世間知らずの魔塔主は優しい娼婦を溺愛する

今泉香耶

文字の大きさ
8 / 74

3-1.最初の夜(1)

しおりを挟む
 明るいままがいい、と彼に言われ、部屋の灯りは消さない。バネッサがふと見れば、シーツにはどこにも血がついておらず、確かに彼にあちこちついている傷口はふさがっているのだと理解した。バネッサは椅子から立ち上がって、コンラートに甘く囁く。

「ね、服……どうする?」

「どうする、とは?」

「まず、わたしの服。脱がせたい? それとも、脱ぐのを見る……?」

「見ます!」

 元気な返事だ、と心の中で苦笑いをしてバネッサは首の後ろで結んでいるリボンに手をかけた。彼女のドレスは背中が大きく開いている。腰の後ろ側にリボンが結ばれ、そして、胸当て部分から首の後ろに紐が伸びてリボンで結ばれている。真っ白な背に、首で結ばれたリボンがちらちらと揺れる。それを、ゆっくり、しゅるりと解く。

 リボンが解かれ、胸元を隠していた布が落ちる。それを片手で押さえて前かがみになり、再び優しく囁いた。

「わたしの背中、見る?」

「はい」

 胸を隠したまま、コンラートに背中を向けるバネッサ。完全に露わになった背中に、そっとコンラートは手を伸ばす。

「ん」

 肩甲骨のラインを指でなぞるコンラート。すると、彼女はあっさりと手で押さえていたドレスを離し、次に腰の後ろで結んでいるリボンを解く。豊満な乳房はコンラートには見えなかったものの、背からはみ出して見え「わあ」と彼は声を上げた。

 それから彼は彼女の背骨に指を這わせ、すうっと上から下まで下ろす。それと共に、リボンがほどけたドレスは、すとんと足元に落ち、レースの下着に覆われた尻が彼の目の前に現れた。

「綺麗ですね」

「背中しか見ていないのに?」

「ええ。とても綺麗ですよ」

 そう言って、コンラートは露わになった細い腰のくびれを、両手で掴んだ。バネッサは「ん」と軽く鼻にかかった声を出す。

「あっ……あ、あ」

 何度も何度も、滑らかな肌の上を彼の手が辿って下りていく。腰の少し上から、くびれ、そして腰、それから尻。そのラインをコンラートはなぞった。

「バネッサ」

「なあに?」

「こっちを向いて」

 バネッサは返事をせずに、ゆっくりと彼に向かって体を見せた。胸当てはしていない。露わになっている美しい白い乳房と可愛らしいへそを見せつけるように、彼女は両手を上にあげ、自分の髪をかき上げる。

「どう……? 失望されていないといいんだけど……」

 そう言ってはみるが、それは心に思ってもいないセリフだ。そして、もちろんコンラートもその言葉を否定する。

「何度も言うけれど、とても綺麗ですよ。バネッサ。触ってもいいですか?」

「もちろんいいわ。あなたの好きにしてちょうだい」

「本当に?」

「ええ。朝まで、まだ時間は十分あるし、ゆっくり堪能して……」

 そう言って、バネッサは彼の両肩に手を置いて、顔を近づけた。コンラートは彼女の唇を待ちきれなかったのか、腰を浮かせて自分から彼女の唇に自分の唇を重ねる。

「んんっ……そんながっつくものじゃないわ。口を少しだけ開けて?」

「こう……?」

「そう。それでね……」

 深いキス。舌を絡ませ、じゅっ、じゅっ、と音を立てて口づければ、コンラートはすぐにそれに慣れたように、今度は自分から舌を彼女の口の中に入れてくる。

「んっ……んんっ……」

 やがて、ベッドの縁に座っている彼の膝の上にバネッサは乗って、何度も何度もキスをした。最初はキスの仕方もわからなかったコンラートだったが、すぐにコツを掴んだのか、繰り返し彼女にキスをした。そして、五度目ぐらいのキスで、彼はキスをしながら彼女の体に触れた。柔らかな肌の上を滑っていく彼の手。バネッサは彼の首に腕を回し、キスに没頭する。

(やだ……この人、上手じゃない……?)

 初めてのはずなのに。いや、気のせいかもしれない。いや、でも……と考えていると、ようやく唇を解放される。

「バネッサ」

「ん?」

「唇以外もキスをしてもいい?」

「そうね。キスをしてもいいし、触ってもいいわ」

「手順は?」

「ないわよ。好きなところにキスをして、好きなところに触っていいわよ。でも、そうね、最初は耳や、首、それから鎖骨……んあっ……」

 話を途中までしか聞かず、コンラートはすぐにバネッサの耳に唇を這わせ、甘く優しく噛んで、舌を中に差し込んだ。それが、あまりに手慣れた男の「それ」だったので、バネッサは声を上げてしまう。

「あっ……あなた……上手ね……?」

「本当? 上手っていうことは……ね、気持ちいいの?」

 客にそう言われれば、嘘でも「気持ちいい」と答えるのは当たり前だ。だが、バネッサは嘘でもなんでもなく、素直に「いいわ」と反射的に答える。すると、コンラートはじゅるじゅると音を立てて彼女の耳を犯し、耳たぶを軽く噛んで引っ張り、それから耳の後ろの付け根に舌を這わせて、そのまま首筋へと降りていく。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ただ、隣にいたいだけ~隣人はどうやら微妙にネジが外れているようです~

Ayari(橋本彩里)
恋愛
隣人である小野寺翔は完璧な美貌、甘いマスク、高身長、高所得者、社交的で周囲にほぼ敵なしのハイスペック。 そんな男性の隣に住むことになりやたらと絡まれ、何かを含む甘い眼差しを向けられることに。 極めつけは微妙なネジの外れ具合。 それはどうやら私、藤宮千幸に対してのみ発揮されているみたいで。 なんて、はた迷惑なっ! 過去作を改稿。変甘です! イラストは友人kouma.作です♪

英雄騎士様の褒賞になりました

マチバリ
恋愛
ドラゴンを倒した騎士リュートが願ったのは、王女セレンとの一夜だった。 騎士×王女の短いお話です。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~

双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。 なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。 ※小説家になろうでも掲載中。 ※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【R18】熱い夜の相手は王太子!? ~婚約者だと告げられましたが、記憶がございません~

世界のボボブラ汁(エロル)
恋愛
激しい夜を過ごしたあと、私は気づいてしまった。 ──え……この方、誰? 相手は王太子で、しかも私の婚約者だという。 けれど私は、自分の名前すら思い出せない。 訳も分からず散った純潔、家族や自分の姿への違和感──混乱する私に追い打ちをかけるように、親友(?)が告げた。 「あなた、わたくしのお兄様と恋人同士だったのよ」 ……え、私、恋人がいたのに王太子とベッドを共に!? しかも王太子も恋人も、社交界を騒がすモテ男子。 もしかして、そのせいで私は命を狙われている? 公爵令嬢ベアトリス(?)が記憶を取り戻した先に待つのは── 愛か、陰謀か、それとも破滅か。 全米がハラハラする宮廷恋愛ストーリー……になっていてほしいですね! ※本作品はR18表現があります、ご注意ください。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

処理中です...