洗足池図書館物語

けんしろー

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第8話 夏の光と再出発

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第八話 夏の光と再出発

 七月、長く続いた雨がようやく明けた。
 青空に蝉の声が響き、重たかった空気が一気に解き放たれる。湿った道に陽光が差し込み、まるで世界そのものが新しく生まれ変わったかのように感じられた。

 「健太郎さん、そろそろ本気出さないとですね」
 洗足池図書館の机に座り、ねこさんが笑った。
 その笑顔は、梅雨の間に少し曇っていた表情を吹き飛ばすように明るかった。

 私も頷く。
 「そうですね。六月は正直ダメでした。停滞してました。でも、まだ夏がある」

 図書館の窓から差し込む強い日差しに照らされ、心の中にも新しい光が差し込むようだった。

 ねこさんは中学数学を終え、高校数学の基礎問題集に進んでいた。ページをめくる手はまだぎこちないが、確かに一歩一歩前へ進んでいた。
 私は英単語帳を一からやり直し、地学と物理の基礎を徹底的に固めることにした。

 「次の模試、今度はE判定じゃ終わらせませんよ」
 「僕も、ちゃんと形にしてみせます」

 互いに誓い合い、机に向かう。
 外は真夏の蝉の大合唱。だが、図書館の中は静かで、鉛筆の音だけが響いていた。

 梅雨の停滞を乗り越えた二人の中には、確かな熱が生まれていた。
 それは炎のように燃え上がるものではなく、じわじわと芯から広がる強い光だった。

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