね?おいたん達の話」
泣き出したので、おむつの交換か母乳だ。
貴族なら絶対母乳で育てることはないのだが、母乳が経済的なのだ。
両方だった…。
流石に食事処でオムツ交換と授乳はできないので、一度部屋に戻らせてもらった。
「あなたのお父さんはすごい人なんですよ?」
と言い聞かせながら私はオムツを交換し、授乳した。
ライクも3才になった。私は20才。子供が年を取るのは早いと思う。
「いらっちゃいまちぇ」
「あ~、ライクが迎えてくれるなら、オジサン毎日でも通うよ~」
おっさんが幼児にメロメロだ。男の子だけど、顔立ちもスッキリ整ってるし、髪も伸ばして後ろで縛っているから、女の子によく間違えられる。
「あはは、ライクは看板坊主だねぇ」
というのは、私をここで雇ってくれた恩人の女将さん。
「人間、話したくない事の一つや二つあるもんだ」と豪気にも私のことをあまり詮索せずに雇ってくれた大恩人だ。
「いらっちゃいまちぇ」
と、ライクが迎えたのはバードその人だった。二人は驚くほど似ていた。
「リア嬢はいるかい?私のオーダーはリア嬢だ」
23才であろうバードが私を所望だ。泣きそうだ。
久しぶりに見たバードは少し疲れているようだった。
「私ならここに。ライクはお留守番ね。できるいい子かな?」
「ライクはできるもん!」
と、ライクは頬を膨らませた。
「今更何の用かしら?」
「今までかかってしまったんだ。ゴメン。君があの家を勘当されたことも知っていた。あの子はライクって言うんだね。俺の子供の頃にそっくりだよ(笑)。あそこで働けるように手配したのも俺なんだ」
なんだ。自分ひとりで頑張った気でいたけど、バードが支えていてくれたのか。なんだかちょっと胸がポカポカした。
「できるなら、親子3人で暮らしたい」
そうだと思った。会った時から。二人は似すぎてるほど似ていたし。
「少しずつライクがバードに懐くといいんだけど…」
今の私は、一気に大きな商家に嫁ぐのは何だか気が引ける。
とりあえず、店に戻ってライクとも会っていいだろうか?
バードと二人、店の方に戻った。
「いらっちゃいまちぇって、おかあたんと…だれ?」
「あなたの大事な人よ」
「ふーん」
訝し気にバードの事見てるなぁ。多分さっき二人で出かけたから、ちょっと不貞腐れてるのかな?
「お留守番、上手にできた?」
「おう、ライクの留守番は最高だったぜ!」
「おいたんじゃなくて、ぼくがこたえるんだもん!」
後でこっそり聞いた。心細かったらしい。終始涙目だったという話だ。
本当に毎日通い、ライクの心を自分の方に向けようとしているのがわかった。
ライクに「あの人はあなたのお父さんよ」と言えば変わるのかな?
仕事も終わって、二人の部屋に戻った時に私はライクに告げた。
「ライク、いつも店にきてくれる銀髪で青い眼の男の人、あなたのお父さんなのよ」
ライクなりにショックだったようだ。
今までどう接してた?これからどう接したらいい?突然言われても困る?等たくさんたくさん考えているみたいだった。
翌日はライクが知恵熱を出してしまった。私は言わない方が良かったか悩んでしまった。
「ごめんなさい。あなたのこと、ライクに言ったら考え込んで知恵熱みたい」
「そうなのか…。子供は難しいなぁ。そうだ!今度二人でうちの商家に遊びに来ないか?遊びに来るだけだ。いや、本当に欲しかったら買ってやるのも…その…吝(やぶさ)かではないんだけど…」
「そうね、一度お邪魔してみようかしら?ライクにも言っておく」
バードは嬉しそうな顔してたけど、なんか疲れた様子だった。どうしたのかな?
仕事の休み時間にちゃんと寝てるかな?オデコのタオルも交換してあげなきゃと二人の部屋に行った。
「おかあたん、ずっと二人で暮らしていくのがいいよぉ」
そっかぁ。それがこの子の出した答えなんだ。
「うん、そういう風に伝えるよ。それとは別にね、ライクのお父さんが、お父さんが働く商家に来てみないか?って。ただ遊びに行くだけよ?」
「…遊びに行くだけなら」
バード、これはなかなか手強いよ?どうするんだろう?
