悪役令嬢、猛省中!!

***あかしえ

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学園編

35.魔法使いのおばあさん

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 パトリックの働きかけで、クリストフ殿下は学生主体の新緑舞踏会を開くことを了承したようだ。決めてからの殿下の動きは速かった。あっという間に関係各所に根回しを行い、学校関係者のみならず王家の皆様も説得して、舞台を整えてしまったのだ。

 かつて、が悪役令嬢として辣腕らつわんを振るっていた以上の成果を出している。
 何しろ、参加希望者の数がすごい。数少ない平民も参加を表明していると言うではないか。この学園に通う平民は中流階級者が多い。
 孤児院出身であるマリー・トーマンの階級は……労働者階級に当たる。

 王家と繋がりを持つことができる労働者階級の人間なんて、千年に一度いるかいないかの貴重種! 現代英国王室ではなんか色々あったような気もするけど、ここでは無理! ある意味、奇跡なんだろうな。

 陛下は不参加だが、王妃様はいらっしゃる。これも前回と同じだ――うん。



 の舞踏会では――――――――――――――――


 ◆◆◆ ◆◆◆


「平民の小娘が、クリストフ殿下に色目を使っているようなの」

 町屋敷へ戻るなり、わたくしは執務室へ押しかけ、執務中のお父様に唇をとがらせた。お父様が今取り組んでいるのは、もう時期開かれる議会用の資料の作成ということも分かっているわ。
「平民だろう? 気にする必要があるのか?」
よ、お父様。陛下にもお分かり頂かなくては。平民を重用しようという考え自体が間違っているのだと。平民ごときでは、陛下の尊いお志など到底理解できるものではないのだということを……」
「妙案はあるのだろうな?」

 当然でしょう? わたくしを誰だと思っていらっしゃるの?



 わたくしは分をわきまえた賢い下僕たちに必要事項を伝え、舞台を整えることにした。当然、王族を巻き込むことは一筋縄ではいかなかったけれど。
 王妃はいつの頃からか、わたくしのことを疎んじるようになっていた。まあいいわ。肝心なのは政治的に権力を持つ陛下だもの。
 権力闘争で公妾こうしょうに負け、離宮の奥に引っ込んでいる王妃の発言に力などない。元より王妃は、わたくしがクリストフ殿下の婚約者になることに難色を示していた。さっさと引導を渡したいものだわ。

 公妾には伝手がある。
 そもそも、卑しい身分のあの女が公妾へ至ることができたのは、我がシテリン家の働きあってのものだもの。
 公妾をきつけて陛下を引っ張り出すことに成功した。

 ――というところで、思わぬ邪魔が入った。
 王妃陣営の人間が急に横やりを入れてきて、それを黙らせるのに手間取り準備を整えるのに時間がかかってしまった。

 けれど、計画に支障はないわ。
 一週間や二週間の遅れで、どうなるものでもない。

 大衆の眼前で、あの娘に不敬を働かせて学園から追い出して上げましょう。
 そして……失意の中、孤児院へ帰る途中で事故に遭い、死んでしまうの。

 とてもとても、可哀想素敵ね――――?




 ◇


 エスコートをクリストフ殿下にお願いしたかったのに、最後の悪あがきと言わんばかりに王妃に邪魔をされた。本当に忌ま忌ましい!
 わたくしが王太子妃となった暁には、真っ先に処分して差し上げましょう。
 嬉しいでしょう? 


 デビュー前の未成年を主とした舞踏会――新緑舞踏会の会場は、学園敷地内にある講堂。当日までに、身の程知らずな小娘に対して取ることができる手段は全て講じてきたわ。当然でしょう?

 誉れ高い王立学園で開かれる舞踏会にふさわしくない、汚らしくみすぼらしいドレスで来られては目も当てられませんもの。わたくしの下僕たちも同じ考えよ。
 そんな貧相なドレス、きっと当日までには跡形もなく消えているでしょうね。

 いい気味だわ。さて……どのような装いでいらっしゃることやら。
 …………とてもとても楽しみだわ!



「ミーシャ様、そろそろクリストフ殿下がいらっしゃいます。王宮の馬車が……」
 殿下はこの長期休暇中、王宮へ戻ってはいませんでした。
 けれど舞踏会に向けた装いをするために王宮へ戻ったのでしょう。当然だわ。
 彼はわたくしの婚約者。装いで、この場に現れる!

 使用人を迎えに行かせましょう。
 パートナーとして共に向かうことは王妃のせいで叶わなかったけれど、ここからはわたくしの独壇場とさせていただくわ。下賤な小娘が来るような場所ではないことを、わたくしとクリストフ殿下が知らしめてあげる。

 分不相応な夢を見た己を、地獄で悔いるがいいわ……!

「ミーシャ様! あれは……!」
 下僕たちがみっともなく大声を上げる。
 全く品の無い……捨て置いてしまおうかし――――――――殿下?


 エントランスが一番良く見える場所――逆を言えば、エントランスから一番よく見える場所で、わたくしはクリストフ殿下を待っていた。

 そんなわたくしの目の前に、クリストフ殿下は現れた。
 その腕に、見知らぬ穢らわしい小娘をまとわりつかせて……!



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