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第16章 揺れる心、見え始まる影
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第16章 揺れる心、見え始める影
年が明け、正月の静けさが去ったころ。
教室にはまた、あのざわめきと喧騒が戻ってきた。
「冬、マジで寝正月だったわー」
「おれ、初詣で“志望校合格”引いたぞ!」
そんな声の中で、悠真は静かに席についた。
冬休みに詰め込んだ知識が、まだ頭の中で熱を持って回っている。
(この感覚を、無駄にしたくない)
三学期が始まった。
---
東進の共通テスト模試
1月の中旬、悠真は永井先生の勧めで、東進の共通テスト模試を初めて受けた。
全国レベルの大規模な模試。結果が郵送で届くと知ったとき、胸が高鳴った。
模試当日。
試験会場に入ると、そこにもまた“本気の目”をした受験生たちが集まっていた。
「俺、まだまだだな……」
そんな思いを抱えながらも、英語の長文、数学のII・Bは冬期講習とマセマ効果が出て、手応えを感じられた。
特に英語の読解パートでは時間内に全問回答できたのは、自分でも驚きだった。
---
東進特待生獲得
数週間後、東進から封筒が届いた。
恐る恐る開けると、そこには**「特待生認定証」**の文字があった。
「……え、俺が……?」
条件は、模試の偏差値が一定以上で、将来の成長が見込まれる者。
そして、東大文系志望であること。
> 「君の努力は、実を結び始めている。ここからが、本番だ。」
認定証の裏には、そんなメッセージが添えられていた。
喜びの中に、不思議な不安があった。
(これに見合う努力、ちゃんと続けられるのか……)
---
西原との距離、そして戸惑い
三学期が始まって数日後、昇降口でばったり西原と出くわした。
「あ、悠真くん。東進の模試、どうだった?」
「……え? あ、うん。英語はまあまあ、かな。ちょっと特待もらえた」
「え、すごいじゃん……! 実は私も、受けたんだよ。
偏差値74だったけど、まだ満足してないんだ」
その一言が胸に突き刺さった。
(やっぱり……西原はずっと、ずっと前を走ってる)
LINEのやりとりも、以前より少しぎこちなくなっていく。
返信までの時間が長くなり、絵文字の数も減った気がした。
(俺、何を期待してるんだろう……)
勉強と恋と、夢と現実。
その全てが、少しずつ交差し始める。
---
高村の沈黙
そんなある日。
いつものように自習室で勉強していると、高村が静かに席に着いた。
「……お前、すごいな。冬で一気に伸びたな」
「え? いや、そんなことないよ。高村だって……」
「いや。正直、焦ってる。お前に追いつける気がしないんだ」
いつも明るく豪快な高村の声が、小さく震えていた。
「俺さ……たぶん、“努力の仕方”がわかんなくなってんだよな。
目の前の問題は解いてるのに、結果がついてこないっていうか……」
悠真は言葉に詰まった。
(高村に支えられてきた自分が、今度は支えられる立場なのか?)
---
変化の始まり
冬から春に向かう季節。
クラスの空気も少しずつ変わり始めていた。
悠真の存在が、少しずつ「ただの元・落ちこぼれ」から
「本気で勉強してるやつ」へと変わりつつあるのを感じた。
だが、それと同時に――
西原との距離は、少しずつ微妙なバランスを見せ始め、
高村の目からも、迷いや戸惑いが見えるようになっていた。
年が明け、正月の静けさが去ったころ。
教室にはまた、あのざわめきと喧騒が戻ってきた。
「冬、マジで寝正月だったわー」
「おれ、初詣で“志望校合格”引いたぞ!」
そんな声の中で、悠真は静かに席についた。
冬休みに詰め込んだ知識が、まだ頭の中で熱を持って回っている。
(この感覚を、無駄にしたくない)
三学期が始まった。
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東進の共通テスト模試
1月の中旬、悠真は永井先生の勧めで、東進の共通テスト模試を初めて受けた。
全国レベルの大規模な模試。結果が郵送で届くと知ったとき、胸が高鳴った。
模試当日。
試験会場に入ると、そこにもまた“本気の目”をした受験生たちが集まっていた。
「俺、まだまだだな……」
そんな思いを抱えながらも、英語の長文、数学のII・Bは冬期講習とマセマ効果が出て、手応えを感じられた。
特に英語の読解パートでは時間内に全問回答できたのは、自分でも驚きだった。
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東進特待生獲得
数週間後、東進から封筒が届いた。
恐る恐る開けると、そこには**「特待生認定証」**の文字があった。
「……え、俺が……?」
条件は、模試の偏差値が一定以上で、将来の成長が見込まれる者。
そして、東大文系志望であること。
> 「君の努力は、実を結び始めている。ここからが、本番だ。」
認定証の裏には、そんなメッセージが添えられていた。
喜びの中に、不思議な不安があった。
(これに見合う努力、ちゃんと続けられるのか……)
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西原との距離、そして戸惑い
三学期が始まって数日後、昇降口でばったり西原と出くわした。
「あ、悠真くん。東進の模試、どうだった?」
「……え? あ、うん。英語はまあまあ、かな。ちょっと特待もらえた」
「え、すごいじゃん……! 実は私も、受けたんだよ。
偏差値74だったけど、まだ満足してないんだ」
その一言が胸に突き刺さった。
(やっぱり……西原はずっと、ずっと前を走ってる)
LINEのやりとりも、以前より少しぎこちなくなっていく。
返信までの時間が長くなり、絵文字の数も減った気がした。
(俺、何を期待してるんだろう……)
勉強と恋と、夢と現実。
その全てが、少しずつ交差し始める。
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高村の沈黙
そんなある日。
いつものように自習室で勉強していると、高村が静かに席に着いた。
「……お前、すごいな。冬で一気に伸びたな」
「え? いや、そんなことないよ。高村だって……」
「いや。正直、焦ってる。お前に追いつける気がしないんだ」
いつも明るく豪快な高村の声が、小さく震えていた。
「俺さ……たぶん、“努力の仕方”がわかんなくなってんだよな。
目の前の問題は解いてるのに、結果がついてこないっていうか……」
悠真は言葉に詰まった。
(高村に支えられてきた自分が、今度は支えられる立場なのか?)
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変化の始まり
冬から春に向かう季節。
クラスの空気も少しずつ変わり始めていた。
悠真の存在が、少しずつ「ただの元・落ちこぼれ」から
「本気で勉強してるやつ」へと変わりつつあるのを感じた。
だが、それと同時に――
西原との距離は、少しずつ微妙なバランスを見せ始め、
高村の目からも、迷いや戸惑いが見えるようになっていた。
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