消えることなき愛

石川 樹里

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悲しみの果てに

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6歳の頃、俺は初めてラブレターを書いた。大好きな大好きな幼馴染の女の子に。
けれどその子は受け取ってはくれなかった。
俺はショックだった。その日はずっと母親に泣きついていた。母はスッと俺の頭に手を回し撫でてくれた。その手はとても暖かく癒された。
それから時が経ち12歳になった頃、俺はもう一度その子にラブレターを書いた。するとその子は泣きながらこう言った。
「私でいいのならどこまでも...」
俺はその子の手を取り「約束する。」と呟いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あれから2年が経ち中学生になった。
「聡。ずっとあなたのそばにいれたらいいな。」
「未来。俺はお前から離れない。ずっとそばにいるよ。」
ありきたりな恋愛マンガのようなやり取りをして、いつも楽しく笑っていた。デートもたくさんした。下校の時に本屋に寄って自分たちの好きな本を見せ合って笑ったり、二人でゲームセンターに行きプリクラを撮ったり、カラオケに行って歌ったり。二人でいる時間は本当に天国のようだった。ある日、二人でアクセサリーショップに行った。その時、ペアのネックレスを見つけてお互いで欲しいねぇなんて言い合った。けれど流石にお金もなく買うことができず、まぁいつか買おっかっと言ってその場を後にした。
でも俺は、ちょっと後悔した。男として情けない気がして。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ある日の放課後、教室からこんな会話が聞こえてきた。
「未来って最近調子に乗ってるよね。」
「わかる~!自分は彼氏持ちだからってなんか見下してる感じあるよね~!」
「成績もそこそこいいからって先生もひいきしちゃってさ、ほんとうざい。」
この時、俺は初めて知った。未来がいじめにあっていたということを。未来がそれを隠していたということを。
その日の帰り道、俺は未来と二人で公園に行った。ブランコに乗りいつものようにたわいもない会話をして笑っていた。けれどその日、心から笑うことはなかった。ずっと放課後の会話が頭に残っていたから。でもそれを未来に聞くことなんてできなかった。勇気が出なかった。そのことを聞くことによって未来を余計に追い込んでしまうのではないかと思ったからだ。そのまま時間は流れ二人は別れ家に帰った。
自分の弱さを知った。好きな人のこともろくに守れない自分の弱さに。そのことに絶望し、俺は一晩中泣いた。
その次の日も、そのまた次の日も、聞けることなく時間は過ぎ去って行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

