15 / 20
第十四話・終わりなの?
しおりを挟む
数十分前
セルドの肉体を乗っ取ったらしい悪魔との戦闘になったが、勝負はすぐに決した。
「が、はぁ…なんだよこの身体はよぉ…」
「まぁ、乗っ取った体が悪かったわね」
ゲームのラストバトルでは、破壊の悪魔の力を封じた魔石が全てそろい、なおかつ魔力も身体能力も高い邪教祖本人が自身を生贄に現界した。だからラスボスとしてふさわしい力を揮っていた。
だが今回の場合、悪魔はセルドの肉体を生贄に現界した。セルド自身何も強力な能力はない。つまりラスボス戦のようなステータスは持ち合わせていないのだ。
まぁそうでなくても私達はダンジョンで限界までレベル上げをしたのだ。
ただレベルを上げただけじゃない、それぞれの持ち味を生かし、コンビネーションも鍛えてきた。
今の私達ならだれが相手でも負ける気はしない。
「大人しくついてきてもらおうか。お前に用はなくても、こっちはその体の持ち主に用があるのでな」
「はっ…この人間か?この人間の魂ならついさっき体から追い出したたところだよ、残念だったな」
「え?」
追い出したとはどういうことだ?
意味が分からないが、もうあの体にセルドの魂がないということか?
「ただじゃ終わらねぇ……!」
それならセルドの魂はどこへ?私が考え事をしていると、悪魔は最後の力を振り絞ってこちらに向かって駆け出してきた。一瞬の事で動けなかった私たちは、悪魔の突進を許してしまった。
そのまま悪魔はロイドへと突進し、体が光に包まれる。
「なっ!?」
「吹っ飛びなっ!」
光で目がくらむと、その直後に爆発が起こった。私はエリオにかばわれケガはしなかった。ガルフとグレンも無事だ。だが…
「ソフィア無事か!?」
「は、はい、なんとか……ロイド様!」
起き上がると、そこには爆発によってボロボロになっているセルドの身体と、同じくボロボロになっているロイドの姿があった。
悪魔はセルドの身体に残っていた魔力を放出させて爆発を起こしたようだが、セルドの魔力が少ないことから、体が木っ端みじんとまではならなかった。
だけど致命傷は免れず、ぐったりと気を失っている。
「ロイド様!」
「気を失ってるだけだ。だけどこのままじゃ危険だ」
「急いで屋敷まで戻ろう。騎士団の回復術士に診てもらわなければ」
私たちはロイドと、ついでにセルドを運んで急いで屋敷まで戻った。
そして屋敷で冒険者たちの捕縛をしていた騎士団に治療を受けた。
私達は大したケガではなかったが、悪魔の最後の攻撃を受けたロイドは重傷だ。
今回復術士の人たちが全力で手を尽くしてくれているが、危険な状態らしい。
「ロイド様…大丈夫、よね?」
私はロイドが運ばれたテントの近くにいた。治療が終わるまで面会はできないけれど、いてもたってもいられなかったのだ。
せめて私にも回復魔法が使えれば…そう思ったその時だった。
「だ、誰か止めてくれ!脱走だ!」
「!?」
不意に声が聞こえ、弾かれたようにそっちを見る。するといつの間にか縄をほどいたのか、ナタリー、キャロ、ミモザがロイドのいるテントまで走ってきていた!
「と、止まりなさい!」
なぜ彼女たちがこのテントへ?セルドを倒したロイドへの復讐だろうか。
気になったがそれよりもナタリーたちを近づけさせるわけにはいかないから私は彼女たちの前に出る。
飛び出してきた私に、先頭を走っていたナタリーが驚いていたが、キャロとミモザが間に入ってきた。
「くっ…!」
「行ってお姉ちゃん!」
「ここは私たちが押さえます!」
「ありがとう!」
私がキャロの爪を塞いでいる隙にナタリーが通り過ぎ、テントの中へ入っていく。
「貴方たち、こんなことしてタダで済むと…」
「違うんです!私たちは決してロイドさんに危害を加えようと思っていません!」
彼女たちの目的が分からず疑問に思っていると、ロイドのいるテントから強い光があふれた。一体何をしているのか。私はキャロをミモザのところまで突き飛ばし、テントの中へ駆け込む。
テントの中では兵士たちがうずくまり、ナタリーがロイドを寝かせている寝台の前に立っていて、何やら魔法をかけていた。
「あ、あなた何して…!」
「お願いロイド!目を覚まして!」
そういうナタリーの声には必死さがあった。およそロイドに危害を加えているようには見えない。今かけている魔法は回復魔法だろうか?
