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40. 『騎士の誓いと、ひとつの嫉妬』
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──あのとき、オレは見ていた。
ユリウスの手を、
ルカがぎゅっと握って、
「だいすき」って言った瞬間を。
胸の奥が、ギリッと軋んだ。
その言葉を、
オレはまだ──もらったことが、ない。
◇
「カイン、なにか元気ないね?」
ルカがそう言って覗き込んでくる。
つぶらな瞳が、まっすぐにオレの顔を映す。
「……な、なんでもないよっ」
誤魔化そうとしたけど、
オレの耳は正直だったみたいで、すぐに熱くなる。
「……カイン、ぎゅーって、しよっか?」
その言葉に、完全に膝から崩れ落ちそうになった。
なんでそんな破壊力あるセリフを、さらっと言うんだよ、ルカ……!
でも、その小さな体を抱きしめると、
自分の心が少しだけ、落ち着いていくのを感じた。
──オレは、騎士だ。
ルカを護ると誓った。
それは、誰よりも先に、誰よりも強く、オレが。
◇
でも……ユリウスに負けたジャンケンが、頭から離れない。
「じゃんけん、弱いの?」ってルカに笑われたとき、
悔しさよりも、もっと違う感情が込み上げてきた。
(……ずるいよ、ユリウス)
あんな顔、オレだけに見せてほしかった。
◇
その夜、オレは訓練場で剣を振っていた。
汗が目に入りそうになったそのとき──
「……がんばってるね」
後ろから、ルカの声。
「ど、どうしてここに……っ」
「……カインくんが、ひとりで泣いてるって、ミミルが言ってた」
「泣いてないよ!!」
「……ほんと?」
「……ほんとは、ちょっとだけ……くやしかった」
──ああ、言っちゃった。
でも、ルカは笑わなかった。
「……じゃあ、あしたはカインくんのこと、いっぱい見るね」
それだけ言って、ミミルと一緒に手をふって帰っていった。
オレはその場で、ぼすっと座り込んだ。
「……もう、好きとかじゃないだろ……崇拝レベルだわ、これ……」
でも、いい。
この想いは、騎士として誓った“守るべき光”そのものなんだから。
◇
魔法日めくりカレンダーの言葉が、
その夜だけ、ほんのり赤く光っていた。
『すこしの嫉妬と、すこしの誓い。
それが“ずっと一緒にいたい”って気持ちになるんだ。』
──明日は、負けない。
ジャンケンでも、気持ちでも、絶対に。
ユリウスの手を、
ルカがぎゅっと握って、
「だいすき」って言った瞬間を。
胸の奥が、ギリッと軋んだ。
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オレはまだ──もらったことが、ない。
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「カイン、なにか元気ないね?」
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