I NEED YOU

リンネ

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エピソード4

真実

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 憎悪に満ちた瞳で、蒼愛は男性2人を見下すように見ていた。
 「私は父と約束をした。貴様らが殺した父と」
 蒼愛が男性に手のひらを向けると、青く光を放つ不思議な紋様の魔法陣が生まれた。
 「あ?」
 黒髪の青年が眉間に皺を寄せ、睨みつける。
 「死ね」
 蒼愛が小さく呟くと、魔法陣から冷たい何かが出始めた。すると、男性の体が凍りつき、氷のように固まった。
 隣にいた腕組み男性が青年を見て後ずさりする、手足縛られた女性は唖然としていた。
 青年の体が完全に凍りついたのを確認すると、蒼愛は勢いよく青年の頭を蹴っ飛ばした。すると、青年の頭のみが吹き飛び、胴体だけがその場に残り、そのまま倒れた。
 「キャアァァァ!!!」
 手足縛られた女性が生首を目の前に叫び出した。
 「影佑!!影佑ぇぇ!!」
 凍てついた死体に駆け寄るもう1人の男性。 
 蒼愛は可哀想などと思うことなく、駆け寄ってきた男性を、死体の氷よりも冷たい言葉と、氷を溶かしてしまいそうなほどの熱を持った憎悪の瞳で睨んだ。
 「次はお前だ」
 そう言うと、また手のひらを向けた。
 
 その頃、玉森はあまりに体調不良が過ぎるため、薬局に薬を買いに行った。
 路地裏の様子には車に乗っていたため、全く気づくことは無かった。
 薬局から薬を買って出てきて、歩いて車のところへ行こうとすると、路地裏から悲鳴とともに焦りの混じった声が聞こえた。
 玉森は少しだけ様子が気になり、ゆっくりと歩いてそれを見に行った。
 目の前の光景に、玉森は恐怖を抱いた。
 まさに目の前では、黒い翼を生やした化け物が、人を殺していたのだ。
 玉森が呆然としていると、震え上がった男性が助けを求めた。
 「おい!そこのお前!警察を呼べ!!助けろ!」
 その言葉を聞き、蒼愛はふと魔法陣を消して後ろを振り向く……
 絶望の瞬間だった。お互いに。
 玉森は携帯をいじりながら、もう1度前を見た。すると、振り向いた黒い化け物と目が合った。
 それは、夢だと思いたいほど残酷な姿をした、悪魔と化した蒼愛だった。
 「あ……蒼愛ちゃん?」
 玉森は動揺して、携帯を地面に落とした。
 蒼愛は目の前の全てに驚き、慌てる男性をもう1度見た。
 「ヒィィ!!」
 蒼愛は後ずさりして、玉森から顔を隠すように、玉森が向いてる向きと同じ方向に向く。
 するとそのまま、蒼愛は翼を上下に動かし、空へ羽ばたいてその場から消えた。
 玉森は絶句して、膝からその場に崩れ落ちた。
 雨が玉森を強く叩きつける。体調不良での熱なんか吹き飛ぶほど、冷酷な事実と光景に、頭の整理がつかなかった。
 ただ震えて、怯えて、涙を流し続けた。 
 すると、1人、男性の声が聞こえた。
 「玉森先生?」
 その声は柔らかく、暖かい声だった。
 「濡れますよ」
 そう言うと、男性は玉森の上に傘をやった。
 「陽山……先生……」
  玉森は陽山を見ると、感極まって抱きついてしまった。
 そのまま、玉森は泣き出し、陽山はただ驚くだけだった。
 
 蒼愛は雨が降り荒れる空を飛んでいた。
 ある程度さっきの場所から離れてた所で、とあるビルの屋上に降りた。
 冷たい雨と、それに混じって冷たい風が蒼愛に吹き付ける。
 蒼愛の青い瞳は、悲しみや憂いにみちていた。赤い瞳も憎悪のようなものは消え、赤く輝くだけだった。
 翼は1つ1つバラバラな羽根になって消えた。
 蒼愛はそのまま歩くと、ビルの屋上の隅へ行った。地面におちるギリギリに行った。
 「もう、あそこにはいられない……」
 覚悟を決めたように流れる涙を拭って、パーカーのポケットに手を入れた。振り返って歩き出す。
 その後ろ姿は寂しげで悲しそうであった。
 
