NTRもののゲームの世界に転生した私の生存戦略

クラッベ

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第一話・説明しよう。

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おおまかにそのゲームのストーリーを説明しよう。

私が転生したゲーム「ネトラレファンタジー」というタイトルからもう察せられるが、このゲームのジャンルは「NTR」ものである。

そのゲームの主人公、デフォルト名は確か「ロイド」。

彼はヒロインの一人である幼馴染の「ナタリー」と共に、立派な冒険者になるという夢を叶えるため、冒険者の街へとやってきた。

そうしてクエストをこなしていくうちに二人のヒロイン…「キャロ」と「ミモザ」と出会い、彼女たちから好意を寄せられ、共に冒険をすることになる。

クエストの途中で主人公たちは、「破壊の悪魔」を信仰し復活を目論む邪教徒に遭遇し、その「破壊の悪魔」の力を封じている「悪魔の魔石」を巡り、世界を揺るがす大事件に巻き込まれていく。

ここまで見たらただの、よくあるファンタジーもののストーリーだ。

だが忘れてはいけないのがこのゲームのジャンルだ。

ヒロイン達はストーリーの序盤でどうしても出会うことになる冒険者の街の領主「セルド」に寝取られることとなる。

ヒロイン達は当然主人公への恋心があるため抵抗するが、拒否すれば主人公の冒険者資格をはく奪すると脅され、皆初めてを奪われてしまう。

最初は嫌々犯されていたヒロイン達だが、段々と体が快楽に染まっていく。

そして物語の終盤で、主人公がヒロインの誰かと両想いになり、初めてのベッドシーンになるのだが…両想いになったはずのヒロインは、主人公のものが領主のものと比べて粗末に感じ、しかも一回で行為が終わってしまったことに物足りなくなり、眠った主人公を置いて領主の下へと行ってしまうのだ。

そして領主に我が身を抱いてもらい、すっかり主人公への恋心は消え失せてしまう。

そんなことも知らずに主人公はヒロイン達と共に邪教徒のアジトを見つけ、ラスボスを倒して世界に平和を取り戻す。

平和を取り戻して一件落着ハッピーエンド…とはならず、エンディングで主人公が領主の屋敷に泊まったその夜に、偶然領主と体を重ねているヒロイン達の姿を発見してしまう。

自ら領主に体を差し出し、悦んでいるヒロイン達の姿に戸惑う主人公。

彼女たちは主人公のものが粗末であることをあざ笑い、自分たちはもう領主のものであることを告げる。

信じていた仲間に、愛し合ったはずの恋人に裏切られた主人公の精神は崩壊。
その後は抜け殻のようにどこかへとさまよい、姿を消した。

そして領主は手に入れたヒロイン達や、今まで他の冒険者から寝取ってきた女性たちをはべらせ、国王になっていつの間にか手に入れた悪魔の魔石を使い、他国を侵略しようとたくらむ…ここで物語は終了する。

これがこのゲームのストーリーである。

うんひどい。ゲームをやってみての感想がこれだった。

寝取られというジャンルはそういうものだとは分かっているのだが、心変わりした後のヒロインたちの主人公への罵声がこれまたひどいものだった。

恋心とはこんなあっさりと捨てられるものなのだろうか。表向きは仲間だからと冒険を共にするのだが、あんな風に純粋な主人公を馬鹿にできるものだろうか。まぁ、エンディングまでずっと気が付かなかった主人公も主人公だけど。

それはさておき、次はそのゲーム内での私、ソフィア・グランデールについてだ。

彼女はストーリーには直接関わらない。

あるのは彼女の兄だ。彼は邪教従の一員として、主人公の前に立ちふさがる敵キャラポジション。最後にラスボス戦前に倒され、死亡してしまう。

妹のソフィアはその件に関して何も知らされておらず、ゲーム内でも屋敷を訪れた主人公たちに「兄の様子が最近おかしいんです。なんだか怪しい人たちとよく出かけるし……」と言うだけ。

そしてエンディングでは、次期当主が悪事に加担したということでグランデール家は没落し、ソフィアは奴隷落ちしてしまう。そこをセルドに買われてしまい…肉便器と化すのである。
それがゲーム内でのソフィア・グランデールの末路だ。

「冗談じゃないわよ」

私は前世の記憶を思い出しながら、ゲームの流れを書き記した紙を前に頭を抱える。

「せっかく美人に、しかも超大金持ちの貴族に転生したっていうのにこんなのあんまりよ!」

ダンッ!とテーブルに拳を叩きつける。

これが普通のRPGもののゲームの世界だったら冒険とかやってみたいなーと思えた。

だがここはエロゲの世界だ!しかもくそったれなストーリーだよこんちくしょー!

私はそう叫びたいのをグッと堪えた。大声を出したらまたメイドさんに心配をかけてしまう。

「決めたわ…」

私はこのゲームの、最悪な未来を回避するために動くことにした。

メインキャラでもない私がゲームに介入したらどうなるかとか、そんなこと知ったことではない。

肉便器なんてまっぴらごめん!全てはこの悠々自適なお嬢様生活を守るため!!

こうして、ソフィア・グランデールとして生まれた私の生存戦略が始まったのである。 
 
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