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裏話・勇者の追放 後編
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「かの勇者は、わたくし達王家がせねばならぬ事を、代わりに成し遂げてくれたのですよ! 魔王を倒してくれた勇者の望みを叶えぬどころか、あまつさえ笑うなどと、どうかしています!」
はぁはぁ、と肩で息をする可憐な王女に、一瞬、全ての動きが止まった。
王は、はじめて溺愛していた娘に強く叱られ、驚きのあまり思考停止していた。
王女が、くるりと視線を王から勇者達に向けた。
「……申し訳無かったわね、勇者アレス。そなたの望み、最大限叶えられるよう考慮しましょう」
勇者ですら、以前会った時とは違った印象の王女に、ポカンとして一瞬反応が遅れた。
「あっ、ありがとうございます」
「ええ。……隣の者が、その伴侶になる者ね。そなたが選んだのだから、間違いは無いのでしょう」
可憐な王女オフィーリアにニコリと微笑まれたメルクは、顔を真っ赤にしたあと、何と言って良いのかわからず、頭を下げるように俯いた。
そしてここで、勇者はメルクの腰に回している腕に、ギュッと力を入れた。
「王様、並びに王女様に聞いて頂きたい事があります。
魔王は……私の父親でした。正確には乗っ取られていたようですが。ですが、魔王として行っていた非道は父親の身体を使い行われていたので、父親がしたといっても過言ではありません。私の手で決着を着けたとはいえ、人々を欺き続けた私に、もはや勇者の資格は無いと思います」
申し訳ありません、と勇者は深々と頭を下げた。
ようやく、娘の叱責から立ち直ろうとしていた王に再び衝撃が訪れた。
「なっ、な、なんだとぉ!」
黙って成り行きを見守っていた三人娘も、そこまでバラすのかと驚いていた。
わなわなと、玉座の肘掛けを握る王の手が震える。
「ゆっ、許せぬ! 娘との結婚を断ったばかりか、そなたの父が、前勇者が魔王だったと? 戯言もいい加減にしろ! 衛兵! この愚か者を即刻引っ立て、処刑にしろ!」
王は口の端から涎を撒き散らしながら、喚いた。誰から見ても、怒りで我を忘れているようだった。
衛兵は、一騎当千の勇者に掴みかかるのが恐ろしく尻込みしていた。
それでなくとも、視線だけで人を殺せそうな顔で勇者が見ているので、動ける者は少なかった。
三人娘も、どう動いたものかと顔を見合わせて困っていた。
そんな中。
「お父様」
この混乱を収めたのも、王女だった。
静かな声で、喚き散らしていた父に語りかける。
「魔王を倒した勇者を国が処刑しては、威信にかかわりますわ。ここは、勇者の任を解き、ただの平民に戻る事を勇者が望んだとして、国の片隅にある辺境に追放する、ぐらいがせいぜいでしょう」
そこで、意味深に王女はアレスとメルクを見た。何だと、二人は王女を見返したが、王女はぷいと顔を背け、また王を見た。
「それにわたくし、良い所を知っていますの。山奥の辺鄙な所だそうですわ。魔物に襲われて誰も住んでいないそうです。一から作らねばならぬので、苦労する事でしょうね」
そう言って王女が告げたのは、アレスやメルクの故郷の村の名前だった。
王は、その村の名前に聞き覚えが無いらしく、まるで流罪のようだと思ったのだろうか、そこまで王女か言うのなら、としぶしぶ頷いたのだった。
ここで驚いたのは、アレスとメルクだ。
お互いに顔を見合わせて、王女を見た。これは偶然なのか、はたまた王女に何らかの考えがあるのか、と。
だが王女は何もそれについては反応せず、バッと掌を臣下たちに向けた。
「決定を下します! 勇者アレス、あなはたは身内から魔王という邪悪を輩出してしまった罪を、自らの行いで償いました。しかし、その事が人心に与える影響は無視できるものでは無い。しかしながら、あなたの功績は歴史に残る素晴らしいものです。ですから、辺境への追放で許しましょう。さあ、その勇者としての鎧と、王国から下賜された剣を外し、さっさと出ておいきなさい!」
王女が、威厳たっぷり宣言を下した。王は頭痛そうに額に手を当てていた。
二人に嫌は無いので、そのままの頷こうとした時、
「そんな王女様っ、こんなの横暴です!」
