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癒しの剣 (1) 影の森の二人
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ここはヴォルノースの影の森。魔物うごめく異形の地。
ま、それはさておいて、その中にひっそりとたたずむ魔法のお家で、いつもの二人がいつもの漫才、いえ、主従のやり取りをしています。
「あ~、腰が痛い、腰が痛い」
大魔法使いのパーパス翁が、地下の魔法書庫から食卓のある一階へ上がって来ました。言葉通り、腰をスリスリさすっています。
「ほら、ほら。そんな事はどうでもいいから、早く席について下さい。全く、さっきから何度呼んでも上がってこないんで、スープが冷めかけてしまってますよ。また温めなおすのは、ご免ですからね」
執事兼召使いのカラクリ人形シュプリンは、左手を腰にあて、右手でレードルを振り回しながらぼやきます。
「お前、何という口の利き方じゃ。もう少し、年寄りを大切にしようという気持ちはないんかの?」
空のスープ皿を前に、パーパスは口を尖らせました。こういうところは、本当に子供みたいです。
「何言ってるんですか。あなたには不老不死の魔法が掛かっているのでしょう? 見た目は確かに頑固な老人ですが、体は健康そのものの筈ですよ?」
シュプリンは作り物の口をカチカチ鳴らしながら、テーブルの真ん中に置いてある、キャロットスープの入った鍋をレードルでかき回しました。
「頑固に見えるかどうかと、健康は関係ないじゃろう。お前は何でそう、一つズレた事を言うんじゃろうな。今の木の体に変えてから、もう三十年はたっとるからして、そろそろ頭のネジが緩んできたようじゃの」
パーパスは、困ったもんじゃと言う顔をしながら、つがれたスープをすすります。そしてニッコリと笑います。シュプリンは口は悪いですが、料理の腕は一流なんです。
有能な料理人は、主人の反応に満足をしながら、
「大体あなたの腰の痛みの原因は、悪い姿勢で長い時間、本を読んだり、酷い時には寝室のベッドではなく、書庫の小さいソファーで一晩眠ってしまうからではありませんか。
あと食べ物も好き嫌いが多い。そういう不摂生が、腰の痛みに繋がっているんですよ」
と、文句を言いますが、牛肉のステーキをのせた皿を主人の前へコトリと置きました。
「あぁ、本当にお前は、古女房みたいな言い方をするな。今度新しい体を作る時には、口をロックできる仕組みでも作ろうかの」
パーパスも負けじと、へらず口を叩きます。
この二人は、いつもこんな感じなんです。それがもう何百年続いているでしょうか。
さて、あと少し二人のやり合いを聞いていたいところですが、これではキリがないので話を前に進めます。
パーパスは、赤身のステーキにナイフを入れながら、
「こんな時”癒しの剣”が、あったらなぁ」
と言いました。シュプリンが、初めて聞くアイテムの名前です。
「癒しの剣? 何ですか、それは」
シュプリンが、赤ワインをグラスにつぎながら尋ねました。
ま、それはさておいて、その中にひっそりとたたずむ魔法のお家で、いつもの二人がいつもの漫才、いえ、主従のやり取りをしています。
「あ~、腰が痛い、腰が痛い」
大魔法使いのパーパス翁が、地下の魔法書庫から食卓のある一階へ上がって来ました。言葉通り、腰をスリスリさすっています。
「ほら、ほら。そんな事はどうでもいいから、早く席について下さい。全く、さっきから何度呼んでも上がってこないんで、スープが冷めかけてしまってますよ。また温めなおすのは、ご免ですからね」
執事兼召使いのカラクリ人形シュプリンは、左手を腰にあて、右手でレードルを振り回しながらぼやきます。
「お前、何という口の利き方じゃ。もう少し、年寄りを大切にしようという気持ちはないんかの?」
空のスープ皿を前に、パーパスは口を尖らせました。こういうところは、本当に子供みたいです。
「何言ってるんですか。あなたには不老不死の魔法が掛かっているのでしょう? 見た目は確かに頑固な老人ですが、体は健康そのものの筈ですよ?」
シュプリンは作り物の口をカチカチ鳴らしながら、テーブルの真ん中に置いてある、キャロットスープの入った鍋をレードルでかき回しました。
「頑固に見えるかどうかと、健康は関係ないじゃろう。お前は何でそう、一つズレた事を言うんじゃろうな。今の木の体に変えてから、もう三十年はたっとるからして、そろそろ頭のネジが緩んできたようじゃの」
パーパスは、困ったもんじゃと言う顔をしながら、つがれたスープをすすります。そしてニッコリと笑います。シュプリンは口は悪いですが、料理の腕は一流なんです。
有能な料理人は、主人の反応に満足をしながら、
「大体あなたの腰の痛みの原因は、悪い姿勢で長い時間、本を読んだり、酷い時には寝室のベッドではなく、書庫の小さいソファーで一晩眠ってしまうからではありませんか。
あと食べ物も好き嫌いが多い。そういう不摂生が、腰の痛みに繋がっているんですよ」
と、文句を言いますが、牛肉のステーキをのせた皿を主人の前へコトリと置きました。
「あぁ、本当にお前は、古女房みたいな言い方をするな。今度新しい体を作る時には、口をロックできる仕組みでも作ろうかの」
パーパスも負けじと、へらず口を叩きます。
この二人は、いつもこんな感じなんです。それがもう何百年続いているでしょうか。
さて、あと少し二人のやり合いを聞いていたいところですが、これではキリがないので話を前に進めます。
パーパスは、赤身のステーキにナイフを入れながら、
「こんな時”癒しの剣”が、あったらなぁ」
と言いました。シュプリンが、初めて聞くアイテムの名前です。
「癒しの剣? 何ですか、それは」
シュプリンが、赤ワインをグラスにつぎながら尋ねました。
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