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自室にて
しおりを挟むルカスとエリックに連れられ部屋に戻った私を見た瞬間、アンヌは驚きのあまりあんぐりと口を開けた。
「ただいま、アンヌ。あのね──」
弟たちの前ということもあり、言葉を濁しながら今日の出来事を説明すると、アンヌはすべてを聞き終える前に怒り出した。
いや、正確に言うと怒り泣きだ。
「あっ、あれほど、お気をつけくださいと申し上げましたのに……っ!!」
アンヌは流れ落ちる涙を拭いもせず、しゃくり上げながら言葉を紡いだ。
その姿は弟たちが癇癪を起こした時の様子によく似ていて、こんな時になんだが、なんとも言えず温かい気持ちになる。
ふと、こんな時誰よりもうるさいルカスとエリックが静かなことに気づく。
ふたりの方へ視線を向けると、ルカスとエリックは、アンヌと私を交互に見ながらおろおろしていた。
おそらく、自分よりもずっと年上の大人が、こんな風に感情を露わにする所を見たのは初めてなのだろう。
私のことはもちろん心配。でもアンヌも心配。
幼い顔からはそんな気持ちがはっきりと見て取れて、やはり私の弟たちはどうしようもなく可愛らしくて、愛おしい。
私は怒り泣きが収まらないでいるアンヌの手を取り、涙でぐちゃぐちゃの顔を拭いてやった。
「心配してくれたのにごめんね、アンヌ……まさか私もこんなことになるなんて……」
本当に、踏んだり蹴ったりとはよくいったものだ。
嫌な空気が発生したあのあと。
部屋に到着するより先に、家人から殿下の到着を聞いたのであろう父が、前方から息を切らしながらやってきた。
『レティエ殿下!それに……リリティス!いったいなにがあったのだ』
とても心配していたのだろう。
父の顔からは疲労の色がありありと窺えた。
『お父さま──』
『なにがあったのかは私から説明しよう。ルカス、エリック。姉を部屋まで送ってやってくれるか』
『え?』
てっきり三人で今後のことについて話すのだと思っていた私は、予想もしなかった殿下の言葉に意表を突かれ、間の抜けた声が出た。
しかし、殿下は私の反応などお構いなしに床に立たせると、あとのことはルカスとエリックに任せ、心配そうに私を見る父の肩をやや強引に抱いた。
そしてそのまま振り返りもせず、父がやってきた方へと歩いていったのだ。
『ね、姉さま……?』
不安そうな顔を向けるルカスとエリック。
『……大丈夫よ。悪いけど、部屋まで連れて行ってくれる?』
身体の震えはもう治まっていたが、どうにもひとりでは部屋まで戻れる気がしなかった。
そして冒頭へと戻るのだが──
「ルカス、エリック。あなたたちにも心配をかけてごめんなさいね」
いや、この二人は心配というより殿下の訪いに浮足立っていただけのような気もするが、面倒をかけたのは事実なので素直に謝っておく。
ルカスとエリックも、私の話を聞いて思うところはあるようだったが、言いたいことはアンヌがすべて代弁してくれたのだろう。
「僕たちは姉さまが無事ならそれでいいよ。でも、もう二度とこんなことが起こらないように、僕たちも一緒に考えさせて」
真っ直ぐに見上げてくる瞳が愛おしくて、私は思わずぎゅうぎゅうと二人を抱きしめた。
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