世間知らずの魔塔主は優しい娼婦を溺愛する

今泉香耶

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3-2.最初の夜(2)

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「……!……」

 バネッサは、ぞくんと背筋をわずかに反らして、手慣れたように感じられる彼の愛撫を受け入れる。すると、彼は再び彼女の腰を両手で掴み上下に動かす。

「なぁに……? そこ、気に入ったの?」

「美しいです。それに、こんなに滑らかで……」

「んっ……ねぇ、他に触りたいところがあるんじゃない……?」

 そう言って、バネッサは肘を横に張り、そっと自分の乳房の上部に指先をあてた。決して乳房を隠さず、けれど、そこを示していることを彼にわかるように。

 コンラートは耳から唇を離して、彼女の指が添えられた乳房を見て、それから彼女の顔を見た。

「お預けにしているんです」

「どうして?」

「そこに触れたら、どうなってしまうのか、わからなくなりそうなので」

 可愛いことを言う……その思いと裏腹に、バネッサは背筋にまたもぞくりと何かを感じ高揚した。わざと胸を見せつけるように、背を反らして彼の目の前にそれを突き出す。

「そうなの……? わたしはこんなに……触って欲しいのに?」

「あなたが? 触って欲しいんですか?」

「そうよ」

「……じゃあ」

 そこまで言えば、きっと触るのだろうとバネッサは思った。が、彼は、頬を紅潮させながら、僅かに微笑んだ。

「じゃあ、あなたもお預けですね」

「まあ」

「夜は、まだ長い。そう言ったのはあなたです……」

 コンラートはそう言うと、彼女の腰のくびれに唇を這わせた。そんなところを舐められたことなど、過去にあまりない。驚いたものの、不思議な快感がじわじわとバネッサを昂める。

「あっ、あ……」

 彼はそれからバネッサの腹部に顔を埋めて、へそに口づけた。そこから、胸の下まで、舌で舐め上げる。それだけでバネッサは背を反らして、甘い吐息を漏らす。

「ああ、わたしの体も、いくらか熱くなってきたな……」

 そう言って、コンラートはバネッサを自分のももの上に座らせたまま、シャツを脱ぎ捨てた。

(あれ……?)

 露わになった彼の体を見て、バネッサは驚く。おかしい。傷らしきものが、あまりない……服を脱がせたとき、間違いなく多くの傷や火傷を負っていたのに……そう思って、目を丸くして彼の体を見る。

「わたしの体に興味が? そう鍛えていないので、その、少し恥ずかしいですが……」

「あの……傷、は……?」

「ああ、あれは、ほとんどふさがりました。まったく、体の治癒能力が一番の優先順位になってしまって、魔力の回復が遅くなってしまうのは、よろしくないですね……」

 彼の言葉の意味は、なんとなくしかわからない。だが、どうやら彼は自分自身を治癒する力があるのだ、とバネッサは曖昧に思った。そして、それに力を使ってしまうので、魔力の回復が遅い……要するに、明日まで一晩眠る場所が欲しいと言ったのは、魔力の回復が必要だからなのだと、おぼろげながら理解した。

「あなた、本当に凄いのね……?」

「はは、そうなんです。実は凄いんですよ」

 嫌味でもなく彼はそう笑うと、ぎゅっとバネッサの体を引き寄せた。服を着ていない、裸の肌と肌がしっとりと触れ合う。確かに彼は少し汗をかいていた。バネッサは彼の首に腕を絡めて、彼の耳に唇を寄せた。

「ね、気持ちいい……」

「わたしもです。ねぇ、それは、客に言うリップサービスのようなもの?」

「違うわ。本当に気持ちがいいの」

 そう言って潤んだ瞳でコンラートを見れば、彼は小さく笑って彼女に口づけた。バネッサの言葉を彼が真に受けたかどうかはわからなかったが、そんなことはどうでもいいと彼女は思う。

「教えて。これからどうしたらいい? あなたをベッドで組み敷いても?」

「いいわ。ね、裸で抱き合いましょ?」

 そう言ってバネッサが笑いかけると、彼は再び「本当に可愛い人だ」と言って、もう一度彼女に口づけた。
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