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12.龍神の奇跡
しおりを挟む「君の妹はどうして毎回くっついて来るんだ? 俺、もしかして警戒されてる?」
エルウィンの自室へ到着するなり、彼はぐったりとうなだれてしまった。
今日、ルイーゼはついてこようとするソフィアを何とか振り切り、シュティーフェル邸へとやってきていた。
色々と距離の近いソフィアに近づかれる度、エルウィンは激しい精神的苦痛を受ける。
他人に不用意に接触されることが元々好きではないエルウィンだが、ソフィアに対しては、気づいたときには近寄られている状態。
それからの拒否反応は、無理に接近してくる者達とは比較にもならない。
しかもルイーゼとの時間も削られる。読んでもいない客人であるソフィアは、エルウィンにとっては迷惑以外の何物でもなかった。
彼女を引き離そうとすると、なぜか次々と邪魔が入るのだ。
メーベルト邸にいる時はメーベルト伯が、シュティーフェル邸にいる時はボリソヴィチ・バッソがいるから、なぜか最終的にソフィアから離れることができなくなってしまう。
「警戒?」
「……いや、まあいいや。結婚したらこの屋敷は出ることができる。ボリソヴィチ・バッソがいない空間なら、使用人に任せていても問題ないだろ」
ルイーゼとしては、新居にまでソフィアを連れてくる気は毛頭なかったのだが、今の状況だとなんだかんだで連れてくる羽目になるような気もしている。
「……結婚する時期くらい自分で決めたい」
ソファーに座り、頭を抱えてエルウィンは呻きながら、そうぼやく。
エルウィンが相当ストレスを抱え込んでいるらしいのを察知すると、ルイーゼはいつものように彼の背後へ回り込んで、抱きついた。
今はエルウィンが座っているから、首に巻き付くような格好になっているが。
ルイーゼの手が自分の目の前に来ると、エルウィンはいつものようにその手に自分の手をからめる。
エルウィンはパーソナルスペースが広いのにさみしがり屋だ、とルイーゼは見ている。彼は絶対に認めたがらないだろうが。
繊細な王子様的外見をしているが、中は意外と強情な不良少年からあまり変わっていないのだ。
「……俺、あの子苦手みたいだ」
「え?」
エルウィンの口から出てきた言葉は、ルイーゼにとってはかなり意外なものだった。
ソフィアと向き合うエルウィンの瞳には、確かに自分に向けられるものとは違う熱量があるように見えていたのに。
そんなことを考えていたら、ふいに強く手を握られた。
痛いくらいに握りしめられているのだが、エルウィンにその自覚はないらしい。
エルウィンはソフィアが恐ろしかった。やっと見つけた幸福が脅かされそうで。
拒絶したいのに、拒絶しているのにソフィアの接近を阻止できない。
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