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12.恋は人を愚かにするし、たまに強くしたりもする
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アレスは適度に日に焼けているが、それでも色白なその顔が、まるで熟れすぎた林檎のように真っ赤になっていた。
そんなアレスを見た事が無くて、思わずぎょっとしてしまった。目を見開き、潤んだ瞳をオレに向けてくる。
どうしてしまったのか意味がわからず、アレス、と不安になって呼びかけると、
「う、う、うわあああああ! やった、やったぞ! ついにメルがオレの事好きだって言ってくれた!」
そう、興奮したまま叫んだ。見開いた目はさらに開かれ、瞳孔が開いていた。
「あぁもう、本当にこんな日が来るなんて、信じられない! でもこれで、オレたち両想いってことだよね! メル、結婚式はどこで挙げようか! 墓はオレたちの故郷に立てるよな、それだったら、教会を作ってそこで誓いを交わそう! そしたら墓場まで、どこまでも一緒だよ、メル!」
めちゃくちゃな早口でまくしたてられた時の、オレの気持ちを五文字以内で答えてください。……はいっ、正解は、唖然でした! 呆然でもいい。
アレス、お前人の話、聞いてた??
開いた口がふさがらなかった。
何も言葉をかけられなかった、いや、言葉を挟めなかった。アレスはなおも、オレを抱き締めながら、二人の人生計画を早口でまくしたて続けた。
「二人の子供は何人育てる? とりあえず十人くらい育てよっか。オレ達の故郷を盛り立てて行ってもらわないといけないから、他所から人もいれるか。オレとメルの村によそ者が入るのは正直良い気しないけど、それだと村とはいえないもんね。そこは我慢するよ。メルはその人達にやりたい事言って、指揮してくれたらいいからね。従わない奴が居たら、オレに言って。オレは、メルがすることならなんだって受け入れるよっ」
脳が、文章を理解するのを拒否している感じがする……。
えっ、これ、本当にアレス? 本当の本当に、勇者として人々の前に出て、朗らかに対応していた、あの、アレス??
「ああもう、大好きだよ、メル。もう二度と離れないでいようね。もう絶対離さないよ、メル!」
大好きだ、という単語だけ何とか理解する事ができたが、あとはまるで意味がわからなかった。
「な、なあ、アレス。一回、落ち着いて……」
こんな、早口で凄く嬉しそうにまくし立てるアレスは見た事が無いので、この宥め方で合っているのか自信が無かったが、どうやら正解だったようだ。
「うん、わかった」
こくりと頷きオレを見るのは、正真正銘、アレスだった。見慣れた綺麗な顔は、先程までまくし立てていた時と同一人物だとは、到底思えなかった。
オレは、混乱する頭を何とか動かし、言葉を発する。
「えっと、だからな、アレス。勇者であるお前とは、一緒に居られないんだよ……」
「だから、勇者辞める」
「バカ!」
さっきから話しが堂々巡りしている事に気付き、一生懸命、アレスに勇者とは何かどう人々に見られているのか、説明を試みる。
「勇者は簡単に辞めたりできないんだぞ。みんなが、お前に期待してるんだ。人類の希望といっても過言じゃない。魔王を倒し、魔物を排除し、世界にようやく平和が訪れるかもしれないんだ。
だから王様も、あの三人を仲間にしたし、王女と結婚させて、ひいてはこの国の王にするって、言ったんだ。みんなの期待を一心に背負った、勇者なんだよ、お前は。簡単に辞められるわけないだろう」
伝わっただろうか。伝わって欲しい。戦いは、もう、嫌なんだ。平和になって欲しい。
オレの心からの願いでもある。
オレの言葉を、アレスはオレを見つめながら聞いていた。恥ずかしくて目線を逸してしまったのは、仕方ないだろう。
「メルは?」
「へっ?」
「メルは、オレに、何を望んでいるんだ?」
「お、オレ?」
アレスは、なおも一心にオレだけを見ている。
「あぁ。メルは、みんなとか人類がとか、凄く大きな主語を使うけど、メルが、どうして欲しいのか、聞いてない。オレも馬鹿だよな、最初からこうやって、メルが何を欲しいのか、何して欲しいのか聞けば良かったんだよな」
まるで恋人に向けるような、甘やかな表情、甘い言葉。
蕩けるような雰囲気に、つい見惚れてしまったのだか……オレ、気付いてしまったかもしれない。
今、この瞬間、この選択が、世界にとって重大な場面なんじゃないか、と。
こっ、これ、選択間違えたら取り返しつかなくなるやつじゃないのか……?!