「勇者がいなければ、この偉業は達成できませんでした!」
「あぁ、何という事でしょう。神のご慈悲を知らないのですか」
三人娘が、それぞれ抗議の声を上げたのだ。メルクは、三人を振り返った。庇ってくれて嬉しかったのだ。
王女はその様子を見て、何かを思ったようだったが、あくまで王女の顔で彼らを見下ろした。
「わたくしの決定に不満の声を上げるとは、不敬である。ミーナ、アンリ、そなたらにも一年間の流罪を申し渡す。場所は、勇者と同じ所で良いでしょう。エレフィーナ、あなたは神殿から派遣される監視役として、共にに同行しなさい」
三人娘もビックリし、お互いに顔見合わせた。
王様や、周りの重臣も意味がわからない。三人まで追いやる必要性があるのか、と。
だが、王女は今までに無いくらいピシャリと言い放った。
「これで謁見は終いだ、不服は受け付けぬ! みな下りなさい!」
そして、頭を抱えたままの王と、何故かやり切った顔の王女は謁見の間を後にし、勇者パーティーはお城から厄介払いとばかりに、グイグイと追い出された。
嬉しさで舞い上がり早口にメルクに愛を告げるアレスと、それを一心に受けるメルク、何が何やらわからないが、とにかくまだ旅が続いているようで少しだけ嬉しいアンリとエレフィーナ、生真面目なせいで追放に悩んでいたが、吹っ切れた後はアレス達の村作りを手伝おうという真面目さを見せたミーナは、ワイワイと馬車に乗り込み、メルクたちの故郷に向かったのであった。
一年後。
ちゃんと三人娘は許されて王都に戻り(アンリは戻りたがらなかったが)、王女、今や王位継承権第一位のオフィーリア姫により、さらに高い地位を与えられ活躍していた。
三人の友情は末永く続いたという。
そしてアレスとメルは、城を追い出された形になったが故郷に帰り、無事、自分たちで建てた教会で結婚式を上げて生涯伴に過ごした。
村も、王国中から人々を受け入れ、孤児を引き取り、村を再建し、二人は悠々自適に暮らしていったようだ。
三人娘もたまに遊びに来たりして、寂しくはなかったらしい。
彼らが再興した村は、山奥とはいえその豊富な資源を使い、ますます繁栄し、王国でも指折りの立派な村、いや町にまで発展したのであった。
そしてその村は、通称、こう呼ばれる。
追放者たちの村、と。
本当に終わり。
はぁはぁ、と肩で息をする可憐な王女に、一瞬、全ての動きが止まった。
王は、はじめて溺愛していた娘に強く叱られ、驚きのあまり思考停止していた。
王女が、くるりと視線を王から勇者達に向けた。
「……申し訳無かったわね、勇者アレス。そなたの望み、最大限叶えられるよう考慮しましょう」
勇者ですら、以前会った時とは違った印象の王女に、ポカンとして一瞬反応が遅れた。
「あっ、ありがとうございます」
「ええ。……隣の者が、その伴侶になる者ね。そなたが選んだのだから、間違いは無いのでしょう」
可憐な王女オフィーリアにニコリと微笑まれたメルクは、顔を真っ赤にしたあと、何と言って良いのかわからず、頭を下げるように俯いた。
そしてここで、勇者はメルクの腰に回している腕に、ギュッと力を入れた。
「王様、並びに王女様に聞いて頂きたい事があります。
魔王は……私の父親でした。正確には乗っ取られていたようですが。ですが、魔王として行っていた非道は父親の身体を使い行われていたので、父親がしたといっても過言ではありません。私の手で決着を着けたとはいえ、人々を欺き続けた私に、もはや勇者の資格は無いと思います」
申し訳ありません、と勇者は深々と頭を下げた。
ようやく、娘の叱責から立ち直ろうとしていた王に再び衝撃が訪れた。
「なっ、な、なんだとぉ!」
黙って成り行きを見守っていた三人娘も、そこまでバラすのかと驚いていた。
わなわなと、玉座の肘掛けを握る王の手が震える。
「ゆっ、許せぬ! 娘との結婚を断ったばかりか、そなたの父が、前勇者が魔王だったと? 戯言もいい加減にしろ! 衛兵! この愚か者を即刻引っ立て、処刑にしろ!」
王は口の端から涎を撒き散らしながら、喚いた。誰から見ても、怒りで我を忘れているようだった。
衛兵は、一騎当千の勇者に掴みかかるのが恐ろしく尻込みしていた。
それでなくとも、視線だけで人を殺せそうな顔で勇者が見ているので、動ける者は少なかった。
