9 / 10
3章
橋本光星
しおりを挟む俺らには、いつも集まるメンバー、いわゆる「イツメン」がある。
男子にも女子にも人気でなんでもできる細身で黒髪が良く似合うキラースマイルの石川清明。常に気が利くし優しくて女子からの支持が多い新井大輝。清明とは幼なじみで1番の理解者だと思う深海真叶。いつも冷静沈着で現実理論派、クールの代名詞鈴木杏奈。そして俺、橋本光星。
結構クラスでは有名で、大概「あのグループ」で通じる。
でも俺は、このグループには清明の影響で仲間入りした。
というのも、人好きのする性格の持ち主である清明に、入学式のときから話したりしてて、このグループメンバーとはその伝手で。
俺は最初、清明にあった時は、「なんだこのひょろひょろなやつ」ってしか思ってなかったし、どうせモテて調子に乗るんだろって思ってたけど、初対面で話しかけに来た時はもう、一瞬でゾッコン。こんな言葉同性が使ったらおかしいんだろうけど、でも、あいつの笑顔は老若男女問わずにクラっとくるもんだと思う。
特に、あいつは部活バスケだから肌白いし、体細いし、若干のくせっ毛な黒髪。んで、普段真顔だとミステリーな感じなあいつも、誰かと話すとすぐ明るく笑顔に変わるうえ、部活の時のあの真剣な顔と練習着から見える細い腹は、見ものだと本当に思う。俺は剣道部で、道具をしまいに来た時は、いつも清明を目で探したりしてる。
割と人気者だからチャラいかとも思われがちだが、チャラくはない。根は真面目だし、先生からも評判はいい。ただ少し悪さをする時はある。
俺は清明と沢山すごしていく中で、清明の性格とかそういうの、ある程度は把握したつもりだけど、いくら悪さをするような性格だったとはいえ、こんな風に誰にも何も言わずに消えるようなやつじゃなかった。人に心配されるのは嫌だったたちだ。
俺は清明への訳の分からん疑念を振り払うように竹刀を降り続けていた。練習着に若干の汗がしみてるのが分かる。腕も少し辛くなってきた。俺は休もうと、武道室の壁に寄りかかって座り込む。
「はぁ」
ため息が漏れる。足元に転がる竹刀を握りしめる。
「なぁに、そんな怖い顔して」
不意に頭上から声がして、見上げるとそこには同じ剣道部の清水がいた。清水はあったかいレモンティーを差し出してきた。
「あぁ、悪いな」
俺はそれを受け取った。清水は隣に座った。
「なんかあったんか?」
「別に?」
俺がそう返すと、清水は呆れ顔でため息をついた。
「わかんないと思う?お前、さっきからすんごい怖い顔で竹刀振ってたもんだから、後輩が怖がって俺に言ってきたんだよ」
そう言われて、レモンティーを吐き出しそうになった。
そんなに怖い顔だったのか?
「そんなに?」
「うん。光星さん怒ってるんですか?俺たちなにかしましたか?って」
「ははははは!」
俺はつい笑い出してしまった。
その乾いた声が武道室に響いて、後輩達の視線がこっちに向いた気がする。
「あいつの事考えるとつい顔が引き攣るみたいでな…」
「恨み?」
「そんなわけあるかよ。わかんないんだよ、あいつが死んだ理由が」
「まぁ、あのスーパースターがって考えるとそりゃ謎だけど、でも事故なんだろ?何も、お前がそんな責任負うようなことなかったろ」
清水にそう言われて、俺は「そうだな」とは言えなかった。口ごもった挙句の果てに、俺は黙っているのも不自然だと思い、誤魔化すために勢いよく立ち上がった。
「あぁ!くそ!」
俺はそう叫んでいた。
清水の呆れ顔が浮かぶ。でもどうでもいい。
責任……俺はあいつの死に、直接の関わりがあるかもしれない。怖い。あいつは俺に恨みを持った上で自殺したんじゃないかとか思ってしまう。あのとき、俺が助けていればこんなことにならなかったんじゃないか?俺が助けないままでいたばっかりに、あいつは嫌になって死んじまった。俺に恨みを持ちながら。俺に責任を負わせる為に死んでいった。俺のせいだ。そう、全部俺のせいなんだ。
「みんな帰るぞー!」
俺はそう言って部室に一番乗りに入って行った。
俺が部室に入ると、後輩と清水もゾロゾロと部室へ来た。
俺がさっさと着替えて帰ろうとすると、スマホがピロリンと音を立てた。
スマホの電源を入れて見てみると、真叶からのメッセージが来ていた。
それを開くと、「みんな今から会えないか?」的なことが書いてあった。
「大事な話?」
俺はとりあえず部室を出た。
今日の午後は暇だからいいか。俺はいつものグループのチャットルームに返信して、そのまま直行した。
約束のカフェへ行くと、杏奈と大輝はいた。俺が着いて少しすると真叶も来た。
俺らはカフェの中で、清明のことについて話をした。
真叶からの大事な話は、清明の死についてしっかり解明したいみたいな感じだった。同意は少し躊躇ったけど、担当を割り当てるってなった時、俺はハッとした。これを利用して清明の事故現場へ行けば、清明が事故死であったことをしっかりと目視できる。清明がどんな風に崖から落ちたのか。それが明らかに事故であってくれれば、俺はこんな罪の意識にいなくても済むって。俺はそう考えたら、事故現場へ行きたいなんて言い出していた。
4人が最も決めあぐねていたが、俺がそう言い出すと大輝は「さすがだな」とか言った。深い意味なんてないんだろうけど。
それよりも意外だったのは、杏奈が行くと言ったことだ。
「光星行くならいくよ」
「え?なにそれ」
俺はすかさずそう聞いてしまった。
「1人じゃ心配でしょ。絶対迷うから」
「そうだな。じゃあ聞き込みはやるよ」
大輝がそう言い、自動的に真叶は清明の家へ行くことになった。まぁ結果オーライ。真叶は清明とかなり仲良かったし、真叶が家へ行く分には何も不自然な点はない。
俺は杏奈と、いつ行くかを正式に決め、来週の土曜日になった。
杏奈は文化部だから体力が少し心配だが、まぁ大丈夫だろう。
家へ帰り、俺はぼーっとしていた。
事故現場へ行く。
清明の死んだ場所へ足を運ぶ。
何となくそれだけですごいことのような気がする。
親友の墓石へ行くよりもとんでもないことのような。
生々しい跡なんて残ってないでくれ。
あいつは、事故死だった。でもそれが、事故死に見せた自殺だとしたら?やっぱり俺に対してのショックが大きすぎて、死んでしまったのか?これじゃ俺が殺したみたいじゃないか……。
目を瞑ると、とある光景が真っ暗な視界に現れた。
それは、葬式で見た清明の顔。
真っ白で、固くて、冷たい清明の顔。
「なんで死んじまったんだよ……。そんなに俺が許せなかったのか?」
心の中で問いかけたそれに、清明は答えることもせずに蓋が閉じられて、火葬された。燃えて消えてしまった。
いなくなる前に一声、そう言ってくれよ。
死んだことを俺のせいにしてくれれば、俺はこの罪悪感も肯定して生きていける。でも、あいつはどちらも言わなかった。うんともすんとも言わなかった。
もしも、もしも本当に事故死であってくれたら、もしも本当に事故死であって、そんなダサい様な、そんなまぬけな死であったのならば、きっと俺のこの罪悪感も、きっと……。
俺は、そんなわけないような空想に陥って、いつしか涙が流れていた。清明との時間はなんだったのだろう。
本当に…本当に俺が許せなかったのか。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる