無双してるのに、愛されすぎて歩けません(物理) 〜12歳児、異世界でちやほやされ中〜

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第1章 転移と出会いと、初めてのごはん

第1話『それ、カップ麺じゃなくて運命です。』

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「……今日も、カップ麺かぁ」

春日ユウト、12歳。受験生。
両親は共働きで、帰宅はいつも深夜。兄は実家に寄り付かず、冷蔵庫の中身は常に“北極”状態。
そんな彼にとって、たった一つの癒しが、コンビニで買った一杯のカップ麺だった。

今日の相棒は、背脂にんにく濃厚とんこつ醤油味。
チャーシューは厚切り、スープは二重構造、麺は中太のちぢれタイプ。
「完璧じゃん……」と、思わず唸る。

やかんの湯が沸騰する音がBGM代わりに響くなか、
お湯を注ぎ、蓋の上に割り箸を置き、タイマーを3分にセットする。

「3分待つのがいちばんつらいんだよな……」

そう、人生とは、待つことなのだ。
カップ麺の完成を前にした12歳の少年は、ふと哲学者のような顔をする。

──だが、その3分後。

「できたっ……!」

喜び勇んでテーブルに手を伸ばしたその瞬間、足元にあった塾のプリントに滑った。

「うわっ!?」

手が当たって、カップ麺が宙を舞う。

重力に従って落下するはずだった麺は、途中から妙な光を帯び始めた。
湯気が金色に変わり、まるで空間そのものが歪み始める。

「……え? ちょ、うそ、熱っつ──!」

カップ麺と一緒に、彼の体は金の光に飲み込まれていった。

 

 

「……いたた……なにここ……?」

ユウトが目を覚ましたのは、見たことのない森だった。
頭上には三つの月。空気は涼しく、葉の擦れる音だけが静かに響く。

「え、異世界……? 転移系!? ……まって、ぼく何も選ばれてないけど!?」

混乱している間に、ゴツい音が近づいてくる。
現れたのは、全員が2メートル近くありそうな全身鎧の男たちだった。

「小さき者……予言の……!」「まさか、伝承の……!」

そして次の瞬間、1人がひざまずいて叫んだ。

「“天より来たる小さき者”……ついに……御方が……!!」

「いやいや、ぼくカップ麺落としただけなんですけどぉ!?」

そのまま訳も分からず、村へと連れていかれた。

 

 

村は、ひどく貧しかった。
家は崩れかけ、子どもたちは裸足で、井戸は濁っていて、畑の作物は枯れていた。

「火が弱くてろくに料理もできない。飲み水も悪く、病が絶えぬ」

「それ……かなりまずくない……?」

ユウトは言葉を選びながらも、呆れた。

「だったらまず、火の環境を整えよう」

 

──そして始まった、異世界かまど改革。

「ロケットストーブ、って聞いたことある?」

ユウトは、その辺の石と泥、空き缶を組み合わせて手際よくかまどを作り出す。

「煙突みたいに、縦に空気の通り道を作ると、**“ドラフト効果”**っていって空気が勝手に吸い込まれて、火が安定するんだ。しかも煙が少なくて燃費がいい」

村人たちはぽかんと見つめるだけだった。

「こんな小さな子が、何を……?」

「でも……火がちゃんとついてる……!」

ユウトは続けて、水場に向かった。

「このままの水は飲んじゃダメ。腹壊すよ」

「でも他に水源が……」

「作ればいいんだよ。三層ろ過でね」

彼は木の樽を使い、布、砂利、木炭を三段に詰める。
これは“自然濾過”。炭は臭いや微生物を吸着し、砂利は大きなゴミを取り除く。
最後に煮沸すれば、飲み水として安全。

「火と水、これで生きるための基本は整った」

ユウトがにっこり笑ったとき──村人全員が言葉を失った。

「こ、これは……天使……?」

「なんて、優しい顔を……」

 

そして、ついに料理に入る。

【異世界食材:ポテト・野草卵・香草】

村の畑に残っていた干からびた芋を拾い、泥を落とし、皮ごとすりおろす。
ユウトはそれを水にさらして言った。

「こうすると、でんぷん質が抜けてカリッと焼き上がるんだ」

さらに、拾った卵と刻んだ香草(たぶんパセリ)を混ぜ、塩で下味。
焼くときは、先ほど作ったかまどの遠赤外線効果を活かすため、石板の上でゆっくりと焼いた。

「焦らない、我慢が味になる。料理って、人生に似てるんだよ」

香ばしい匂いが空気を包む。

やがて表面が黄金色にパリッと仕上がり、中からは卵のとろみが溢れ出す。

──完成したのは、ふわとろ香草ポテトガレット。

 

長老が一口、齧った。

「……っ!」

まず、カリッと焼けた外皮が小気味いい音を立てる。
続いて、とろっとした卵と芋のコクが舌を覆い、香草のさわやかさが抜ける。

「な、なんだこれは……」

噛むたびに、滋味が増していく。
塩気は控えめなのに、香ばしさがやさしく全身を包む。

「食べるって……生きるって、こんなに……」

老いた頬に、涙がつたった。

「……うまい、うますぎる……!」

次の瞬間、村人全員が地面に頭をこすりつけて叫んだ。

「ユウト様あああああああ!!!」
「村ごと差し出すんで嫁に来てください!!!!」
「いや王に! 王になってくれえええ!!」

「ちょ、え!? え!? ぼく、料理しただけなんですけど!?」

 

その日を境に、ユウトは“ちやほやされすぎる運命”を歩き始める。
本人の自覚が追いつくのは、──きっと、物語の最後になるだろう。

 
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