この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

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40. 『騎士の誓いと、ひとつの嫉妬』

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──あのとき、オレは見ていた。

ユリウスの手を、
ルカがぎゅっと握って、
「だいすき」って言った瞬間を。

 

胸の奥が、ギリッと軋んだ。

その言葉を、
オレはまだ──もらったことが、ない。

 



 

「カイン、なにか元気ないね?」

ルカがそう言って覗き込んでくる。
つぶらな瞳が、まっすぐにオレの顔を映す。

「……な、なんでもないよっ」

誤魔化そうとしたけど、
オレの耳は正直だったみたいで、すぐに熱くなる。

 

「……カイン、ぎゅーって、しよっか?」

 

その言葉に、完全に膝から崩れ落ちそうになった。
なんでそんな破壊力あるセリフを、さらっと言うんだよ、ルカ……!

 

でも、その小さな体を抱きしめると、
自分の心が少しだけ、落ち着いていくのを感じた。

 

──オレは、騎士だ。
ルカを護ると誓った。
それは、誰よりも先に、誰よりも強く、オレが。

 



 

でも……ユリウスに負けたジャンケンが、頭から離れない。

「じゃんけん、弱いの?」ってルカに笑われたとき、
悔しさよりも、もっと違う感情が込み上げてきた。

 

(……ずるいよ、ユリウス)

あんな顔、オレだけに見せてほしかった。

 



 

その夜、オレは訓練場で剣を振っていた。
汗が目に入りそうになったそのとき──

 

「……がんばってるね」

後ろから、ルカの声。

「ど、どうしてここに……っ」

「……カインくんが、ひとりで泣いてるって、ミミルが言ってた」

 

「泣いてないよ!!」

「……ほんと?」

「……ほんとは、ちょっとだけ……くやしかった」

 

──ああ、言っちゃった。

でも、ルカは笑わなかった。

 

「……じゃあ、あしたはカインくんのこと、いっぱい見るね」

それだけ言って、ミミルと一緒に手をふって帰っていった。

 

オレはその場で、ぼすっと座り込んだ。

「……もう、好きとかじゃないだろ……崇拝レベルだわ、これ……」

でも、いい。
この想いは、騎士として誓った“守るべき光”そのものなんだから。

 



 

魔法日めくりカレンダーの言葉が、
その夜だけ、ほんのり赤く光っていた。

『すこしの嫉妬と、すこしの誓い。
それが“ずっと一緒にいたい”って気持ちになるんだ。』

 

──明日は、負けない。
ジャンケンでも、気持ちでも、絶対に。

 
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