東大受験物語

けんしろー

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第18章 春の特別講義

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第18章 春の特別講義

学年末テストが終わり、通知表を受け取った翌日。
悠真は、東進ハイスクールの春期特別招待講習に向かっていた。

特待生に選ばれた者には、
トップ講師によるライブ授業と、人気講師の映像授業見放題という特典が与えられる。

——無料で東大を目指せるなんて、願ってもないチャンスだった。


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林修の現代文

初日、現代文の教室。

悠真は、スーツ姿の男が教壇に立つやいなや、その空気に飲み込まれた。

「現代文ができない? 当たり前です。みなさん、“読んでいない”からですよ」

会場がざわついた。だが、林修の語り口は、強い説得力を帯びていた。

「読んで、“理解”して、“咀嚼”して、“判断”する。
 それができる人は、現代文なんかに苦労しません。
 現代文は“考える技術”です。受験だけじゃなく、人生を変える力を持ってます」

90分があっという間だった。
悠真は、講義後にテキストを何度も読み直し、自分の読解の甘さに愕然とした。

> ——これは、「頭で解く国語」だ。




---

再会の春:永井先生の講義

数日後、英語の春期特別講座。
会場には懐かしい人の姿があった。

「……西原?」

「悠真くん!」

目が合うと、自然と笑顔になった。

「永井先生の講座、取ったんだ」

「うん。あの冬期講習の話、聞いて。すごくよかったって」

悠真は少し、心が温かくなった。

永井先生は、相変わらず静かで強い口調だった。

「英語は言語です。ルールを覚えるだけでは通用しない。
 “英語で考える訓練”をしてください。
 ただの和訳じゃなく、英語の“まま”理解する力。
 それが、あなたたちを東大に連れていきます」

ペアワークの時間、西原と組んだ。
文構造を解説し合うたび、ふたりの距離が少しずつ近づいた。


---

志田昌先生の数学

映像ブースで悠真は、志田昌先生の数学ⅡBの授業に夢中になっていた。

「“わかる”ことと“使える”ことは違います。
 大事なのは、“自分の言葉”で数学を語れるかどうかです」

複雑だった数列の漸化式、ベクトルの内積、グラフの変域処理……
志田先生の説明は、まるで霧が晴れるように、腑に落ちていった。

参考書や問題集では分からなかった“なぜ”が、一本の映像授業で繋がっていく。
これが「プロの指導」なのか、と身をもって感じた。


---

春の終わりに

春休みの最後の日、東進のロビーで西原と鉢合わせた。

「春期講習、おつかれさま」

「おつかれ。……どうだった?」

「すごく刺激になった。……けど、それ以上に焦ったよ。
 全国からあんなにレベル高い人たち来てるのに、私はまだ全然だって」

「俺も。……でもさ、焦りって、前に進むための燃料かもな」

「そうだね。……じゃあ、夏、また一緒に頑張ろう」

「うん。また絶対、会おう」

小さく手を振って別れた西原の後ろ姿に、
悠真は心の奥に灯る小さな火を感じていた。

それは恋だった。
それは、憧れだった。
そして、東大という“答えのない問い”への、確かな一歩でもあった。
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