三人娘も、どう動いたものかと顔を見合わせて困っていた。
そんな中。
「お父様」
この混乱を収めたのも、王女だった。
静かな声で、喚き散らしていた父に語りかける。
「魔王を倒した勇者を国が処刑しては、威信にかかわりますわ。ここは、勇者の任を解き、ただの平民に戻る事を勇者が望んだとして、国の片隅にある辺境に追放する、ぐらいがせいぜいでしょう」
そこで、意味深に王女はアレスとメルクを見た。何だと、二人は王女を見返したが、王女はぷいと顔を背け、また王を見た。
「それにわたくし、良い所を知っていますの。山奥の辺鄙な所だそうですわ。魔物に襲われて誰も住んでいないそうです。一から作らねばならぬので、苦労する事でしょうね」
そう言って王女が告げたのは、アレスやメルクの故郷の村の名前だった。
王は、その村の名前に聞き覚えが無いらしく、まるで流罪のようだと思ったのだろうか、そこまで王女か言うのなら、としぶしぶ頷いたのだった。
ここで驚いたのは、アレスとメルクだ。
お互いに顔を見合わせて、王女を見た。これは偶然なのか、はたまた王女に何らかの考えがあるのか、と。
だが王女は何もそれについては反応せず、バッと掌を臣下たちに向けた。
「決定を下します! 勇者アレス、あなはたは身内から魔王という邪悪を輩出してしまった罪を、自らの行いで償いました。しかし、その事が人心に与える影響は無視できるものでは無い。しかしながら、あなたの功績は歴史に残る素晴らしいものです。ですから、辺境への追放で許しましょう。さあ、その勇者としての鎧と、王国から下賜された剣を外し、さっさと出ておいきなさい!」
王女が、威厳たっぷり宣言を下した。王は頭痛そうに額に手を当てていた。
二人に嫌は無いので、そのままの頷こうとした時、
「そんな王女様っ、こんなの横暴です!」
「勇者がいなければ、この偉業は達成できませんでした!」
「あぁ、何という事でしょう。神のご慈悲を知らないのですか」
三人娘が、それぞれ抗議の声を上げたのだ。メルクは、三人を振り返った。庇ってくれて嬉しかったのだ。
王女はその様子を見て、何かを思ったようだったが、あくまで王女の顔で彼らを見下ろした。
「わたくしの決定に不満の声を上げるとは、不敬である。ミーナ、アンリ、そなたらにも一年間の流罪を申し渡す。場所は、勇者と同じ所で良いでしょう。エレフィーナ、あなたは神殿から派遣される監視役として、共にに同行しなさい」
三人娘もビックリし、お互いに顔見合わせた。
王様や、周りの重臣も意味がわからない。三人まで追いやる必要性があるのか、と。
だが、王女は今までに無いくらいピシャリと言い放った。
「これで謁見は終いだ、不服は受け付けぬ! みな下りなさい!」
そして、頭を抱えたままの王と、何故かやり切った顔の王女は謁見の間を後にし、勇者パーティーはお城から厄介払いとばかりに、グイグイと追い出された。
嬉しさで舞い上がり早口にメルクに愛を告げるアレスと、それを一心に受けるメルク、何が何やらわからないが、とにかくまだ旅が続いているようで少しだけ嬉しいアンリとエレフィーナ、生真面目なせいで追放に悩んでいたが、吹っ切れた後はアレス達の村作りを手伝おうという真面目さを見せたミーナは、ワイワイと馬車に乗り込み、メルクたちの故郷に向かったのであった。
一年後。
ちゃんと三人娘は許されて王都に戻り(アンリは戻りたがらなかったが)、王女、今や王位継承権第一位のオフィーリア姫により、さらに高い地位を与えられ活躍していた。
三人の友情は末永く続いたという。
そしてアレスとメルは、城を追い出された形になったが故郷に帰り、無事、自分たちで建てた教会で結婚式を上げて生涯伴に過ごした。
村も、王国中から人々を受け入れ、孤児を引き取り、村を再建し、二人は悠々自適に暮らしていったようだ。
三人娘もたまに遊びに来たりして、寂しくはなかったらしい。
彼らが再興した村は、山奥とはいえその豊富な資源を使い、ますます繁栄し、王国でも指折りの立派な村、いや町にまで発展したのであった。
そしてその村は、通称、こう呼ばれる。
追放者たちの村、と。
本当に終わり。
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