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15-3.コンラート無双(3)
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「バネッサ」
コンラートは転移をして、娼館の部屋に戻った。だが、そこに彼女の姿はない。
「ええ? どこにいったのかな……あまり、探知は得意じゃないんだよなぁ……」
バネッサが聞けば「あなたにも不得意なことがあるのね?」と言うだろうし、ハーニィが聞けば「あなたがおっしゃる『得意じゃない』は得意じゃないにならないんですよ!」と叫ぶだろうことを呟くコンラート。
「うーんと……いやー、でもこれ、追いかけたら嫌われるかな……いや、でもなぁ~」
そう呻きながら、コンラートはバネッサの行方を探った。目を閉じて、呪文を唱えて集中をする。動いているものを捉えることは難しい。彼女はどこにいるのかはわからないが、こんな真夜中に外に出ているようだ。ようだ、というのは、彼の探知の限界だ。
「そこまで行けるかな……ああ~、やっぱり彼女にも術をかけておけばよかった。内緒でかけとこう、後で……」
そう言いながら彼は再び転移をした。
バネッサははぁはぁと苦しそうに呼吸をしながら、よろよろと走っていた。真夜中、城下町の中心街から出た彼女は足がもつれるほど既に疲れており、一旦止まって息をつく。汗が流れるが、薄着で出て来たため止まると一気に冷えてくる。
「うう、もう少し……」
言うほど、もう少しではない。まだ家まで距離はある。走らなくちゃ。そう思うけれど、普段運動らしい運動をしていない彼女はちょっとだけ息をつく。すると。
「バネッサ!」
「!」
そんな彼女の目の前に、コンラートが転移をしてきた。彼の姿を見た途端、バネッサの両眼に涙が浮かび上がる。
「コンラート……」
「一体、何があったんですか? なんですか、あの男たちがあなたに何かをしようとしたんですね?」
「あの人たち……わ、わたしが今日、町で買い物をしていたら現れて……さらわれて……それで、あなたに薬を飲ませろって……」
「薬?」
首を傾げるコンラート。ああ、茶に入れろとでも言ったのか……とようやく話が見えたようで「なるほど」と彼は言った。
「それで、どこに行こうとしているんですか」
「家よ。わたしの、実家」
「実家?」
「ええ。その、わたしに監視をつけて……あなたに薬を飲ませなかったら、わたしの家族を殺すって……だから……わたし……」
ほろほろとバネッサの頬に落ちていく涙。コンラートはそれを指でぬぐってやり「あなたの家はどこですか」と尋ねた。
「この先の……」
「ああ、どこ、と聞いてもわたしはわからないんだった。ええ~っと……強く思い描いてください」
「えっ?」
「目を閉じて、強く、家の姿を思い描いて。そこに行きたいと願って。なんとか、しますから」
バネッサは無言で頷くと、素直に彼が言う通り目を閉じ、自分の家の外観を思い出した。小さい頃から今まで、何も変わっていない薄汚れたぼろぼろの家。あれをコンラートに見せることは少し恥ずかしいと思えたが、今はそんなことは言っていられない。
コンラートは彼女の額にそっと自分の額をくっつけて、何か呪文を呟いている。ああ、こんなことをしている間にも、家族が……と邪念が入るが、バネッサは心の中で必死にそれに蓋をして、ひたすら家を思い出すことに集中をした。
「特定しました。行きましょう」
コンラートはそう言って、彼女の手を握る。ゆっくりと目を開けると、彼は空中に向かってもう片方の手で何かを書いていた。ああ、転移の魔法か……そう思いながら、バネッサはぎゅっと彼の手を握って、体を彼に押し付けた。コンラートもまた、彼女の髪に顔を埋め、そして、転移をした。
まるで、体の毛穴が突然ぶわっと開いたような。いや、実際はそんなことはなかったが、慣れない感覚にバネッサはなんとなくそんな印象を抱く。そんなことになったことはないのだが、あえて言うならば「そんな感じ」だ。
一瞬で違う場所に移動をするが、なんだか現実感がない。なんとなく怖くてコンラートの手を握って、その腕に体を寄せる。優しく「大丈夫ですよ」と彼が小声で囁いてくれたので、ようやくほっと息をつけた。
「ここ、ですね」
彼らが転移をした先は、街灯もなくやたら暗い一角だ。先ほどまでは街灯があった区画だったおかげで、深い暗さに目が慣れない。と、突然コンラートが彼女を強く抱きしめる。
「コン……」
「静かに。あなたの家の様子を探っている男たちがいます」
「……!」
バネッサには、まったくよくわからない。だが、コンラートは感じ取っている。彼はバネッサをお姫様だっこのように抱えると、そこから少しだけ離れた。
「終わるまで、ここにいてください」