「なぁ、オレに教えてくれよ。メルは……メルク・リウは、何が欲しいんだ? 何でも言って」
なおも、まるで付き合いたての恋人に誕生日プレゼントは何が良いか聞いてくるぐらいの気安さで、オレに尋ねてくるアレス。
混乱は続いているが……ええい、もう、どうにでもなれ!
「へっ、平和が、欲しいっ。もう、命のやり取りとか、戦いとか、したくないっ。魔物の恐怖とか感じなくて良いような、平和な、世の中が、欲しい。それで、できるなら、アレスと一緒に暮らしたい……」
これ、めちゃくちゃ恥ずかしいな! 確かに、全部思っていた事だ。本心からの言葉だ。
だからこそ、余計に、恥ずかしい。まるで子供のような願い事。
でも、アレスは。
「わかった」
真面目な顔が、嬉しそうに朗らかに開いていった。
馬鹿にせず聞いてくれただけでなく、アレスはしっかりと頷いた。
「取りあえず、魔王とかいう奴を倒せば良いんだな」
至極真面目な、しかし見間違いでなければ甘やかな雰囲気でアレスは、オレを見る。
「た、たぶん。前にアンリが言ってたけど、全ての魔物は、魔王がいるダンジョンから、各地のダンジョンを通じて地上に来てるって」
ちゃんとした説明は、本人にしてもらった方か良いだろう。単純に、前に聞きかじった事をアレスに伝えると、
「ふぅん。アンリが、ねぇ」
何故か、面白くなさそうな返事がかえってきた。
だが、一応納得はしてくれたようだ。
「まぁ、倒せば良いんだろ、倒せば」
乱暴な納得の仕方だが、今までよりは確かな目標意識を感じた。
「メルは、戦うのが嫌だったんだよな? 気付かなくて、ゴメンな」
優しく抱き寄せられ、よしよしと頭を撫でられる。
恥ずかしい。が、嬉しくもあるので黙っておく。
「じゃあ、さっさと倒してくる。少しだけ、オレを待っててくれるか?寂しい思いさせてしまうけど、これが終わればずっと一緒だから!」
「えっ?」
「あ、もちろんすぐ戻ってくるけど、浮気なんかするなよ、メル。まあ、オレ以上に良い男なんていないけど、メルは優しいから、変な奴に絆され……」
「なに馬鹿なこと言ってんだよ! お前以外、ほだされるわけないだろ!」
夕闇が迫る空に、オレの声が響き渡っていた。
そんなアレスを見た事が無くて、思わずぎょっとしてしまった。目を見開き、潤んだ瞳をオレに向けてくる。
どうしてしまったのか意味がわからず、アレス、と不安になって呼びかけると、
「う、う、うわあああああ! やった、やったぞ! ついにメルがオレの事好きだって言ってくれた!」
そう、興奮したまま叫んだ。見開いた目はさらに開かれ、瞳孔が開いていた。
「あぁもう、本当にこんな日が来るなんて、信じられない! でもこれで、オレたち両想いってことだよね! メル、結婚式はどこで挙げようか! 墓はオレたちの故郷に立てるよな、それだったら、教会を作ってそこで誓いを交わそう! そしたら墓場まで、どこまでも一緒だよ、メル!」
めちゃくちゃな早口でまくしたてられた時の、オレの気持ちを五文字以内で答えてください。……はいっ、正解は、唖然でした! 呆然でもいい。
アレス、お前人の話、聞いてた??
開いた口がふさがらなかった。
何も言葉をかけられなかった、いや、言葉を挟めなかった。アレスはなおも、オレを抱き締めながら、二人の人生計画を早口でまくしたて続けた。
「二人の子供は何人育てる? とりあえず十人くらい育てよっか。オレ達の故郷を盛り立てて行ってもらわないといけないから、他所から人もいれるか。オレとメルの村によそ者が入るのは正直良い気しないけど、それだと村とはいえないもんね。そこは我慢するよ。メルはその人達にやりたい事言って、指揮してくれたらいいからね。従わない奴が居たら、オレに言って。オレは、メルがすることならなんだって受け入れるよっ」
脳が、文章を理解するのを拒否している感じがする……。
えっ、これ、本当にアレス? 本当の本当に、勇者として人々の前に出て、朗らかに対応していた、あの、アレス??