 その日の夜、蒼愛が玉森の家に戻ってくることはなかった。
 「蒼愛ちゃん……」
 1人残された空間で、玉森はただ蒼愛と一緒にいた短かった時間を思い出していた。
 自分1一人しかいない空間で、玉森は悲しげにため息をついた。すると、インターホンの音がした。
 玉森は玄関の方へ行く。ドアを開けると、そこにはなにやらビニール袋を大量に持った男性がいた。
 「陽山先生、どうしてここが?」
 「学校の、自己紹介資料に載ってました。様子が心配だったので」
 「寒かったですよね、入ってください」
 玉森はいつもと様子が明らかに違った。
 陽山という男性は玉森と同じ学校の教師で、共に同じ学年の担任である。
 白いシャツに黒いスーツベストとネクタイ、黒と灰色ストライプのスーツパンツといった、かなりしっかりとした服装で、髪型も整っていて、教師らしい黒髪で短髪、見た目は30代前半。清潔感に溢れていた。
 陽山は部屋に上がると、玉森のあとを追うようにリビングへいき、周りを見回した。
 「そちらの椅子にどうぞ」
 「あ、失礼します」
 玉森は頑張って笑顔を取り繕うが、どうもひきつってしまい、今にも泣き出しそうだった。
 玉森はなれた手つきでコーヒーを煎れる。
 「いい香りですね」
 陽山は機嫌でもとるように、優しく話しかけた。
 「そうですか?確かに、これ高かったんですよ」
 玉森は陽山の優しい声にこたえるように、優しい声で返した。
 コーヒーの香りが部屋中に広がる。
 玉森はコーヒーを陽山のところにおいた。
 置いてから、玉森は陽山の向かい側の椅子に腰を下ろす。
 「どうしてここへ?」
 「様子が心配だったんです。さっきは大丈夫だって言ってましたけど、どうも大丈夫そうには見えなかったので」
 「心配かけてすみません、もう大丈夫ですよ」
 「こんなタイミングで言い出すのは、あれかもしれないですけど」
 そう言うと、陽山はゴソゴソと何かを探し出した。 そして、探し物が見つかると、それを手に取り、太ももの上に置いては、乱れたスーツの直して玉森に向き合う。
 「玉森先生が好きです」
 「え?」
 「玉森先生、お付き合いしていただけませんか?」
 「すみません、あの……」
 遮るように陽山がしゃべる。
 「わかってます。多分ですけど大切な人を失ったんですよね」
 玉森は静かに頷く。
 「そんな中でこんなのはおかしいって分かってます。でも今しかないって思ったんです」
 玉森はじっと考えた。
 蒼愛のことや、陽山のこと、これからの事についてを深く考えた。
 「すみません、お気持ちはありがたいです。でもまださっきの事で頭の中で処理できてないので、もう少し待っていただけませんか?」
 「わかりました」
 陽山は迷うことなく、真っ直ぐ玉森の目を見つめ、そう言った。
 2人は少し話をしてから、陽山は帰って行った。
 玉森は再び家の中に1人になり、ぽつんとしていた。
 玄関からリビングへ行く玉森の背は、とても寂しそうに思えた。
 
 蒼愛と離れ離れになってからもう3日経った。玉森は何度も蒼愛の部屋を見ては、思い出にふけり、涙を流した。
 仕事には支障がでないようにしたが、陽山には毎日気にかけられてしまううえ、周りの先生にも「何かあったのか」と質問攻めになるほど、以前の玉森と様子が違ったのだろう。
 そして、そんなある日玉森の家に陽山が訪れた。
 訪れるなり陽山は深々と頭を下げた。
 「すみません何度も来てしまって」  
 「いえいえ、頭をあげてください。むしろ助かってますよ」
 「そうですか?よかった」
 「上がってください」
 そう言うと、陽山は「お邪魔します」と言いながら靴を脱いで上がった。
 リビングまできて、この前と同じ場所へ座る。
 玉森は紅茶を入れて持ってくる。玉森もこの前と同じ場所に座った。
 「陽山先生」
 「はい」
 「私、やっぱり会いたいんです。あの子に」
 「はい」
 陽山は声色を変えずに、ただ優しい表情と声で受け答えた。その姿は、どんな結果も受け入れようという思いが見えた。
 「直接会って話をしたい。だから、あの子を探したいんです」
 「手伝いますよ」
 その言葉に玉森は驚いて、陽山の顔を見つめる。
 陽山は嫌な顔一つせず、ただ優しく微笑んで玉森を見ていた。
 「陽山先生……ありがとうございます!」
 玉森は勢いよく椅子から立ち上がり、陽山に深々と頭を下げた。
 「いえいえ、とんでもない。それで、特徴とかありますか」
 そう言われると、玉森はゆっくりと顔を上げ、陽山を見た。
 「大きく目立つものなら、青い髪の毛青い瞳、多分ですけど猫耳の赤いパーカーと黒い7部丈くらいのパンツが最もな特長なんじゃないかと」
 陽山はたまたま持ち合わせていたメモ帳に、サラサラと素早くメモをして「わかりました」と言った。メモ帳をしまい、玉森に向き直る。
 「その子見つけて、3人で幸せになりましょ?」
 陽山はまた優しい笑顔でそう言った。
 玉森は感謝の思い出いっぱいだった。
 しかし、玉森の心中には感謝と喜び以外に、不安の想いがあった。
 なにせ、目の前で共に過ごしてきた人が化け物と化して人を殺していたのだ。そう容易に受け入れられるような事じゃない。会えば殺されるかもしれない。そう思えば思うほど、体震え上がりそうになる。
 ふいに、玉森はあるニュース番組で見た残酷な死体の話を思い出す。
 『腹が抉れて、内臓が飛び出してる』
 あのコメンテーターの話が脳裏をよぎるたび、異常な吐き気に襲われ続けた。
 しかし今では、それが蒼愛がここにいたという証明になる気がしていて、嫌でも見に行くしかないと決めると、吐き気を感じている暇ではなかった。
 玉森はさっそうと席を立ち、「行きましょう!」と張り切った様子で言った。
 陽山もそれに応じて、席を立った。
 