見る見るうちにロイドの傷は癒えていく。それに比例してナタリーの顔には疲労が見え、汗が流れている。それだけ全力を注いでいるのだろう。ロイド程の重傷患者を完治させるには最高レベルの回復術師が複数人必要であると聞いた。
それを一人で担っているのだから、その負担はすさまじいものだろう。だんだんと彼女の息が荒くなっている。
「っは、ぁ……!」
だがナタリーは回復魔法を止めず、最後の仕上げとばかりに歯を食いしばり、ロイドの怪我を治していく。
そして光が収まるころには、ロイドの容態が落ち着き、穏やかな寝息が聞こえてきた。峠を越えたようだ。
「よか…た……」
ロイドのその様子を見たナタリーは安堵し、その場に座り込んだ。外ではキャロとミモザが捕縛されている。
駆け付けた騎士団に取り押さえられ、牢に戻されていった。私はその一連の流れを、ただ眺めることしかできなかった。
「いったい彼女たちに何があったの?」
屋敷で対峙した時はロイドの事を馬鹿にしていたのに、どうして今になってあんな必死に彼を治したのだろうか。
ナタリーをロイドの元へ行かせるために足止めをしていたキャロとミモザの決意を固めた顔と、ロイドの傷を癒すために全力で回復魔法をかけたナタリーの必死な顔と、落ち着いたロイドの容態に、心から安心したあの表情が頭から離れない。
気が付けば夜が明けていて、この騒動の幕が降ろされたのだった。
セルドの肉体を乗っ取ったらしい悪魔との戦闘になったが、勝負はすぐに決した。
「が、はぁ…なんだよこの身体はよぉ…」
「まぁ、乗っ取った体が悪かったわね」
ゲームのラストバトルでは、破壊の悪魔の力を封じた魔石が全てそろい、なおかつ魔力も身体能力も高い邪教祖本人が自身を生贄に現界した。だからラスボスとしてふさわしい力を揮っていた。
だが今回の場合、悪魔はセルドの肉体を生贄に現界した。セルド自身何も強力な能力はない。つまりラスボス戦のようなステータスは持ち合わせていないのだ。
まぁそうでなくても私達はダンジョンで限界までレベル上げをしたのだ。
ただレベルを上げただけじゃない、それぞれの持ち味を生かし、コンビネーションも鍛えてきた。
今の私達ならだれが相手でも負ける気はしない。
「大人しくついてきてもらおうか。お前に用はなくても、こっちはその体の持ち主に用があるのでな」
「はっ…この人間か?この人間の魂ならついさっき体から追い出したたところだよ、残念だったな」
「え?」
追い出したとはどういうことだ?
意味が分からないが、もうあの体にセルドの魂がないということか?