バードによく似た銀髪碧眼の男の子です。
子供を抱え、お父様は私達親子を勘当しました。孫を無くすのは辛かったろうと思います。侯爵家は親戚から養子を取るのでしょう。
私も平民になりました。
バードの凄さがわかります。
商家の次男ですが、ほぼ家を継ぐような能力を持っているようですし、社交界でも多くの令嬢から秋波を送られているようです。ダンスも素晴らしかった。
この子を育てなくてはならない。
幸い、私は住み込みで働けるところ、“SI亭”を見つけた。昼間は普通の食事処だが、夜は居酒屋というスタイルの店だ。住み込みなので、ライク(男の子の名前)が泣いてもどうにかなる。お客さんもライクを可愛がってくれるので、非常に助かる。
「俺が噂できいたんだけどよぉ、あのでっかい商家次男が継いだって話!長男を押しのけて次男かよ?って感じ。よっぽど次男の腕がいいんだろうな」
「ああ、あそこの商家で取り扱ってるものに変なものはないからな。ほら、きちんと保証書とかついてるし」
ライクが泣き出す。
「ああ、ごめんよ?つまらない話でちたね?おいたん達の話」
泣き出したので、おむつの交換か母乳だ。
貴族なら絶対母乳で育てることはないのだが、母乳が経済的なのだ。
両方だった…。
流石に食事処でオムツ交換と授乳はできないので、一度部屋に戻らせてもらった。
「あなたのお父さんはすごい人なんですよ?」
と言い聞かせながら私はオムツを交換し、授乳した。
ライクも3才になった。私は20才。子供が年を取るのは早いと思う。
「いらっちゃいまちぇ」
「あ~、ライクが迎えてくれるなら、オジサン毎日でも通うよ~」
おっさんが幼児にメロメロだ。男の子だけど、顔立ちもスッキリ整ってるし、髪も伸ばして後ろで縛っているから、女の子によく間違えられる。
「あはは、ライクは看板坊主だねぇ」
というのは、私をここで雇ってくれた恩人の女将さん。
「人間、話したくない事の一つや二つあるもんだ」と豪気にも私のことをあまり詮索せずに雇ってくれた大恩人だ。
「いらっちゃいまちぇ」
と、ライクが迎えたのはバードその人だった。二人は驚くほど似ていた。
「リア嬢はいるかい?私のオーダーはリア嬢だ」
23才であろうバードが私を所望だ。泣きそうだ。
久しぶりに見たバードは少し疲れているようだった。
「私ならここに。ライクはお留守番ね。できるいい子かな?」
「ライクはできるもん!」
と、ライクは頬を膨らませた。
「今更何の用かしら?」
「今までかかってしまったんだ。ゴメン。君があの家を勘当されたことも知っていた。あの子はライクって言うんだね。俺の子供の頃にそっくりだよ(笑)。あそこで働けるように手配したのも俺なんだ」
なんだ。自分ひとりで頑張った気でいたけど、バードが支えていてくれたのか。なんだかちょっと胸がポカポカした。
「できるなら、親子3人で暮らしたい」
そうだと思った。会った時から。二人は似すぎてるほど似ていたし。
「少しずつライクがバードに懐くといいんだけど…」
今の私は、一気に大きな商家に嫁ぐのは何だか気が引ける。
とりあえず、店に戻ってライクとも会っていいだろうか?
バードと二人、店の方に戻った。
「いらっちゃいまちぇって、おかあたんと…だれ?」
「あなたの大事な人よ」
「ふーん」
訝し気にバードの事見てるなぁ。多分さっき二人で出かけたから、ちょっと不貞腐れてるのかな?
「お留守番、上手にできた?」
「おう、ライクの留守番は最高だったぜ!」
「おいたんじゃなくて、ぼくがこたえるんだもん!」
後でこっそり聞いた。心細かったらしい。終始涙目だったという話だ。
本当に毎日通い、ライクの心を自分の方に向けようとしているのがわかった。
ライクに「あの人はあなたのお父さんよ」と言えば変わるのかな?
仕事も終わって、二人の部屋に戻った時に私はライクに告げた。
「ライク、いつも店にきてくれる銀髪で青い眼の男の人、あなたのお父さんなのよ」
ライクなりにショックだったようだ。
今までどう接してた?これからどう接したらいい?突然言われても困る?等たくさんたくさん考えているみたいだった。
翌日はライクが知恵熱を出してしまった。私は言わない方が良かったか悩んでしまった。
「ごめんなさい。あなたのこと、ライクに言ったら考え込んで知恵熱みたい」
「そうなのか…。子供は難しいなぁ。そうだ!今度二人でうちの商家に遊びに来ないか?遊びに来るだけだ。いや、本当に欲しかったら買ってやるのも…その…吝(やぶさ)かではないんだけど…」
「そうね、一度お邪魔してみようかしら?ライクにも言っておく」
バードは嬉しそうな顔してたけど、なんか疲れた様子だった。どうしたのかな?
仕事の休み時間にちゃんと寝てるかな?オデコのタオルも交換してあげなきゃと二人の部屋に行った。
「おかあたん、ずっと二人で暮らしていくのがいいよぉ」
そっかぁ。それがこの子の出した答えなんだ。
「うん、そういう風に伝えるよ。それとは別にね、ライクのお父さんが、お父さんが働く商家に来てみないか?って。ただ遊びに行くだけよ?」
「…遊びに行くだけなら」
バード、これはなかなか手強いよ?どうするんだろう?
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