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44. 《レオン視点》 『騒がしい心、黙ったままの唇』
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──可愛いだけの子だと思っていた。
はじめは、ただの興味本位だった。
小さくて、ふわふわしてて、周囲がざわつくほどの“愛され体質”。
そういう子って、たいてい──
中身はワガママだったり、媚びてたりする。
俺はそういうの、見飽きてる。
けど、ルカは──違った。
◇
最初に違和感を覚えたのは、
園で絵本を読み聞かせる時間。
「……なんで、その登場人物の感情まで理解してるんだ?」
言葉が自然すぎた。
子どもの域を、軽く超えていた。
それから俺は、
“ルカを観察する”って決めた。
表情、しぐさ、言葉、視線。
全部、記録するつもりで、毎日そばにいた。
……でも。
観察は、いつしか“惹かれる”に変わっていった。
◇
ある日、ルカが花壇の前で泣きそうな顔をしていた。
「花が、しおれてる……かわいそう……」
そう呟いて、土に手をあて、魔法をかけた。
幼児の魔力量じゃ到底無理なはずの“土壌中和”を成功させて、
ルカは静かに微笑んだ。
「元気になって、よかったね」
それを見て、心がきしんだ。
こんなにも他人の痛みに敏感で、
こんなにも優しいのに──
どうしてあんなに、無防備なんだよ。
◇
嫉妬だった。
誰にでも愛されるルカに。
誰にでも笑顔を向けるルカに。
俺には向けられたことのない“特別”を、
平然と誰にでも分け与えてしまうその姿に。
けど、ある日、
ルカが俺のことを“名前”で呼んだ。
「……レオンくん、ありがとう。
ぼく、レオンくんのツッコミだいすきだよ」
その言葉が、
胸に刺さって、抜けなかった。
俺は、自分でも驚くくらいの声で答えてしまった。
「うっ……うるせぇよ……バカ」
でも、たぶん顔は真っ赤だった。
◇
俺は、ルカを好きになった。
でもそれは、
“子どもが憧れる”とか“守りたい”って感情じゃない。
もっと、ずっと、深くて、
浅ましくて、触れてしまいたいような、恋だった。
……わかってる。
ルカは誰のものにもならない。
けど、せめて。
俺の心の中では、
“たった一人”になってくれたらいいって、そう思ってる。
◇
魔法日めくりカレンダーより:
『だれにも言えない想いほど、
いちばん強くて、ずっと残る。』
──いいさ。
言わないままで、俺は十分、壊れてる。
はじめは、ただの興味本位だった。
小さくて、ふわふわしてて、周囲がざわつくほどの“愛され体質”。
そういう子って、たいてい──
中身はワガママだったり、媚びてたりする。
俺はそういうの、見飽きてる。
けど、ルカは──違った。
◇
最初に違和感を覚えたのは、
園で絵本を読み聞かせる時間。
「……なんで、その登場人物の感情まで理解してるんだ?」
言葉が自然すぎた。
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それから俺は、
“ルカを観察する”って決めた。
表情、しぐさ、言葉、視線。
全部、記録するつもりで、毎日そばにいた。
……でも。
観察は、いつしか“惹かれる”に変わっていった。
◇
ある日、ルカが花壇の前で泣きそうな顔をしていた。
「花が、しおれてる……かわいそう……」
そう呟いて、土に手をあて、魔法をかけた。
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こんなにも他人の痛みに敏感で、
こんなにも優しいのに──
どうしてあんなに、無防備なんだよ。
◇
嫉妬だった。
誰にでも愛されるルカに。
誰にでも笑顔を向けるルカに。
俺には向けられたことのない“特別”を、
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けど、ある日、
ルカが俺のことを“名前”で呼んだ。
「……レオンくん、ありがとう。
ぼく、レオンくんのツッコミだいすきだよ」
その言葉が、
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俺は、自分でも驚くくらいの声で答えてしまった。
「うっ……うるせぇよ……バカ」
でも、たぶん顔は真っ赤だった。
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……わかってる。
ルカは誰のものにもならない。
けど、せめて。
俺の心の中では、
“たった一人”になってくれたらいいって、そう思ってる。
◇
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──いいさ。
言わないままで、俺は十分、壊れてる。
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