この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

58. 『魔法カレンダーが“予言”を始めた？園でざわめく“未来の一言”』

──朝。
目が覚めたぼくは、いつものようにミミルと一緒に起き上がった。

「おはよう、ミミル」
ミミルはふわっと光って、耳をふるふる震わせて応える。

カレンダーのめくりをしに、小さな階段をトコトコと降りる。

毎日変わる“魔法日めくりカレンダー”は、ぼくの大事な朝の儀式。

けれど──今日は、何かが違った。

　

【本日の一言】

『風が揺れて、涙の匂い。
今日、きみは誰かの涙をぬぐうでしょう。』

　

「……え？」

ちょっと詩的すぎて、最初は意味がよく分からなかった。

でも、ぼくの魔力がふわりと共鳴したのを感じて──
（これは……ただの“癒しの言葉”じゃない）

なんとなく……“未来”が、そこに書かれている気がした。

　

◇

　

その日はなんだか落ち着かなくて。
園でも、みんなの様子がいつもと少し違って見えた。

「ルカ様、どうかされましたか？」
「ん、ううん。ちょっと……考え事してて」

園長先生が朝礼で「今日の一言」を読み上げたとたん、
子どもたちはざわざわし始めた。

「誰が泣くの？」
「ルカ様が誰かを助けるの？」
「わ、わたし泣こうかな……」←なぜか女子園児に多かった。

　

──正直、ちょっと困った。

でも、昼前。
その“予言”が現実になる瞬間がやってきた。

　

◇

　

園の裏庭。
静かな木陰で、一人の男の子がしゃがみこんでいた。

──ノア、だった。

いつも無口で、控えめなノア。
それが、肩を震わせて、顔を隠して泣いていた。

「……ノアくん」

声をかけると、ノアは一瞬びくっとしたけれど、
ぼくの顔を見たとたん──わっと泣きながら、抱きついてきた。

「ルカ、ぼく……こわかった……魔力の制御ができなくて……っ、こわくて……」

「……うん、よしよし」

そっと背中をさすって、ミミルも一緒に頭をなでた。

ノアは静かに震えていたけれど、
ぼくの魔力がふんわりと彼を包み込み、落ち着きを取り戻していくのがわかった。

　

◇

　

その日の夕方。
園長先生が、カレンダーの前で小さくつぶやいた。

「……これ、“未来予知”になってきてるわね」

　

それからというもの、
“ルカ様のカレンダー”は、園児たちのあいだで
**「当たる魔法の占い」**として、ちょっとした話題になっていく。

　

◇

　

【魔法カレンダー：本日の記録】

『誰かの涙を見逃さないその優しさが、
世界をやさしく変えていく力になるんだよ』

　

──ねえ、未来が見えるのなら。
みんなの悲しみを、少しでも先に知って、守れるようになりたいな。

ぼくはミミルを抱きしめながら、そっとそう願った。