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第一章:九条カケル、世界の終わりにマイホームを買う。
第4話「伝説の闇勇者、厨二ポエムを超えて」
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目の前でひれ伏す騎士たちを前に、俺は腰が抜けそうだった。
「黒翼の夜叉」とか、「深淵の支配者」とか、「終焉の使徒」とか……。
どれも、俺が中学~大学時代に書いてた黒歴史ノートの中に出てくる単語だ。
というか、まんまだ。
「おいおい……ちょっと待て……俺が18歳のとき、夜中に風呂場でブツブツ言いながら考えてた詩が、なんで世界設定になってんだよ……!」
俺はマジで頭を抱えた。
あのノートには、当時の俺が熱中してた“自作ファンタジー世界”の設定が数百ページに渡って綴られてる。
・異世界“エルティア=ノア”
・大いなる破滅〈カタストロフィ〉
・深淵の支配者=“黒翼の夜叉”
・現界門(ゲート)=次元を越える扉
全部、そっくりそのままこの世界で使われてる。
いや、もはや盗用レベル。俺が訴えていいくらいだ。
でも、相手は……この世界そのもの。
「……もしかして、俺、神か何か?」
そのとき、騎士の一人が俺に近づき、跪いたまま顔を上げた。
銀髪の青年。肌は白く、瞳は灰色で、冷静な知性を宿している。
「我が名はレオン=アルバ=リセラ。王国騎士団、第一師団長にして、王女殿下の側近を務めております」
あまりにも“それっぽい”名乗りに、心の中で「来たよコレ……」とツッコんでしまった。
「貴方様こそ、我が国リセラル王国が代々待ち望んできた、伝説の勇者……“深淵の支配者”に他なりません」
「待って待って、俺ただのコスプレイヤーで……いや、いまは無職だけど、マイホームローン地獄中の民で……!」
「我々は貴方のご降臨を、千年の昔より予言により知っておりました」
「いや聞けよ!!!」
完全に“話が通じない”世界線であることを、俺は悟った。
「ご安心ください。王都へは馬車をご用意しております。王女殿下も、貴方との謁見を心よりお望みです」
「……馬車?」
そのワードで、急に現実味が増した。
つい数時間前まで、俺は杉並区の静かな住宅街で、ベッドの上に座ってビールを飲んでいた。
だというのに、今は異世界の騎士たちに崇められ、王女と謁見とか言われてる。
展開が急すぎて、頭が追いつかない。
でも――
正直、ちょっと、ワクワクしてる自分もいた。
ゲームの世界。ファンタジーの冒険。
中学時代、ノートに書き殴った設定。
自分だけの物語。誰にも読まれなかった、誰にもバカにされたくなかった、大切な黒歴史。
それが今、目の前で“現実”になってる。
だったら――
今度こそ、胸を張ってこの物語の“主役”になってやろうじゃねぇか。
「……いいだろう。王女に会わせてくれ。ただし、その前に……」
俺はふと足元を見下ろす。
異世界の石畳の上に、素足のまま立っている自分。
肌に冷たい湿気がまとわりついて、虫にでも刺されそうな気配すらある。
「……まずは、靴取ってくる。裸足で異世界デビューとか、いろんな意味で痛すぎるしな」
そう呟いて振り返ると、クローゼットの“枠”はまだ開いたままだった。
その向こうには、東京の夜。自分の部屋がそのまま、無音のままそこにある。
床に散らばった段ボールの隙間から、俺は脱ぎ捨てていたスニーカーを引っ張り出す。
お気に入りの黒のハイカット。軽く埃を払って、靴下も履きなおす。
「さて……これでようやく、異世界“装備”完了ってとこか」
言ってて恥ずかしくなったが、妙にしっくり来た。
俺は再びクローゼットをまたぎ、騎士たちの前に戻る。
「準備できたら、案内してくれ。異世界の王女とやらに、“俺の名”を名乗ってやるよ」
騎士たちが一斉に顔を上げた。
「では……御名を……!」
俺はゆっくりと目を閉じ、一言――
「†黒翼の夜叉†(ダークフェザー・ヤシャ)。それが、俺の名だ」