「ああもう、大好きだよ、メル。もう二度と離れないでいようね。もう絶対離さないよ、メル!」
大好きだ、という単語だけ何とか理解する事ができたが、あとはまるで意味がわからなかった。
「な、なあ、アレス。一回、落ち着いて……」
こんな、早口で凄く嬉しそうにまくし立てるアレスは見た事が無いので、この宥め方で合っているのか自信が無かったが、どうやら正解だったようだ。
「うん、わかった」
こくりと頷きオレを見るのは、正真正銘、アレスだった。見慣れた綺麗な顔は、先程までまくし立てていた時と同一人物だとは、到底思えなかった。
オレは、混乱する頭を何とか動かし、言葉を発する。
「えっと、だからな、アレス。勇者であるお前とは、一緒に居られないんだよ……」
「だから、勇者辞める」
「バカ!」
さっきから話しが堂々巡りしている事に気付き、一生懸命、アレスに勇者とは何かどう人々に見られているのか、説明を試みる。
「勇者は簡単に辞めたりできないんだぞ。みんなが、お前に期待してるんだ。人類の希望といっても過言じゃない。魔王を倒し、魔物を排除し、世界にようやく平和が訪れるかもしれないんだ。
だから王様も、あの三人を仲間にしたし、王女と結婚させて、ひいてはこの国の王にするって、言ったんだ。みんなの期待を一心に背負った、勇者なんだよ、お前は。簡単に辞められるわけないだろう」
伝わっただろうか。伝わって欲しい。戦いは、もう、嫌なんだ。平和になって欲しい。
オレの心からの願いでもある。
オレの言葉を、アレスはオレを見つめながら聞いていた。恥ずかしくて目線を逸してしまったのは、仕方ないだろう。
「メルは?」
「へっ?」
「メルは、オレに、何を望んでいるんだ?」
「お、オレ?」
アレスは、なおも一心にオレだけを見ている。
「あぁ。メルは、みんなとか人類がとか、凄く大きな主語を使うけど、メルが、どうして欲しいのか、聞いてない。オレも馬鹿だよな、最初からこうやって、メルが何を欲しいのか、何して欲しいのか聞けば良かったんだよな」
まるで恋人に向けるような、甘やかな表情、甘い言葉。
蕩けるような雰囲気に、つい見惚れてしまったのだか……オレ、気付いてしまったかもしれない。
今、この瞬間、この選択が、世界にとって重大な場面なんじゃないか、と。
こっ、これ、選択間違えたら取り返しつかなくなるやつじゃないのか……?!
「なぁ、オレに教えてくれよ。メルは……メルク・リウは、何が欲しいんだ? 何でも言って」
なおも、まるで付き合いたての恋人に誕生日プレゼントは何が良いか聞いてくるぐらいの気安さで、オレに尋ねてくるアレス。
混乱は続いているが……ええい、もう、どうにでもなれ!
「へっ、平和が、欲しいっ。もう、命のやり取りとか、戦いとか、したくないっ。魔物の恐怖とか感じなくて良いような、平和な、世の中が、欲しい。それで、できるなら、アレスと一緒に暮らしたい……」
これ、めちゃくちゃ恥ずかしいな! 確かに、全部思っていた事だ。本心からの言葉だ。
だからこそ、余計に、恥ずかしい。まるで子供のような願い事。
でも、アレスは。
「わかった」
真面目な顔が、嬉しそうに朗らかに開いていった。
馬鹿にせず聞いてくれただけでなく、アレスはしっかりと頷いた。
「取りあえず、魔王とかいう奴を倒せば良いんだな」
至極真面目な、しかし見間違いでなければ甘やかな雰囲気でアレスは、オレを見る。
「た、たぶん。前にアンリが言ってたけど、全ての魔物は、魔王がいるダンジョンから、各地のダンジョンを通じて地上に来てるって」
ちゃんとした説明は、本人にしてもらった方か良いだろう。単純に、前に聞きかじった事をアレスに伝えると、
「ふぅん。アンリが、ねぇ」
何故か、面白くなさそうな返事がかえってきた。
だが、一応納得はしてくれたようだ。
「まぁ、倒せば良いんだろ、倒せば」
乱暴な納得の仕方だが、今までよりは確かな目標意識を感じた。
「メルは、戦うのが嫌だったんだよな? 気付かなくて、ゴメンな」
優しく抱き寄せられ、よしよしと頭を撫でられる。
恥ずかしい。が、嬉しくもあるので黙っておく。
「じゃあ、さっさと倒してくる。少しだけ、オレを待っててくれるか?寂しい思いさせてしまうけど、これが終わればずっと一緒だから!」
「えっ?」
「あ、もちろんすぐ戻ってくるけど、浮気なんかするなよ、メル。まあ、オレ以上に良い男なんていないけど、メルは優しいから、変な奴に絆され……」
「なに馬鹿なこと言ってんだよ! お前以外、ほだされるわけないだろ!」
夕闇が迫る空に、オレの声が響き渡っていた。
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