 外へ出て、手当り次第周りに聞き込みをし、探し回っていると、案外すぐに蒼愛を見つけることが出来た。
 「もしかして、あの子かも……」
 玉森は少し不安げだったが、少しずつ陽山と共に歩み寄る。
 近寄っていく度にわかった。猫耳パーカーと黒いパンツ、フードからちらつく青い髪の毛。
 間違いなくそうだと思った。玉森は期待を胸に隠しながら近寄っていく。残り2mくらいの所にきた。
 「誰?」
 まだ話しかけてもないのに、蒼愛らしき人は鋭く放つ。
 「蒼愛ちゃん?」
 その声に、蒼愛は驚いた様子だった。そして、ふと視線を玉森の方へやる。その姿は何を隠そう、玉森だった。
 玉森も、フードから少し見えた顔だけで、間違いなく蒼愛だとわかった。
 「蒼愛ちゃ……」
 すると、玉森の言葉を遮るように蒼愛がいつとは違った様子で鋭い口調で刺すようにいった。
 「気安く呼ぶな!もう私は蒼愛なんかじゃない」
 いつもよりも低い声で返した。
 「なんで、なんでこんな所に」
 「あんたにいう必要は無い」
 蒼愛は顔を見るなと言わんばかりに、フードで隠し逸らした。
 「ちょっと君、せっかく玉森先生探してくれたのにそれは」
 「男できたの?」
 「え?」
 陽山が話そうとするが、遮るように低い声で話し出す。玉森は蒼愛の言葉に過敏に反応した。蒼愛は玉森の方へ向き直り再び話し出す。
 「言っとくけど、戻るつもりないから。男ができてハッピー気分?何してるかって心配に思ってみれば、探してくれた?余計なお世話なんだよ」
 パシン!!
 言葉よりも速く、玉森の手が蒼愛の頬に当たった。
 「何をそんなに顔を隠して怯えてるわけ?知られたからって逃げるの?私があなたを拒絶するような事いつしたの!?」
 「玉森先生、落ち着いてください」
 陽山が沈めようとするが、玉森はますます炎上し出した。
 「言ってみてよ!何をコソコソやってるの?前までの蒼愛ちゃんはそんなんじゃなかった!あの日、私を見るなり怯えて逃げて、帰っても来ずに何してるのよ!もっと堂々と……」
 すると、耐えきれなくなり、蒼愛が玉森の言葉を遮って叫んだ。
 「人間のお前に何がわかんだよ!!」
 「罪を犯したなら、それを償えるように正しく生きるのが普通でしょ?」
 「もう普通じゃない!!私はアンタみたいな普通の人じゃない!!正しく生きるってなに!わかんないよ!!」
 前まで家にいたあの明るくて優しい蒼愛は、まるでどこにもいなかった。
 言葉には、怒りと悲しみが込められていた。
 すると、蒼愛は急に咳き込んで、血を吐き出した。
 「蒼愛ちゃん?」
 「……あんまり、叫ばせないでよ……!!」
 玉森はふいに思い出した。
 確かに、ついこの前掃除をしていたら、洗面台の所や、トイレの便器などに僅かながら、飛散した血の跡はあった。
 「蒼愛ちゃんまさか」
 「来ないで!」
 玉森が蒼愛の背をさすろうとして、歩み寄りながら手を伸ばすが、蒼愛が鋭くきつい口調で放ち、玉森の手を払った。
 「蒼愛ちゃん……どうして……」
 「関係ない……」
 静かに呟くと玉森に背を向け、歩き出す。
 「蒼愛ちゃん!」
 「君!」
 玉森に続いて陽山が呼び止めようとするが、蒼愛は聞く耳を持たない。
 「蒼愛ちゃん、戻ってきてるれるって信じてるから!待ってるから!!」
 蒼愛は止まることなく歩き続ける。静かに涙を流しながら、どんどん玉森から離れていく。
 「顔は覚えたぞ玉森。貴様らを利用させてもらう」
 ふいに、陽山はなにか気配を感じ、あたりを見回した。
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