それから時は経ち三年生になったある日のこと、俺は未来に呼び出された。二人だけの教室。静まりかえった校舎。
その中で未来は俺に手紙を渡した。
「中身は帰ってから読んでね。」
未来はそう言った。俺は頷いた。それから少しだけたわいもない会話をして俺たちは教室を出た。いつのまにか日が沈みかけていた。
少し暗くなり街灯がちらほらとつき始めた。いつもの通り公園に行きブランコを漕ぎながら笑いあった。そして家に帰る時間がきた。いつも通り帰ろうとした時、未来はそっと俺の制服の裾を掴んだ。
「手紙、感想聞かせてね。」
未来の呟きに俺はもちろんと返した。そして二人の上の街灯がついたと同時に未来と俺はそっとキスをした。人生で初めてしたキスはとてもぎこちなかった。けれど一生忘れることのない温もりだった。
その日の夜は少し賑やかな夜だった。俺は手紙を読もうと封筒に手をかけたがどうしてか怖くてみることができなかった。そのまま勇気が出せず俺は眠りについた。
   日が昇り朝がきた。いつも通り制服を着て家を出た。校門をくぐり下駄箱に靴をしまい、上履きを履いて教室のある2階へと登った。いつもより教室が騒がしい。どこからか泣く声も聞こえる。自分はまだ知らなかった。その時はまだ...。
    遠くから俺の名を呼ぶ友人の声が聞こえた。友人にどうしたんだ、と問いかけるとこう返ってきた。
「知らないのか。お前の彼女死んだんだって。自殺だってよ。ヤバイよな。」
俺は意味を理解するのに数秒かかった。そして意味を理解した時俺は膝から崩れ落ち今までにないくらいに泣いた。学校中に響き渡るくらいの声で。その日の記憶はそこからない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ふと目が覚めた。どうやら保健室らしい。少しするとカーテンの開く音がして先生が入ってきた。大丈夫かと問いかけてきた先生に俺は小さく頷いた。大丈夫なはずもないのに。その日は授業には出ず帰宅した。帰宅してから俺はずっと部屋にこもり泣きわめいた。まるで赤子のように。気がつけばもう19:00。泣き疲れた俺は外に出て頭を冷やすと親に告げ手紙を握りしめていつもの公園に行った。ブランコに深く腰をかけ、握りしめた手紙の封をそっと開け便箋を取り出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『聡へ
   初めてラブレターをくれたのは6歳の頃だったかな。あの時はまだお互い子供で、多分若気の至りだったと思う。けど小学校の卒業式の日、またラブレターをくれたね。その時は本当に嬉しくて思わず泣いちゃった笑
それからいっぱい遊んだね。一緒に遊ぶの楽しかったし、すっごく思い出になった。ありがとね。
   さてさて、お話は変わるけど、今日は二人の3年目の記念日!早いねぇ笑 中学に入ってからずっと聡と一緒にいるんだね。なんだか不思議な感じ。小学校の頃は全然話さなかった私たちだけど、中学に入ってからはずっと話してたね。時に喧嘩をすることもあったけどそれもいい思い出だよ。
正直言って辛い時が沢山あったの。けどね、聡と遊んだり話したりしていた時間だけはそんなことも忘れられた。本当に私の心の支えだった。ありがとね。
ずっと、ずっと、ずっと、私のそばで笑っててくれてありがと。あなたに愛を教えてもらいました。本当に感謝しています。あなたのことが大好きです。まだまだそばに居たかったな....。一緒に笑いたかったな....。
                                                                          未来』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

どっと涙が溢れた。便箋がくしゃくしゃになるくらい握りしめた。
「ごめん。本当にごめん。でもさ、せめて感想くらい聞いて欲しかったよ....。ばか....。」
俺は潤んだ目で空を見上げた。そこにはまるで俺を励ますかのように綺麗な満月と満天の星が広がっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

俺は手紙の感想を書いて未来の住所を封筒に書きポストに入れた。本人には届かないってわかっているけれど、それでも約束を守るために感想を書いた。けれど俺はどこかで信じていた。未来がこの手紙を読んでくれると。確証も何もないけれど、なぜか俺はそう思った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

5年の月日が経った。俺は今、カウンセラーを目指している。あの子のように悩んでいる子が気軽に相談できるようなカウンセラーになるために日々勉強をしている。今日も大学で夜まで勉強だ。
そして家に帰った。あの頃と違って今は一人暮らしだ。部屋の電気を付け部屋に入り一息ついた時、インターホンが鳴った。俺はゆっくり立ち上がり玄関を開けた。
「お届けものです。宮尾聡様でよろしいでしょうか。」
俺はコクリと頷きサインをして小さな小包を受け取った。その小包には来るはずもない人からの名前が書いてあった。
『平良未来』
一瞬目を疑った。けれど、そこには確かにこう書かれていた。イタズラかと思ったが間違いなくあの頃の未来の字だった。俺はゆっくりと小包を開けた。
涙が溢れた。あの時のように、いや、あの時よりももっともっと泣いた。
「頑張るよ。俺、絶対立派になって見せるから。だから見守っててね。未来」
そう呟き俺は小包をそっと抱きしめた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『二十歳のお誕生日おめでとう。
聡なら、きっと立派にな人になってるんだろうな。あの時よりも大きくなってるんだろうな。見たかったなぁ笑 私の大好きな人を、もっともっと。
箱の中身は誕生日プレゼント!大事にしてね!』
黒い小さな箱の中身は、いつの日か見ていたペアのネックレスだった。
                  

                                       ー完ー




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