「ただじゃ終わらねぇ……!」
それならセルドの魂はどこへ?私が考え事をしていると、悪魔は最後の力を振り絞ってこちらに向かって駆け出してきた。一瞬の事で動けなかった私たちは、悪魔の突進を許してしまった。
そのまま悪魔はロイドへと突進し、体が光に包まれる。
「なっ!?」
「吹っ飛びなっ!」
光で目がくらむと、その直後に爆発が起こった。私はエリオにかばわれケガはしなかった。ガルフとグレンも無事だ。だが…
「ソフィア無事か!?」
「は、はい、なんとか……ロイド様!」
起き上がると、そこには爆発によってボロボロになっているセルドの身体と、同じくボロボロになっているロイドの姿があった。
悪魔はセルドの身体に残っていた魔力を放出させて爆発を起こしたようだが、セルドの魔力が少ないことから、体が木っ端みじんとまではならなかった。
だけど致命傷は免れず、ぐったりと気を失っている。
「ロイド様!」
「気を失ってるだけだ。だけどこのままじゃ危険だ」
「急いで屋敷まで戻ろう。騎士団の回復術士に診てもらわなければ」
私たちはロイドと、ついでにセルドを運んで急いで屋敷まで戻った。
そして屋敷で冒険者たちの捕縛をしていた騎士団に治療を受けた。
私達は大したケガではなかったが、悪魔の最後の攻撃を受けたロイドは重傷だ。
今回復術士の人たちが全力で手を尽くしてくれているが、危険な状態らしい。
「ロイド様…大丈夫、よね?」
私はロイドが運ばれたテントの近くにいた。治療が終わるまで面会はできないけれど、いてもたってもいられなかったのだ。
せめて私にも回復魔法が使えれば…そう思ったその時だった。
「だ、誰か止めてくれ!脱走だ!」
「!?」
不意に声が聞こえ、弾かれたようにそっちを見る。するといつの間にか縄をほどいたのか、ナタリー、キャロ、ミモザがロイドのいるテントまで走ってきていた!
「と、止まりなさい!」
なぜ彼女たちがこのテントへ?セルドを倒したロイドへの復讐だろうか。
気になったがそれよりもナタリーたちを近づけさせるわけにはいかないから私は彼女たちの前に出る。
飛び出してきた私に、先頭を走っていたナタリーが驚いていたが、キャロとミモザが間に入ってきた。
「くっ…!」
「行ってお姉ちゃん!」
「ここは私たちが押さえます!」
「ありがとう!」
私がキャロの爪を塞いでいる隙にナタリーが通り過ぎ、テントの中へ入っていく。
「貴方たち、こんなことしてタダで済むと…」
「違うんです!私たちは決してロイドさんに危害を加えようと思っていません!」
彼女たちの目的が分からず疑問に思っていると、ロイドのいるテントから強い光があふれた。一体何をしているのか。私はキャロをミモザのところまで突き飛ばし、テントの中へ駆け込む。
テントの中では兵士たちがうずくまり、ナタリーがロイドを寝かせている寝台の前に立っていて、何やら魔法をかけていた。
「あ、あなた何して…!」
「お願いロイド!目を覚まして!」
そういうナタリーの声には必死さがあった。およそロイドに危害を加えているようには見えない。今かけている魔法は回復魔法だろうか?
見る見るうちにロイドの傷は癒えていく。それに比例してナタリーの顔には疲労が見え、汗が流れている。それだけ全力を注いでいるのだろう。ロイド程の重傷患者を完治させるには最高レベルの回復術師が複数人必要であると聞いた。
それを一人で担っているのだから、その負担はすさまじいものだろう。だんだんと彼女の息が荒くなっている。
「っは、ぁ……!」
だがナタリーは回復魔法を止めず、最後の仕上げとばかりに歯を食いしばり、ロイドの怪我を治していく。
そして光が収まるころには、ロイドの容態が落ち着き、穏やかな寝息が聞こえてきた。峠を越えたようだ。
「よか…た……」
ロイドのその様子を見たナタリーは安堵し、その場に座り込んだ。外ではキャロとミモザが捕縛されている。
駆け付けた騎士団に取り押さえられ、牢に戻されていった。私はその一連の流れを、ただ眺めることしかできなかった。
「いったい彼女たちに何があったの?」
屋敷で対峙した時はロイドの事を馬鹿にしていたのに、どうして今になってあんな必死に彼を治したのだろうか。
ナタリーをロイドの元へ行かせるために足止めをしていたキャロとミモザの決意を固めた顔と、ロイドの傷を癒すために全力で回復魔法をかけたナタリーの必死な顔と、落ち着いたロイドの容態に、心から安心したあの表情が頭から離れない。
気が付けば夜が明けていて、この騒動の幕が降ろされたのだった。
14
あなたにおすすめの小説
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる