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第17章 本音と再出発
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第17章 本音と再出発
三学期の空気は、どこか淡くて、落ち着いていた。
けれど、その穏やかさの裏に、確かに迫るものがあった。
学年末テスト。
一年の締めくくりであり、次年度へのスタートライン。
生徒たちの間にも、張り詰めた空気が漂い始めていた。
---
すれ違い
「最近……お前、ちょっと冷たくないか?」
ある日、自習室の帰り道。高村がぽつりとつぶやいた。
「……え?」
「いや、気のせいかもしれん。でもさ、最近お前、ひとりで勉強してること多くね?」
悠真は答えに詰まった。
確かに、最近は永井先生の冬期講習以来、自分のペースを大切にしていた。
参考書のルートも、復習のタイミングも、自分なりに確立し始めていた。
「……ごめん。意識してたわけじゃない。
ただ、俺……勉強のやり方がやっと見えてきて、それを逃したくなかったんだ」
「……そうか。いや、いいんだよ、全然。
でもさ、ちょっと寂しかっただけだ」
言葉に詰まる。
この男が、こんなふうに“寂しい”なんて言うのは、初めてだった。
「……お前がいたから、俺ここまで来れたよ。これからも、いっしょにやりたい」
そう言うと、高村は目をそらしたまま、静かにうなずいた。
---
西原との距離
学年末テストに向けた準備で、教室内もざわめいていたある日。
悠真は、図書室で偶然、西原と鉢合わせた。
「悠真くん、今日ここ使う? 私、今から英語の音読しようと思ってて」
「え? 音読、するんだ」
「うん。永井先生の講習受けた友達から、すごくいいって聞いて。
……あの、よかったら、発音チェックしてくれる?」
悠真は驚いた。
自分が一方的に憧れていた西原が、今、確かに“近く”にいる。
「いいよ。俺も毎朝やってるし、発音オタクになりつつあるから」
「じゃあ、よろしくお願いしますね、先生」
ふたりの距離が、ふわりと縮まった瞬間だった。
---
卒業生の講演会
三学期のある日、講堂で東大合格者による講演会が開かれた。
話し手は、2年前の卒業生。現在、東京大学文科一類の2年生だという。
その人は、こう語った。
> 「東大は、“知識を問う場所”じゃなく、“思考を問う場所”です。
単語帳を回した数でもなく、ノートの厚さでもなく、
“自分はなぜ、この問いに挑むのか”をいつも問いかけ続けてください」
その言葉は、悠真の胸に深く刺さった。
偏差値でも、点数でもなく――
自分が“なぜ”東大を目指すのか。
気づけばメモ帳に、こんな文字が書かれていた。
> 「誰かの背中を追うのではなく、自分の足でそこに立つために。」
講演後、高村と顔を見合わせる。
そして、互いにふっと笑った。
「やるか、共闘再開」
「ああ、やるしかねえ」
---
テスト開始
学年末テスト。
英語、数学、国語――どの教科にも、積み重ねた時間と想いが詰まっていた。
結果がどうであれ、今の自分にできることを出し切る。
そんな思いでペンを握った。
そして、放課後の昇降口。
西原がふと話しかけてくれた。
「ねえ、悠真くん」
「うん?」
「東大、本気で目指してる?」
「……うん。本気だよ」
「……よかった。私も、そう。じゃあ、お互い、負けないように頑張ろうね」
その笑顔に、春の気配が重なる。
三学期の空気は、どこか淡くて、落ち着いていた。
けれど、その穏やかさの裏に、確かに迫るものがあった。
学年末テスト。
一年の締めくくりであり、次年度へのスタートライン。
生徒たちの間にも、張り詰めた空気が漂い始めていた。
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すれ違い
「最近……お前、ちょっと冷たくないか?」
ある日、自習室の帰り道。高村がぽつりとつぶやいた。
「……え?」
「いや、気のせいかもしれん。でもさ、最近お前、ひとりで勉強してること多くね?」
悠真は答えに詰まった。
確かに、最近は永井先生の冬期講習以来、自分のペースを大切にしていた。
参考書のルートも、復習のタイミングも、自分なりに確立し始めていた。
「……ごめん。意識してたわけじゃない。
ただ、俺……勉強のやり方がやっと見えてきて、それを逃したくなかったんだ」
「……そうか。いや、いいんだよ、全然。
でもさ、ちょっと寂しかっただけだ」
言葉に詰まる。
この男が、こんなふうに“寂しい”なんて言うのは、初めてだった。
「……お前がいたから、俺ここまで来れたよ。これからも、いっしょにやりたい」
そう言うと、高村は目をそらしたまま、静かにうなずいた。
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西原との距離
学年末テストに向けた準備で、教室内もざわめいていたある日。
悠真は、図書室で偶然、西原と鉢合わせた。
「悠真くん、今日ここ使う? 私、今から英語の音読しようと思ってて」
「え? 音読、するんだ」
「うん。永井先生の講習受けた友達から、すごくいいって聞いて。
……あの、よかったら、発音チェックしてくれる?」
悠真は驚いた。
自分が一方的に憧れていた西原が、今、確かに“近く”にいる。
「いいよ。俺も毎朝やってるし、発音オタクになりつつあるから」
「じゃあ、よろしくお願いしますね、先生」
ふたりの距離が、ふわりと縮まった瞬間だった。
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卒業生の講演会
三学期のある日、講堂で東大合格者による講演会が開かれた。
話し手は、2年前の卒業生。現在、東京大学文科一類の2年生だという。
その人は、こう語った。
> 「東大は、“知識を問う場所”じゃなく、“思考を問う場所”です。
単語帳を回した数でもなく、ノートの厚さでもなく、
“自分はなぜ、この問いに挑むのか”をいつも問いかけ続けてください」
その言葉は、悠真の胸に深く刺さった。
偏差値でも、点数でもなく――
自分が“なぜ”東大を目指すのか。
気づけばメモ帳に、こんな文字が書かれていた。
> 「誰かの背中を追うのではなく、自分の足でそこに立つために。」
講演後、高村と顔を見合わせる。
そして、互いにふっと笑った。
「やるか、共闘再開」
「ああ、やるしかねえ」
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テスト開始
学年末テスト。
英語、数学、国語――どの教科にも、積み重ねた時間と想いが詰まっていた。
結果がどうであれ、今の自分にできることを出し切る。
そんな思いでペンを握った。
そして、放課後の昇降口。
西原がふと話しかけてくれた。
「ねえ、悠真くん」
「うん?」
「東大、本気で目指してる?」
「……うん。本気だよ」
「……よかった。私も、そう。じゃあ、お互い、負けないように頑張ろうね」
その笑顔に、春の気配が重なる。
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