NTRもののゲームの世界に転生した私の生存戦略

クラッベ

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第二話・整理しよう。

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とりあえず目標としては『セルドを失脚させる』方向で行く。私の未来のためにこいつには消えてもらわなければならない。

「さて、と。とりあえずまずは状況確認ね」

そうと決まればまず、現時点でゲームのストーリーがどの辺りまで進んでいるのか確認しよう。

私は自分の記憶と、今日の新聞を引っ張り出す。記事には『指名手配!悪魔を信仰するこの男!』と書かれている。
一面の写真にはゲームで見たラスボスになる男の顔が映っている。

「うーん、こいつがもう指名手配されてるってことは、もうだいぶ後半に来てるんだなぁ…」

ゲーム後半で登場する邪教の教祖であるの男はロイド達に追い詰められ、顔を隠していたマスクを奪われて顔をあらわにしてしまう。

そしてこの新聞から察するに、現在は捜索中。だとするとゲームではアジトの場所がわかるまで、主人公たちはレベル上げしてたりフリークエストをこなしたりしている所のはずだ。

「ここまで進んでいるのならヒロイン達はもう心変わりした後かも…」

後半になっているのならその可能性は高かった。
もし彼女たちがまだ主人公を想っているのなら、領主を没落させるのに協力してもらえるかもと思ったけど、その可能性は低いかもしれない。

「…うん、その辺確認するためにも、主人公たちに会ってみよう」

可能性は0ではないし、彼女たちに恋心が残ってなくても、せめて主人公のロイドだけでも接触しておきたい。

自分のステータスを確認してみる。私の所持しているスキルは『槍術』と『支援魔法』と『魅了魔法』か。

グランデール家は騎士の家だから、娘の私も武器の扱いには慣れていた。
支援魔法も文字通り、味方の攻撃力等を上げたりする魔法だ。

ちなみにこの『魅了魔法』だが、これの効果は文字通り、異性を自分の虜にする魔法だ。
だけどこんなものを使って男を振り向かせるのもどうかと思うし、今まであんまり使ったことがない。
使ったことがあると言えば、実験に執事にかけてみた程度だ。今はスルーでいいだろう。

「準備が整ったら早速会ってみましょう。それから………」

あれこれ思い出し、考えながら計画を立てること数時間。ある程度まとめることが出来た。

ふぅ、と息を吐くと、さっそく行動に移る。こういうことは即行動した方がいい。
ここはゲームと違って、いつ何が起きるかわからない現実の世界なのだから。

「ちょっといいかしら」

私は部屋を出て、ちょうど通りかかったメイドに声をかける。

「はい、どうされましたか?」

「お兄様はいらっしゃる?」

「エリオ様ですか?はい、確か書斎の方にいらっしゃいましたが」

「分かったわ。ありがとう」

私はメイドにお礼を言ってすぐに書斎へ向かう。お兄様こと「エリオ・グランデール」は滅多に家へは戻らない。
邪教徒の騎士としてひそかに活動している彼は、悪魔召喚に必要な魔石を集めるべく何度も主人公たちの前に現れる。

正体がバレてしまうのはラストバトル前の、中ボス戦でだ。儀式を阻止すべく突入した主人公たちに立ちはだかり、そして敗れてそのまま死亡。
死に際のセリフに「なんで俺の元を去ったんだ……シャルロッテ……」と、名前をつぶやいている。

ちなみにそのシャルロッテとは、エリオが冒険者として活動している時に、共にしてきたパートナーの女性だ。

私も何度か会ったことがあるが、気さくだけど落ち着きのある女性だったのを覚えている。二人は身分の壁を乗り越え、いつか結婚するのだと、あの時の私も、周囲も誰もが信じていた。

しかしそれも突然崩壊、シャルロッテはいつの間にか姿を消し、彼女の行方を追ったエリオは魂が抜かれたかのように呆然自失。そしていつしか、何かに取り憑かれたように怪しい連中と行動するようになったのだ…

察しの通り、平民のシャルロッテはセルドの卑怯な罠にかかり、そして寝取られてしまったのだ。

長年共にしてきたパートナーに裏切られたエリオは自暴自棄になり、全てを破壊しようとしている。

だけどそれは、主人公たちによって阻止され、散ってしまう。それがゲーム内での彼の運命だ。

「そんなことはさせない」

書斎の前に到着した私は決意を固める。
ゲームはゲームだ。だけどここは現実の世界だ。

私の記憶の中のエリオとシャルロッテはとても仲の良い二人だった。あの時の二人の幸せそうな顔に、こっちもうれしくなった。
エリオの隣はこの人しかいないと思っていたのに、こんなのはあんまりだ。

絶対に彼を死なせない。私は書斎を前に改めて決意する。

「お兄様、いらっしゃいますか」

扉を開いて中へ入ると、すぐに見つけることが出来た。

エリオ・グランデール。この世界での、私のお兄様。

彼は一冊の本を手にしたままこちらを見た。顔が美形なのが相まって、目つきが鋭く見える。

「ソフィアか」

「お久しぶりです。最後に顔を合わせたのは一か月前くらいでしょうか」

「そうだな」

反応はつれない。元々口数は少ない人だったけど、シャルロッテ様がいなくなってからはさらにそうなった。

「お兄様、久しぶりにお会いしたのですから一緒にお茶しませんか?」

「断る。暇じゃないのでな」

こう来るのは分かってた。だけどどうしても私の計画に、是非ともエリオに協力してほしい。だからどうしても一緒に来てもらいたいのだけど…頑なに断られる。

「お願いです。せめて5分…」

「くどいぞソフィア」

どうしたら……と、頭を悩ませていると、あるスキルの存在を思い出した。
この人に聞くかどうかわからないが、やってみよう。魅了魔法発動。

「お兄様、ソフィアお兄様とお茶したいな♡」

「可愛い妹からのお誘い嬉しいな♡」

……魅了魔法、使い道あったな。
 
 
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