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繊細な悪党
繊細な悪党1小悪党
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その日の夜の街はいつもより賑わっていた。昼間に小さいながら祭りがあったからだ。
そんな人の多さを好機と考える男が1人。
これならいい獲物が見つかるかもしれないな。
辺りを見回せば、さっそく可愛い女の子を発見。1人で立っているのは、すぐに誰かと合流するんだろうから、早く話をつけないとな。
壁に寄りかかっている女の子を怖がらせないようにへらりと笑って話しかけた。
その男、リンメルの表情がすでに胡散臭く怪しい。
「わー。すげー可愛いね。なあ、よかったら俺と遊ばない?」
別に女に飢えてて声をかけてるわけじゃない。もてるわけじゃないけど、そうじゃない。
「えーと、人と待ち合わせしてるんです」
女の子は少し困った顔をしながら定番の拒否をしてきた。だが、拒否されるなんて初めから分かってる。なにせ、今日で三度目の拒否だからな!
俺の顔はどうせ平凡だって分かってるんだよ!
先輩は、ややあれな顔でも、ちゃんと女の子を連れてくるから、仕事は顔ではないはずだ。
「ちょっとだけだって。ひとまず面接だけだし。稼げるよ?」
「え。…そういうのは、ちょっと…」
夜の仕事の誘いだと分かったとたんに女の子の顔はあからさまに嫌そうになった。
いいじゃん。男に媚びうってれば簡単に稼げるのだよ。可愛い顔に生まれてラッキーじゃないか。
「ね。とにかく、話だけでも聞いてよ。安全なシャラフ様経営のとこだよ」
シャラフ様っつーのは、夜の街のボスって感じ。すげー怖い人らしいけど、そこまで非道なことはしないって、先輩も慕ってるくらいだ。
シャリフの評価は、同じ部類の人からは憧れるような存在であるが、一般人からすると十分危険人物だ。
じれたリンメルは女の子の手首を掴んだ。
しかし。
「いってえええ!」
横から殴られ尻餅をつくことになったリンメル。
嘘だろ。待ち合わせの相手、男かよ。つーか手ぇ早いな。先輩より早くね?
「は、クズが。か弱い女をどうしようってんだ」
「ランス! 怖かった…」
「もう大丈夫だ」
野郎は正義だと言わんばかりだけど、そのドヤ顔が台無しになってるって、分かってねえだろ。自分格好いいってひたってんだろ。
つーか、いてぇ。話しただけだろが。
「こんなクズがいるなんて危険だな」
うっせー、こっちも仕事なんだよ。
強気の言葉を頭の中で叫んでいるリンメルだが、突然に起こった痛みに、心が折れかけている。その追い打ちのように女が言葉を放つ。
「本当、最低な人ね…」
ぐはああああ。違うって!仕事だし。
リンメルはうなだれ、男女はリンメルを残しその場を離れていった。
俺は、世間では馬鹿だって思われる人種だけれども、そこまで馬鹿じゃないんだって!
こういう商売とかしている連中には、失敗して捕まってやばいことになって、フルボッコされても、怪我治ったら忘れる奴多いけど、俺はそんなイカれた連中とは違う。
俺は繊細なんだよ。女の子に拒否されるのもきついんだって。
なんで先輩とか女の子に暴言言われても平気でへらへらしてられるんだろ。
それも才能なのか?え、俺この仕事向いてない?繊細だしなー。
…はあ、もう帰ろ。
立ち上がったリンメルは、夜の街を背中を若干丸めてよたよたと歩いて帰っていく。
悪ガキの部類であるリンメル。
悪い連中とつるみ、盗みも度々してきている。しかし度胸もなければ失敗した時の精神的ダメージを受けやすいので、そんなに大胆なことをしたことはない。本人は、悪いことをして、楽して金を手に入れたいと常に思っているが。
寂れているがそれなりに大きな建物の中にある小さな部屋に、リンメルはいた。
小さな部屋の中の多くを占領する寝台の中に、もぐっている。
うっすらと目を開けたリンメルはもぞもぞと動いて、身体をずらすように寝台から降りる。
部屋には寝台以外に、机と椅子と小さな棚があるだけで、他の生活に必要なものは共同となっている。なのでリンメルはすぐに部屋を出る。
リンメルの暮らす建物は、国営学校の敷地内にある寮だ。
いくつか寮はあるが、ここは一切お金を払う必要がない。
その理由は、お金のない人向けだからだ。そのぶん安い作りなので、大抵の両親のいる子は金を払ってでも、別の寮にする。
この国では誰でも学校に行くことができ、リンメルのような者も、ただでメシが食えるからと通うのだ。
朝メシを食べたリンメルは学校に行くのではなく、学校敷地に隣接している庭園へと向かった。
今日は学校をさぼった。まだ精神が弱ってるのだという理由だ。
久しぶりに庭園にやってきた。国営で市民に解放されていて広い。
庭園の中でも人が来ることが少ない池までやってくる。
おっちゃんいるかなー。俺は心が砕けちゃってるんだよー。
木々を潜り抜けたところに池が見え、一人の男が釣りをしていた。
そんな人の多さを好機と考える男が1人。
これならいい獲物が見つかるかもしれないな。
辺りを見回せば、さっそく可愛い女の子を発見。1人で立っているのは、すぐに誰かと合流するんだろうから、早く話をつけないとな。
壁に寄りかかっている女の子を怖がらせないようにへらりと笑って話しかけた。
その男、リンメルの表情がすでに胡散臭く怪しい。
「わー。すげー可愛いね。なあ、よかったら俺と遊ばない?」
別に女に飢えてて声をかけてるわけじゃない。もてるわけじゃないけど、そうじゃない。
「えーと、人と待ち合わせしてるんです」
女の子は少し困った顔をしながら定番の拒否をしてきた。だが、拒否されるなんて初めから分かってる。なにせ、今日で三度目の拒否だからな!