「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
謎の歓声が森に響き渡る。
――こうして、俺の異世界伝説が幕を開けた。
「黒翼の夜叉」とか、「深淵の支配者」とか、「終焉の使徒」とか……。
どれも、俺が中学~大学時代に書いてた黒歴史ノートの中に出てくる単語だ。
というか、まんまだ。
「おいおい……ちょっと待て……俺が18歳のとき、夜中に風呂場でブツブツ言いながら考えてた詩が、なんで世界設定になってんだよ……!」
俺はマジで頭を抱えた。
あのノートには、当時の俺が熱中してた“自作ファンタジー世界”の設定が数百ページに渡って綴られてる。
・異世界“エルティア=ノア”
・大いなる破滅〈カタストロフィ〉
・深淵の支配者=“黒翼の夜叉”
・現界門(ゲート)=次元を越える扉
全部、そっくりそのままこの世界で使われてる。
いや、もはや盗用レベル。俺が訴えていいくらいだ。
でも、相手は……この世界そのもの。
「……もしかして、俺、神か何か?」
そのとき、騎士の一人が俺に近づき、跪いたまま顔を上げた。
銀髪の青年。肌は白く、瞳は灰色で、冷静な知性を宿している。
「我が名はレオン=アルバ=リセラ。王国騎士団、第一師団長にして、王女殿下の側近を務めております」
あまりにも“それっぽい”名乗りに、心の中で「来たよコレ……」とツッコんでしまった。
「貴方様こそ、我が国リセラル王国が代々待ち望んできた、伝説の勇者……“深淵の支配者”に他なりません」
「待って待って、俺ただのコスプレイヤーで……いや、いまは無職だけど、マイホームローン地獄中の民で……!」
「我々は貴方のご降臨を、千年の昔より予言により知っておりました」
「いや聞けよ!!!」
完全に“話が通じない”世界線であることを、俺は悟った。
「ご安心ください。王都へは馬車をご用意しております。王女殿下も、貴方との謁見を心よりお望みです」
「……馬車?」
そのワードで、急に現実味が増した。
つい数時間前まで、俺は杉並区の静かな住宅街で、ベッドの上に座ってビールを飲んでいた。
だというのに、今は異世界の騎士たちに崇められ、王女と謁見とか言われてる。
展開が急すぎて、頭が追いつかない。
でも――
正直、ちょっと、ワクワクしてる自分もいた。
ゲームの世界。ファンタジーの冒険。
中学時代、ノートに書き殴った設定。
自分だけの物語。誰にも読まれなかった、誰にもバカにされたくなかった、大切な黒歴史。
それが今、目の前で“現実”になってる。
だったら――
今度こそ、胸を張ってこの物語の“主役”になってやろうじゃねぇか。
「……いいだろう。王女に会わせてくれ。ただし、その前に……」
俺はふと足元を見下ろす。
異世界の石畳の上に、素足のまま立っている自分。
肌に冷たい湿気がまとわりついて、虫にでも刺されそうな気配すらある。
「……まずは、靴取ってくる。裸足で異世界デビューとか、いろんな意味で痛すぎるしな」
そう呟いて振り返ると、クローゼットの“枠”はまだ開いたままだった。
その向こうには、東京の夜。自分の部屋がそのまま、無音のままそこにある。
床に散らばった段ボールの隙間から、俺は脱ぎ捨てていたスニーカーを引っ張り出す。
お気に入りの黒のハイカット。軽く埃を払って、靴下も履きなおす。
「さて……これでようやく、異世界“装備”完了ってとこか」
言ってて恥ずかしくなったが、妙にしっくり来た。
俺は再びクローゼットをまたぎ、騎士たちの前に戻る。
「準備できたら、案内してくれ。異世界の王女とやらに、“俺の名”を名乗ってやるよ」
騎士たちが一斉に顔を上げた。
「では……御名を……!」
俺はゆっくりと目を閉じ、一言――
「†黒翼の夜叉†(ダークフェザー・ヤシャ)。それが、俺の名だ」
「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
謎の歓声が森に響き渡る。
――こうして、俺の異世界伝説が幕を開けた。
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