世間知らずの魔塔主は優しい娼婦を溺愛する

今泉香耶

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24-2.甘い夜(2)

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「ん、んあっ……」

 わかっていたのに。コンラートの唇に含まれ、軽く歯をたてられ、そして舌で嬲られる。すべてわかっていて、身構えたのに声は情けなく漏れてしまう。彼は床に膝をついて、片手でバネッサの腰をしっかり掴んで離さない。

「あっ、あ、コンラート……あっ……」

 素肌を吸われるよりも、服の上から吸われる方が、じゅう、じゅう、と淫猥な音がたてられる。びくりと腰を引くと、室内着の裾を彼の手がまくり上げ、何の断りもなくバネッサの入口に布越しで触れた。

「あぁ……だめ、ぇ……そんな……」

 布の上から優しく彼の指が擦りあげる。ぐっと指の腹で押さえられると、下着が濡れていることがバネッサにもわかった。恥ずかしい。ただキスをして、少し胸を愛されただけで、自分はもう彼を受け入れられるように体をひらいてしまっているのだ。

(恥ずかしい……)

 やめて、と言おうと思ったその時、コンラートは口を離した。彼の唾液で濡れた服から彼の唇までつっと糸がゆるやかに張り、それを彼はぐいと拭いながら立った。

「バネッサ。服を脱いでください」

 優しい声音。バネッサは言葉もなくこくりとうなずいて、服を脱ぎ出した。ゆっくりと上着を脱いで、床の上に落とす。身頃を編み上げている紐を外して、ちらりとコンラートを見れば、彼はじっと自分を見つめている。

「あなたは……?」

「うん? 脱いでほしいんですか?」

「素肌で抱き合いたいもの」

「じゃあ、脱いだら、脱がせて」

「……んもう……」

 バネッサは可愛らしく唇を尖らせて「我がままね」と言った。コンラートは「はい」とにこにこと笑って答える。

(ちょっと意地悪してあげようかしら)

 わざと一枚ずつゆっくり脱ぐバネッサ。すると、彼女の目論見どおり、コンラートは途中で少しそわそわとし出す。

「バネッサ。あのう……」

「なぁに?」

「一瞬で服を全部脱がせる魔法を使っても?」

「えぇ? そんなとんでもない魔法まであるの?」

 藪から棒だ。バネッサは仕方なく慌てて服を脱ぎつつ、肩をすくめた。

「そんなに急いでいるんだったら、自分の服は自分で脱いでちょうだい。もちろん、その魔法を自分に使ってもいいわよ?」

「冗談ですよ。そんな魔法は知らないです」

「もう!」

 とん、とバネッサがコンラートの胸を軽く叩いて笑えば、コンラートもまた声をあげる。二人はひとしきり笑ったあと、どちらからともなくキスをした。そして、まだ服を脱ぎ終わっていなかったが、コンラートは「我慢出来ない」と言うと、バネッサを抱きかかえてベッドに連れて行くのだった。



部屋の奥には、大きなベッドが置かれていた。変わらず白を基調とした寝室部分は燭台で淡く照らされている。ベッドには天蓋がついており、高い位置から垂れ下がる薄布が柔らかな影をベッドの上に落としている。

 ベッドの上にバネッサを横たえたコンラートは、そのまま彼女に覆いかぶさりながら足をパタパタと動かし、履いていたサンダルを放り投げる。

「あっ……コンラート……」

 脱ぎかけだった服をまるでかき分けるようにコンラートが脱がしていく。ぶるん、と胸がまろび出るように剥き出しになると、彼はすぐにその先端を口に含んだ。

「だ、め……あなた、脱いでないじゃ……あっ……」

 足をもぞもぞと動かして、脱がされた衣類を身体から離そうとするバネッサ。だが、胸の先を甘く噛まれて、彼の舌で転がされれば腰が浮いてしまってそれどころではない。

「あっ、あん……」

 柔らかな乳房を片手で揉みしだきつつ、コンラートは器用にもバネッサが着ていた服をすべて脱がせる。雑にベッドの縁から床に落としてから、彼は体を起こした。

「どうしよう。バネッサ」

「え……?」

「すっごく、興奮してきました……ね、一度出してもいいですか?」

「そんなに……?」

「はい。えーーっと……一人で、出せます、よね」

 コンラートはそう言って服を脱ぎ始めた。どうやら彼の股間のものは既にそそり立っているようで、それは布越しでも見て取れるほどだ。

 彼の「一人で出せます」という言葉をバネッサはあまり信じていない。だって、彼が「一人で処理をした」なんて話を聞いたことがないからだ。だから、なんだか他人行儀な、不安そうな言い回しになって、わけがわからなくなっている。彼は彼で自分が興奮して先走ってしまっていることを「申し訳ない」と思っているのだろう。

バネッサは小さく笑って

「ね、コンラート」

と優しく声をかけた。

「はい?」

「一人ですることないわ。だって、わたし、もう準備が出来ているのよ」

「えっ……」

 そう言うと、バネッサは最後に一枚だけ身に着けていた下着に手を伸ばし、静かにそれを下ろす。コンラートは「でも」と言った。

「濡れているのは、わかります。でも、内側はそんなに……」

「馬鹿ね、コンラート。わたしが、あなたを欲しいって言っているのよ……」

 そう言うと、バネッサは下着を床に放り投げ、体を起こした。それから、コンラートのシャツを脱がせてから、彼の下唇を軽くついばむ。

「ね……早く、一つになりましょ……」

「ああ、あなたって人は、そうやって、優しくして、甘やかして、わたしのことをどろどろにしちゃうんだから、困った人ですね……」

「そうよ。そして、あなたもわたしのことをどろどろにしちゃうんでしょ……」

「そうできていればいいんですけど」

 コンラートはそう言って、バネッサの体を抱いた。ベッドの上でしっとりとくっつく肌と肌。バネッサの乳房は彼の胸板に潰される。

(どうしてかしら。どれだけ抱いても、どれだけ抱かれても、もっと深くくっつけるんじゃないかって思っちゃう)

 ぎゅっとバネッサは彼の体を強く抱く。すると、彼は困ったように

「あまりその、強く体を押し付けられると……えぇ……出ちゃうんで……」

と言って、情けない笑顔を彼女に見せた。
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