ヴォルノースの森の なんてことない毎日

藻ノかたり

文字の大きさ
160 / 218

魔女と奇妙な男 (37) ドラゴンとネズミ

しおりを挟む
ですが、リーダーが答える前に、

「おぉ、そりゃいい考えだ。もっとも連れて行く前に、腕の一本もへし折ってやるがな。コイツの生意気な態度には、ハラワタが煮えくり返るぜ」

と、スキンヘッドが拳をポキポキと鳴らし始めました。

「お、おい。やめ……」

髭面が制止しようとするのも聞かず、スキンヘッドは拳を振り上げレアロンめがけて突進していきます。

「バカが」

レアロンはそう言うと、右手の人差し指と中指の二本を立てて、熊のような大柄の男の突進を平然と迎えます。

「何だ、そりゃ? 何かのおまじないか?」

勝ち誇ったように怒鳴る、スキンヘッドの男。

その岩のような拳が、きゃしゃな執事の一メートル間近に迫った時、彼はその指を僅かに回しました。すると、その弧から放たれた青白い光が男を包み込みます。

次の瞬間、男の勢いはどこへやら、動きはピタリと止まりました。慣性の法則もへったくれもありません。間髪を入れず、レアロンは指を下へと軽く動かします。すると、まるで大きな金づちで上から殴られたように、スキンヘッドの男は地べたに叩きつけられました。

「はべっ!」

男が意味不明の言葉を発したかと思うと、彼は動物のような叫び声を上げます。そして、彼を包んでいた光が段々と収束するとともに、男はその場で気がふれたように悶え苦しみ始めました。

「うぎゃぁ! い、痛てぇ! 痛てぇ! 何だこりゃぁ!!」

地面に叩きつけられただけでは、こうも、のたうつはずはありません。これは明らかに、レアロンの技の効果です。

高みの見物と洒落込んでいた他の輩は度肝を抜かれました。一体何が起こったのかすら、理解できない様子です。

「だから、痛い目に遭わない内にって言ったろう? 人の忠告を聞かないからこういう事になる」

レアロンは自慢するでもなく、嘲るでもなく、冷たい目で強盗団の方を見据えました。

普通ならこんなものを見せつけられては、一目散に逃げだすしかありませんが、良くも悪くも強盗団のメンツはプロでした。彼らの本能が「やらなきゃ、やられる」と強く、自らの心にささやきかけたのです。

先ほどのような侮辱をする者、仲間の仇とばかりに罵声を浴びせる者は、誰一人としておりません。只々、恐ろしいまでの殺気を発した数人の男たちが、無言のまま一斉にレアロン向かって走り出しました。

「だから、無駄だって」

レアロンがそう言っている間にも、目のくらむような速さで彼を取り囲んだ獣たちが、一斉に渾身の力を込めて各々の武器を振り降ろします。

使い魔執事は慌てず騒がず、先ほどと同じように指をそろえ、今度は目の前でクルリとそれを丸く回しました。

「ぎっ!」

恐ろしい殺人兵器と化していた強盗たちは皆、短い悲鳴と共にスキンヘッドの男と同じく青白い光に包まれ、これまた同じく地べたに這いつくばる事となりました。

そして凄まじい嗚咽。正に獣の断末魔といった様相です。

ただ、その中にリーダー格の髭面の男はいませんでした。彼の天性の勘は、勝負になるわけがない事を察し、その足を地に堅く留めていたのです。

暫し、その場にたたずんでいたレアロンの金色の目が、数メートル離れた場所に釘付けになっていた髭面の男を睨みつけます。

もうこうなっては、蛇に睨まれた蛙、いえ、ドラゴンに睨まれたネズミの如く、髭面の男の腰は砕け、カクンとその場にヘタリ込んでしまいました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

処理中です...