悪役令嬢、猛省中!!

***あかしえ

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学園編

57.感謝祭

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 マリー・トーマンには立派なドレスを用意した。

 軍資金は孤児院経由で渡してある。彼女はドレスの仕立てというものを未経験だったようで、だまくらかすのは簡単だった。ドレスを買うことに、彼女が最初から前向きだったせいもあるが。殿下やパトリックがアシストを入れてくれたのだろうか?

 採寸、仮縫い、本縫い……という行程を疑問視するマリー・トーマンには、「中古品のリメイクだから」で押し切った。軍資金は、事前に孤児院経由で渡し済みだし、不足分はシテリン家から支払い済み。

 最終確認のため来店し、完成品は寮へ送り届けてもらおうと当初は予定していた。けれど、同行していた彼女に片思い中のボディーガード君が届け出を買ってでたため、その場で持ち帰って来ることになった。デリアにそれができるかは分からないが、配送途中に何かあっても困るし、まあいいか。

 なんだかんだで、マリー・トーマンの準備は万全。
 かつてののように、デリア・リナウドはあの子のドレスをダメにしようと様々な刺客を差し向けて来たけれど――全て善処した。

 タイミングが悪かったな、デリア・リナウド!
 私は過去の経験を生かし見覚えのない使用人に対する警戒心はマキシマムなのだ。寮室に入り込んだ取り巻き軍団は、いつぞやの悪戯によるトラウマのせいで、虫が異様に苦手になっているようなので……ドアの取っ手に少々細工をしておいた。効果は抜群だったらしい。




 ――己のドレスについても、準備を怠るわけにはいかない。
 マリー・トーマンのドレスにばかりかまけている場合ではないのだ。
 私は私で、自分のドレスを用意しなければならない! ……というわけで屋敷へ戻ると、やはり今回も私用のドレスは既に仕立てられていた。

 ……私の希望とか諸々少しは聞き入れて欲しいんだけど……まあ、いいか。今回もかなりいい趣味をしている。紺地は以前と変わらないけれど、今回はその上に全体的に薄いヴェールがかけられているようだ。
 胸元正面にはヴェールがない。金色のアラベスクのような円形の刺繍がばっちり見える。

 夜空に浮かぶ月のように――――――。





 ◇◆◇ ◇◆◇



 そして、感謝祭が始まった……のだけれど。
「ミーシャ様! たっ大変です!!!」
 日も暮れたし、いざ、王城へ! と寮室のドアを開けようとした瞬間、逆に外側からドアが勢いよく開けられた。

 うわっ! 誰だ……って、グニラ・オレーン?
 目の前のグニラ・オレーンは、水色のサテン地に白のレースがふんだんに縫い付けられている豪華で品ある美しいドレスに身を包んでいる。
 随分――綺麗になったじゃないか。そうそう、平民への怒りを募らせるより、今手の中にある幸福に感謝して前向きに生きていく方がいいよ、うんうん。

「ミーシャ様! 聞いていらっしゃいますか?!」
「ごめん聞いてなかった、何?」
「……恐れながら申し上げますが、のんきにしている場合ではございませんよ、ミーシャ様!!!」
 うん、非常事態発生中らしいのは君の態度を見ていて十分分かるんだけどね?
 何かな? 火事でもあった?
「準備は整っていらっしゃいますね?!」
「え? うん……」
「では参りましょう!」
「え、あの……え??」

 グニラ・オレーンが、なぜこんなに急いで私をこの場から連れ出そうとしているのか、意味が分からなかった――――寮のエントランスへ出るまでは。


「…………クリストフ殿下?!」

 ――あ、いや、違う。一瞬、勘違いしたけど、彼は私の出迎えをするために来たわけではないんじゃないの? ここへマリー・トーマンが来たりしたら、私も結構な赤っ恥をかく羽目になるんだけど……まあ、いいか。いや、逆にいいか!
 『殿下がマリー・トーマンを、ミーシャ・デュ・シテリンより優先した!』と、この場にいる数多くの生徒たちに見せつけることもできる。

 ……そう分かってはいるんだけど、殿下がこちらに気付いて近づいて来ると、何か怒られるのではないかと身構えてしまう。完全に自業自得なのだけれども――。


「先約がないと聞いた。私のエスコートは必要か?」
 至近距離でそう問いかけられたから、周囲の生徒たちには親密な挨拶をしているようにしか見えなかっただろう。
「殿下こそ、どなたかとお約束を――」
「――していない」

 ――ど、どうする………………?!



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