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呼ぶ人
呼ぶ人10呼ぶ人は誰
しおりを挟む「すみませんが、その情報はどこから?」
信じられないグランドはつい本当かと聞いてしまう。
「俺の独自ルートによるもので、その本人は信用できる人間ではないけど、その人間に探らせてるわけでも情報提供でもないから嘘ってことだけはない」
「そうなんですか…」
ウィンレイの言葉にまたもきっと特別な理由なのだとグランドは納得した。
「そのことで後で話をしたいけど、それよりまず、そちらの情報はどうなってるか知りたい。呼ぶ人のことはどこまで?」
「それは…、ただあいつが秘密といいながらも周りに呼ぶ人だと言い触らしてるくらいしか…」
「ああ、あのクリュア・ハルバーは呼ぶ人ではないですよ。さっき一目見ただけで分かりました」
「え? …まさか、しかし…。…いえ、あなたのことです。間違いないんでしょう。一目で見抜くとはさすがです」
「できればどのようなことで気づいたのか教えていただけませんか」
心酔するセルツァーはウィンレイに騙されるが、グランドは疑うわけではないが、気になる。
「一目で分かるだろう? なにあの下品な顔。あれなら、あの馬鹿な子のほうが可愛いものだ。あれで可愛いとか思ってるなんて信じられない」
「えっと、呼ぶ人とは顔と関係あるんですか?」
さすがにセルツァーもウィンレイの言い方が気になって自分なりに推測してみた。
「あるさ。呼ぶ人がなにか知っているの?」
全く根拠のないことをうまいこと言っている。
「たしか…、召喚能力の高い存在で、善か悪か、どんなことをなすかは未知数だとか」
「まあ、それはまだ情報が少ないだけで、ある程度記録はあるはずだ。それは今はいいとして、呼ぶ人が神に選ばれているということだ」
「はい。それがたしかだからこそ、どんな存在であるかは分からないにしても軽視はできない。そしてそれを証明するのはミルーゼ神の証が現れる。くだんのクリュアも、腕にその模様があるから呼ぶ人である可能性が高いとされた。私もそれを見ています」
「俺はまだそれを見てはいないけど、その模様が本物だとすれば、その人物はあの慈愛の神ミルーゼに愛されているということ。そんな存在があんな醜いなんてありえない」
セルツァーとグランドは思わず頷いた。たしかにあれの性格は慈愛とはほど遠い。
今適当に言っていることであるが本心でもある。
「では、本物の呼ぶ人はどこに? 存在しているのは確かなのでしょう?」
当然の疑問をグランドが口にした。
「…セルツァーは心当たりがありそうな顔だね」
「あ、いえ、そういうわけじゃ…」
根拠はなく、脳裏に浮かんだのはクルクだった。
「当たってるんじゃないか? さっきの独自ルートがね、なかなか有力な情報を手に入れたよ。この情報がなければ危なかった」
「それで…」
「ここの生徒にいるのだろう? クルクという子が」
セルツァーは息を呑む。グランドはちらりとセルツァーを見た後、話をする。
「知っています。さきほどの話からするに、性格はいいようなので、当てはまるかと」
「だろうねー。それで残念ながら、その情報はすぐにも連中に知られる。ただ向こうはその情報の信憑性は疑うだろうから、まだすぐに行動は出ないだろう。偽物の呼ぶ人も今まで何もなかったわけだしね。ただ向こうの準備がすんだらすぐに動くだろう。それまでにこちらの準備もしっかりすることだ。向こう側がどう出るか分からないから、最終的に後手になることは違いないからね」
「………それは…」
「考えられることは呼ぶ人で何かする気なんでしょう。となると、呼ぶ人はさらわれる可能性がある。護衛をすればいいでしょうか」
一時停止していたセルツァーだったが、決意した顔でウィンレイに考えを言った。
「そういうことだね。ただ、過剰な護衛は相手を警戒させ確信させるだけだ。うまいことしてくれ」
「はい。それでウィンレイ様のほうは?」
「うーん。まだ調べるのが重要だと思ってるし、調べても分からないこともあるだろう。確実に最悪の状況にはなるだろうからね。その為の準備をするよ」
確実に最悪の状況になる。防げないのだと、天才魔術師の言葉にセルツァーとグランドは眉を寄せた。
それをウィンレイは若く、そして真面目だと感じる。自分なら若くてもそうは考えない。ウィンレイは魔術師団の団長となっているが、学校は短い期間で卒業したので、まだ十分若い。
セルツァーは思い浮かぶ人の姿に心を痛め、防げないものかと口にしようとしたが、自分自身、それが難しいと分かる。ただ、それでも自分は全力で行動したいと決意した。
話し合いは夜遅くまで続き、セルツァーはウィンレイに部屋を用意しようとしたが、ウィンレイは断って夜の中に消えた。
衝撃の事実が多く、セルツァーは精神的に疲れた。まだ考えることは多い。
「グランド、呼ぶ人候補のクルクだが…」
「お前に一任しろって? さすがに風紀委員長として、警備に関することは譲りたくないんだが」
「固いこというな。こっちは知り合いなんだから守りやすい」
「完全には無理だな。お前には仕事もあるんだし、常に一緒にいられないだろう。ただ、接触するのは避けよう。それでいいな」
「…わかった。それじゃあ、警備に関してだ。ここには向こうの手がかかってる奴が多いらしいから、使う手は厳選しろよ。それが結果を左右させる」
「わかってる。それができなきゃ騎士団に入る資格はないからな」
話を2人で煮詰め終わった頃には朝になっていた。疲れたセルツァーだが、クルクのことが気になってまだ休む気にはならなかった。
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