俺の顔はどうせ平凡だって分かってるんだよ!
先輩は、ややあれな顔でも、ちゃんと女の子を連れてくるから、仕事は顔ではないはずだ。
「ちょっとだけだって。ひとまず面接だけだし。稼げるよ?」
「え。…そういうのは、ちょっと…」
夜の仕事の誘いだと分かったとたんに女の子の顔はあからさまに嫌そうになった。
いいじゃん。男に媚びうってれば簡単に稼げるのだよ。可愛い顔に生まれてラッキーじゃないか。
「ね。とにかく、話だけでも聞いてよ。安全なシャラフ様経営のとこだよ」
シャラフ様っつーのは、夜の街のボスって感じ。すげー怖い人らしいけど、そこまで非道なことはしないって、先輩も慕ってるくらいだ。
シャリフの評価は、同じ部類の人からは憧れるような存在であるが、一般人からすると十分危険人物だ。
じれたリンメルは女の子の手首を掴んだ。
しかし。
「いってえええ!」
横から殴られ尻餅をつくことになったリンメル。
嘘だろ。待ち合わせの相手、男かよ。つーか手ぇ早いな。先輩より早くね?
「は、クズが。か弱い女をどうしようってんだ」
「ランス! 怖かった…」
「もう大丈夫だ」
野郎は正義だと言わんばかりだけど、そのドヤ顔が台無しになってるって、分かってねえだろ。自分格好いいってひたってんだろ。
つーか、いてぇ。話しただけだろが。
「こんなクズがいるなんて危険だな」
うっせー、こっちも仕事なんだよ。
強気の言葉を頭の中で叫んでいるリンメルだが、突然に起こった痛みに、心が折れかけている。その追い打ちのように女が言葉を放つ。
「本当、最低な人ね…」
ぐはああああ。違うって!仕事だし。
リンメルはうなだれ、男女はリンメルを残しその場を離れていった。
俺は、世間では馬鹿だって思われる人種だけれども、そこまで馬鹿じゃないんだって!
こういう商売とかしている連中には、失敗して捕まってやばいことになって、フルボッコされても、怪我治ったら忘れる奴多いけど、俺はそんなイカれた連中とは違う。
俺は繊細なんだよ。女の子に拒否されるのもきついんだって。
なんで先輩とか女の子に暴言言われても平気でへらへらしてられるんだろ。
それも才能なのか?え、俺この仕事向いてない?繊細だしなー。
…はあ、もう帰ろ。
立ち上がったリンメルは、夜の街を背中を若干丸めてよたよたと歩いて帰っていく。
悪ガキの部類であるリンメル。
悪い連中とつるみ、盗みも度々してきている。しかし度胸もなければ失敗した時の精神的ダメージを受けやすいので、そんなに大胆なことをしたことはない。本人は、悪いことをして、楽して金を手に入れたいと常に思っているが。
寂れているがそれなりに大きな建物の中にある小さな部屋に、リンメルはいた。
小さな部屋の中の多くを占領する寝台の中に、もぐっている。
うっすらと目を開けたリンメルはもぞもぞと動いて、身体をずらすように寝台から降りる。
部屋には寝台以外に、机と椅子と小さな棚があるだけで、他の生活に必要なものは共同となっている。なのでリンメルはすぐに部屋を出る。
リンメルの暮らす建物は、国営学校の敷地内にある寮だ。
いくつか寮はあるが、ここは一切お金を払う必要がない。
その理由は、お金のない人向けだからだ。そのぶん安い作りなので、大抵の両親のいる子は金を払ってでも、別の寮にする。
この国では誰でも学校に行くことができ、リンメルのような者も、ただでメシが食えるからと通うのだ。
朝メシを食べたリンメルは学校に行くのではなく、学校敷地に隣接している庭園へと向かった。
今日は学校をさぼった。まだ精神が弱ってるのだという理由だ。
久しぶりに庭園にやってきた。国営で市民に解放されていて広い。
庭園の中でも人が来ることが少ない池までやってくる。
おっちゃんいるかなー。俺は心が砕けちゃってるんだよー。
木々を潜り抜けたところに池が見え、一人の男が釣りをしていた。
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