そう囁いて、そっと地面に彼女を下ろすコンラート。少しだけバネッサの目も慣れて来て、自分が降ろされた場所が実家の近所の家の前であることに気付いた。
コンラートは転移をして、娼館の部屋に戻った。だが、そこに彼女の姿はない。
「ええ? どこにいったのかな……あまり、探知は得意じゃないんだよなぁ……」
バネッサが聞けば「あなたにも不得意なことがあるのね?」と言うだろうし、ハーニィが聞けば「あなたがおっしゃる『得意じゃない』は得意じゃないにならないんですよ!」と叫ぶだろうことを呟くコンラート。
「うーんと……いやー、でもこれ、追いかけたら嫌われるかな……いや、でもなぁ~」
そう呻きながら、コンラートはバネッサの行方を探った。目を閉じて、呪文を唱えて集中をする。動いているものを捉えることは難しい。彼女はどこにいるのかはわからないが、こんな真夜中に外に出ているようだ。ようだ、というのは、彼の探知の限界だ。
「そこまで行けるかな……ああ~、やっぱり彼女にも術をかけておけばよかった。内緒でかけとこう、後で……」
そう言いながら彼は再び転移をした。
バネッサははぁはぁと苦しそうに呼吸をしながら、よろよろと走っていた。真夜中、城下町の中心街から出た彼女は足がもつれるほど既に疲れており、一旦止まって息をつく。汗が流れるが、薄着で出て来たため止まると一気に冷えてくる。
「うう、もう少し……」
言うほど、もう少しではない。まだ家まで距離はある。走らなくちゃ。そう思うけれど、普段運動らしい運動をしていない彼女はちょっとだけ息をつく。すると。
「バネッサ!」
「!」
そんな彼女の目の前に、コンラートが転移をしてきた。彼の姿を見た途端、バネッサの両眼に涙が浮かび上がる。
「コンラート……」
「一体、何があったんですか? なんですか、あの男たちがあなたに何かをしようとしたんですね?」
「あの人たち……わ、わたしが今日、町で買い物をしていたら現れて……さらわれて……それで、あなたに薬を飲ませろって……」
「薬?」
首を傾げるコンラート。ああ、茶に入れろとでも言ったのか……とようやく話が見えたようで「なるほど」と彼は言った。
「それで、どこに行こうとしているんですか」
「家よ。わたしの、実家」
「実家?」
「ええ。その、わたしに監視をつけて……あなたに薬を飲ませなかったら、わたしの家族を殺すって……だから……わたし……」
ほろほろとバネッサの頬に落ちていく涙。コンラートはそれを指でぬぐってやり「あなたの家はどこですか」と尋ねた。
「この先の……」
「ああ、どこ、と聞いてもわたしはわからないんだった。ええ~っと……強く思い描いてください」
「えっ?」
「目を閉じて、強く、家の姿を思い描いて。そこに行きたいと願って。なんとか、しますから」
バネッサは無言で頷くと、素直に彼が言う通り目を閉じ、自分の家の外観を思い出した。小さい頃から今まで、何も変わっていない薄汚れたぼろぼろの家。あれをコンラートに見せることは少し恥ずかしいと思えたが、今はそんなことは言っていられない。
コンラートは彼女の額にそっと自分の額をくっつけて、何か呪文を呟いている。ああ、こんなことをしている間にも、家族が……と邪念が入るが、バネッサは心の中で必死にそれに蓋をして、ひたすら家を思い出すことに集中をした。
「特定しました。行きましょう」
コンラートはそう言って、彼女の手を握る。ゆっくりと目を開けると、彼は空中に向かってもう片方の手で何かを書いていた。ああ、転移の魔法か……そう思いながら、バネッサはぎゅっと彼の手を握って、体を彼に押し付けた。コンラートもまた、彼女の髪に顔を埋め、そして、転移をした。
まるで、体の毛穴が突然ぶわっと開いたような。いや、実際はそんなことはなかったが、慣れない感覚にバネッサはなんとなくそんな印象を抱く。そんなことになったことはないのだが、あえて言うならば「そんな感じ」だ。
一瞬で違う場所に移動をするが、なんだか現実感がない。なんとなく怖くてコンラートの手を握って、その腕に体を寄せる。優しく「大丈夫ですよ」と彼が小声で囁いてくれたので、ようやくほっと息をつけた。
「ここ、ですね」
彼らが転移をした先は、街灯もなくやたら暗い一角だ。先ほどまでは街灯があった区画だったおかげで、深い暗さに目が慣れない。と、突然コンラートが彼女を強く抱きしめる。
「コン……」
「静かに。あなたの家の様子を探っている男たちがいます」
「……!」
バネッサには、まったくよくわからない。だが、コンラートは感じ取っている。彼はバネッサをお姫様だっこのように抱えると、そこから少しだけ離れた。
「終わるまで、ここにいてください」
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