悪役令嬢、猛省中!!

***あかしえ

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学園編

59.感謝祭3

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 学園内ならいざ知らず、こんな大勢の紳士淑女がいる前でデリア・リナウドを叱責するわけにはいかない。けれど、あんな騒ぎを起こしておいて自覚がないのは大問題。
 ……というわけで、人気のないバルコニーへデリア・リナウドを連れてきた。取り巻きもついてくるかと思ったけど、彼女だけが大人しくついてきた。

「ミーシャ様! 申し訳ありません、あの平民を追い出すことに手間取ってしまい……」
「ちょっと待って、私があの子を追い出せって、貴女にただの一度でも言った? 言ってないよね?! むしろ、手を出すなと口を酸っぱくなるほど言ってきた記憶があるんだけど! これって私の記憶違い? ねえ……デリアはどう思う?」

 同じ事を何度も言わせるな――と言外に言ってやれば、デリア・リナウドは驚き怯えたような仕草をしてみせる。これをうのみにすれば、驚き怯え反省していると受け取ることができる。けれど……今までの彼女の働きから、そろそろそれができなくなってきている。
「ですが……クリストフ殿下にふさわしいのは、ミーシャ様です!」
「ふさわしいって何? それを貴女が決めるのは意味が分からないよ? 平民がただただ憎いからと言ってくれた方がまだ理解できるよ……」

 前回の今頃、私はを使ってマリー・トーマンを害そうとしていたんだよな……。デリア・リナウドがそうと知らず、悪役令嬢を踏襲しているのだとしたら、状況は最悪だ。前回は殿下がマリー・トーマンを守っていた。でも今回、殿下は私をエスコートしている。今の殿下が、私を放ってマリー・トーマンにべったりとするようなことは……ないような気がする。
 マリー・トーマンのボディーガード集団は? ……いや、が機能していたらデリア・リナウドともめるような事態にはなってないか。
 ・
 ・
 ・
 遠回しにマリー・トーマンに暴漢を差し向けたりしていないかを確認すると、問題はなさそうだった。しかし、話は結局平行線に終わろうとしている……!

「そんなに気に入らないなら、視界に入れなきゃいいじゃない。わざわざ気に入らない者を視界に入れて、無理に喧嘩を売る必要なんかないでしょう?!」
「ですがミーシャ様! あのような無礼を許せばわたくし達の暮らしが脅かされます!」
「何がどうしてそうなるのよ……あの子にそんなことできるはずないでしょう?」
「わたくし達に不愉快な思いをさせます! それはもう大罪ですわ!」
 ――すごい思考回路だな……ああ、でも私も前回はこうだったんだよな。参ったなぁ。

「話し合いによる解決は無理そうだな」

 ――え…………クリストフ殿下?!
 背後から聞こえてくる声には聞き覚えがありすぎて、振り返るまでもなく誰なのかが分かってしまった。私からもデリアからも見えない位置から現れた!
 目の前のデリアの顔色が明らかに悪くなっている。殿下の口調はいつも通り丁寧で、そこに強い感情は乗せられてはいない。いないのだけれど、逆にソレが怖い。

 というか、その、マリー・トーマンはどうしたのですか? まさか放置してきたんじゃ……。
「彼女は友人に任せている」
 顔に出ていたらしい。しかし、殿下がマリー・トーマンを他人に任せている!!
 なんでそんなことになってる?! どうしてこの二人、前回みたいに親交を深めてくれないのか………………ん?

 バルコニーからフロアにいるマリー・トーマンの姿を探す。彼女は確かに見覚えのあるボディーガード集団に守られてそこにいた。殿下が傍にいなくともあの状態であれば、悪漢に襲われるようなことはないだろう。よく見たら、彼女に焦がれている例のボディーガードと…………パトリックも傍にいるのが見えた。

 ――楽し……そう…………だな、うん。


「お待ち下さい! クリストフ殿下!!」
 すがるように大声を上げたのはデリア・リナウドではなく、彼女の父、リナウド卿だ。いつからそこにいたのか、彼もまたバルコニーにいたらしく、クリストフ殿下の斜め後ろから現れた。
 ちょうど、私やデリア・リナウドの対角にいたらしい。カーテンやら彫像やらで気付かなかった。……というか、隠れていたのか? この人……。この人に対してあわれみやら情けなさやらを感じてしまう。もっとしっかりと娘を監督できないものですかね?


「話は終わったようだな」
 デリア・リナウドの相手は私からリナウド卿へ完全に引き継ぎされた、と殿下は考えたらしい。いや、父親が出てきた以上、私も退くしかないのは確かなのだが。

「フロアへ戻らないか?」
 そう言って……こちらに手を差し出してくる。
 ここに何しに来たんだと思っていたのだが、どうやら殿下は私を呼びに来たらしい。あの頼りない父親がデリア・リナウドの悪行を止められるのかと、若干の不安はある。けれど、なぜか有無を言わせぬ威圧感を見せる殿下に、それ以上、異をとなえることはできなかった。


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