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第二章:貪欲令嬢イザベラ
許さない絶対にだ
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……いったぁぁぁい!
「何をなさるの!?」
私も思わず相手をにらみつけてしまった。
その時彼女が
「ブフゥッ!」
という、家畜の様な鼻息を発したため、不覚にも噴き出してしまった。
それは私だけではなく、私も侍女とお針子さん、女将さんもだった。
当然イザベラ辺境伯令嬢は、顔まで真っ赤にして激怒。
ただ一人、彼女についていた侍女だけが真顔で冷静だったのが印象に残っている。
「アテクシはねぇっ! リリオールス辺境伯の令嬢! あーたみたいな田舎の小娘とはわけが違うの!」
……なんだろう、彼女が何か言って息継ぎするたび、
「ブゴッ! ブゴッ!」
っていう家畜の様な息づかいが聞こえてしまって、本人は本当に怒ってるんだろうけど、笑っちゃう。
笑いを必死にこらえていると、彼女つきの侍女が
「イザベラお嬢様、本日の目的であるミーニャ伯爵と謁見の時間が迫っていますので……」
と促して、連れ出してくれた。
何故アッシュのお父様であるミーニャ伯爵に謁見を?
私は仕立て屋を出たあと、伯爵邸に足を運んだ。
今日はアッシュの帰宅が16時になると聞いているから、今からなら間に合う。
伯爵邸に着くと、ちょうどアッシュが庭師と一緒に裏庭でバラの剪定をしていた。
「やぁポリーナ、どうしたんだい?」
私がアッシュに近づこうとしたその時、裏口からイザベラ嬢が飛び出してきた。
「アッシュ様ぁぁーんっ!」
しかもアッシュに猪突猛進して抱き着く。
ハァ!? 何してくれちゃってんのこのかちry……いやいや、イザベラ嬢は!?
でもアッシュは冷静にかちry……じゃなかった、イザベラ嬢を引きはがしにかかった。
「いったいどなたです? 急に父に面会したりして」
あらアッシュったら意外とパワフル。
イザベラ嬢はすごい鼻息を噴射しながら、身長差を利用して上目遣いでアッシュを見る。
私の方が少し背が高いから、彼女の上目遣いが見える。
口が悪いとは思うけど……はっきり言って、おぞましい。
私やアッシュが困惑するのにも構わず、イザベラ嬢は堂々とのたまった。
「伯爵には、資金援助のお願いに来ましたの。我が領地はここより北方で、先の冷害により農作物が不作でしたから」
ヨヨヨ……なんてか弱いフリ?をしているけど、この人絶対故意にやってる。
だって本当に領地が困窮していたら、領民の為に財を使うのが領主の役目なはず。
まずはそれもせず、何故三つも領地をまたいだミーニャ伯爵領までわざわざ来て、資金援助のお願いとは……。
「イザベラ嬢。まずはあなたがその豪奢なドレスや宝石、扇子を買い漁るのをやめるべきでは?」
貴族として当たり前のことをアッシュは言う。
おそらく私の実家へ要求されても、私や父上は同じ返答をする。
「えぇ~っ? それは嫌ですわー」
ま、また「ブゴッ、ブゴッ」というかちryすぎる鼻息。
もうやめて。どうしても笑ってしまうの。
「アテクシは辺境伯令嬢ですの、その社会的地位にふさわしい装いは必要です」
ああ、その隣にいる侍女の目が澱んでいる……。
そして私だけには、侍女のつぶやきが聞こえてしまった。
「お嬢様の散財が原因なのに……辺境伯様も領民もそれで苦しんでるのに」
そして侍女は蔑んだ視線をイザベラ嬢に向けた。
「私の家族も食べ物がなくて苦しんだのに……この赤豚がっ……」
「何をなさるの!?」
私も思わず相手をにらみつけてしまった。
その時彼女が
「ブフゥッ!」
という、家畜の様な鼻息を発したため、不覚にも噴き出してしまった。
それは私だけではなく、私も侍女とお針子さん、女将さんもだった。
当然イザベラ辺境伯令嬢は、顔まで真っ赤にして激怒。
ただ一人、彼女についていた侍女だけが真顔で冷静だったのが印象に残っている。
「アテクシはねぇっ! リリオールス辺境伯の令嬢! あーたみたいな田舎の小娘とはわけが違うの!」
……なんだろう、彼女が何か言って息継ぎするたび、
「ブゴッ! ブゴッ!」
っていう家畜の様な息づかいが聞こえてしまって、本人は本当に怒ってるんだろうけど、笑っちゃう。
笑いを必死にこらえていると、彼女つきの侍女が
「イザベラお嬢様、本日の目的であるミーニャ伯爵と謁見の時間が迫っていますので……」
と促して、連れ出してくれた。
何故アッシュのお父様であるミーニャ伯爵に謁見を?
私は仕立て屋を出たあと、伯爵邸に足を運んだ。
今日はアッシュの帰宅が16時になると聞いているから、今からなら間に合う。
伯爵邸に着くと、ちょうどアッシュが庭師と一緒に裏庭でバラの剪定をしていた。
「やぁポリーナ、どうしたんだい?」
私がアッシュに近づこうとしたその時、裏口からイザベラ嬢が飛び出してきた。
「アッシュ様ぁぁーんっ!」
しかもアッシュに猪突猛進して抱き着く。
ハァ!? 何してくれちゃってんのこのかちry……いやいや、イザベラ嬢は!?
でもアッシュは冷静にかちry……じゃなかった、イザベラ嬢を引きはがしにかかった。
「いったいどなたです? 急に父に面会したりして」
あらアッシュったら意外とパワフル。
イザベラ嬢はすごい鼻息を噴射しながら、身長差を利用して上目遣いでアッシュを見る。
私の方が少し背が高いから、彼女の上目遣いが見える。
口が悪いとは思うけど……はっきり言って、おぞましい。
私やアッシュが困惑するのにも構わず、イザベラ嬢は堂々とのたまった。
「伯爵には、資金援助のお願いに来ましたの。我が領地はここより北方で、先の冷害により農作物が不作でしたから」
ヨヨヨ……なんてか弱いフリ?をしているけど、この人絶対故意にやってる。
だって本当に領地が困窮していたら、領民の為に財を使うのが領主の役目なはず。
まずはそれもせず、何故三つも領地をまたいだミーニャ伯爵領までわざわざ来て、資金援助のお願いとは……。
「イザベラ嬢。まずはあなたがその豪奢なドレスや宝石、扇子を買い漁るのをやめるべきでは?」
貴族として当たり前のことをアッシュは言う。
おそらく私の実家へ要求されても、私や父上は同じ返答をする。
「えぇ~っ? それは嫌ですわー」
ま、また「ブゴッ、ブゴッ」というかちryすぎる鼻息。
もうやめて。どうしても笑ってしまうの。
「アテクシは辺境伯令嬢ですの、その社会的地位にふさわしい装いは必要です」
ああ、その隣にいる侍女の目が澱んでいる……。
そして私だけには、侍女のつぶやきが聞こえてしまった。
「お嬢様の散財が原因なのに……辺境伯様も領民もそれで苦しんでるのに」
そして侍女は蔑んだ視線をイザベラ嬢に向けた。
「私の家族も食べ物がなくて苦しんだのに……この赤豚がっ……」
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