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呼ぶ人
呼ぶ人3転校生
しおりを挟む「どうしたんだろ? いつも大人しいのに…」
「本来、人に懐く種じゃないからだ。気高い幻獣、ハルヴァンだ」
「そうなんですか。僕は知らなくて」
「そりゃ知る人間は少ない。なんにせよ。これが魔物の正体には違いなさそうだ。夜に現れるのは、きっと幻獣界と繋がるのがその時間なんだろうな。お前に懐いた理由は分からないが」
繋がった理由は偶然だろうと、男は考える。時々そういう場所があるのだ。
「それじゃあ、これからもシェンはここにいていいですか?」
「まあ、問題になってないしな。いいんじゃないか」
「よかった…」
「それで、幻獣のほうはいいとして、お前は?」
「え、え?」
「俺が誰だか知ってるか?」
「………あ!」
言われて男の姿をしっかり見ればクルクには見覚えがあった。
「知っていたか」
「生徒会長…。どうしてここに…」
その男はこの上位学部の高等部生徒会長セルツァー・カリハルフィだ。
大貴族で優秀ということで、圧倒的支持で中等部の頃から生徒会長をしていて、知らない者はいない。
「俺は仕事で遅くまで校舎にいたんだが、ここに明かりがついてるのに気づいてな。また馬鹿でも入ったのかと思ったんだ。まあ、そうではなかったが、もう遅い。帰ったらどうだ? そういえばその獣と会う為にいつもこの時間までいるのか?」
「いえ、いつもじゃ…。シェンも完全に暗くなる前から出てくるんで、その時に会うだけです」
「なら、もう用はないだろ。帰るがいい」
「は、はい。そうします。ほらシェン。僕はもう帰るよ」
一撫でしてシェンを下ろすと、理解したのか影へと姿を消した。
明かりを消して廊下へと出る。
「気をつけろよ」
「はい。ありがとうございました」
一礼して帰っていくクルク。その後ろ姿を見ながら、セルツァーは思案する。幻獣が懐くなんて普通ありえない。
例としてあるのは、召喚師に答え、契約した場合と、戦士との死闘の末、意気投合した場合などで、どちらも非常に稀。
考えられるとしたら、意気投合があることから、幻獣が気に入る要素があの小さめの平凡な男にあったということ。
とても考えられないが、興味のわいたセルツァーは調べてみようと考えた。
次の日、クルクのいる組に転校生がやってきた。綺麗な容姿の貴族である。
「これからよろしく。君は庶民らしいけど、僕は気にしないから仲良くしてね」
「は、はい。よろしく」
上から目線の転校生クリュアであったが、仲良くしようという言葉に、クルクは少しだけ期待した。これでこの学校で初めての友達ができるかもしれないと。
しかし、その期待は微妙な形となる。
クリュアはすぐに学校で有名になる。密かな噂として、クリュアは国にとって重要な人物で、その為にこの学校に転校してきたのだという。
取り巻きが何人もできて、いつもクリュアは集団となっていた。
そしてクルクは、時々クリュアに望まれ一緒にいることがあり、優しく話しかけてくれるものの、仲良く会話するというものではなく、クリュアが一方的に話すのを、クルクが聞いているというだけのものだ。
クルクの話は聞く気がなさそうで、騒がしい集団がクルクは苦手だった。さらにそんな状態にも関わらず、クリュアの取り巻きの1人となっていると周囲には思われているわけで。
「前に忠告したのに調子に乗るなんて信じられない!」
小柄で可愛らしい男子生徒がきゃんきゃんとクルクに吠える。
「俺でもそんな大胆な行動できないし。なに、そんなに貴族に擦り寄りたいわけ?」
他の生徒もクルクを囲み悪態をつく。反論しても受け入れられないのは何度も経験済みである。実際、クリュアとの仲は本当のことで、それが駄目だと言われてもどうしようもない。
「どうしようか? 身体に教えるべきかな」
「かもねー。理解できないみたいだし」
クルクを囲む生徒達が不穏な事を言いだし、クルクは身を震わせる。
突然服を掴まれ、押し倒された。さらに生徒の1人が殴ってくる。
「ぐっ…」
殴られた経験のあるクルク。この学校では初めてだけど。
身体を丸めて衝撃に耐えようとする。それに生徒はさらに攻撃をくわえようとしたが、声がかかる。
「なにをしている!」
「わっ! 生徒会長」
「きゃ! セルツァー様」
今回は廊下の隅でクルクを囲んでいたので目立っていた。
迫ってくる会長セルツァーにクルクを囲んでいた生徒は慌てて反対のほうへと逃げていく。
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