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魔女と奇妙な男 (37) ドラゴンとネズミ
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ですが、リーダーが答える前に、
「おぉ、そりゃいい考えだ。もっとも連れて行く前に、腕の一本もへし折ってやるがな。コイツの生意気な態度には、ハラワタが煮えくり返るぜ」
と、スキンヘッドが拳をポキポキと鳴らし始めました。
「お、おい。やめ……」
髭面が制止しようとするのも聞かず、スキンヘッドは拳を振り上げレアロンめがけて突進していきます。
「バカが」
レアロンはそう言うと、右手の人差し指と中指の二本を立てて、熊のような大柄の男の突進を平然と迎えます。
「何だ、そりゃ? 何かのおまじないか?」
勝ち誇ったように怒鳴る、スキンヘッドの男。
その岩のような拳が、きゃしゃな執事の一メートル間近に迫った時、彼はその指を僅かに回しました。すると、その弧から放たれた青白い光が男を包み込みます。
次の瞬間、男の勢いはどこへやら、動きはピタリと止まりました。慣性の法則もへったくれもありません。間髪を入れず、レアロンは指を下へと軽く動かします。すると、まるで大きな金づちで上から殴られたように、スキンヘッドの男は地べたに叩きつけられました。
「はべっ!」
男が意味不明の言葉を発したかと思うと、彼は動物のような叫び声を上げます。そして、彼を包んでいた光が段々と収束するとともに、男はその場で気がふれたように悶え苦しみ始めました。
「うぎゃぁ! い、痛てぇ! 痛てぇ! 何だこりゃぁ!!」
地面に叩きつけられただけでは、こうも、のたうつはずはありません。これは明らかに、レアロンの技の効果です。
高みの見物と洒落込んでいた他の輩は度肝を抜かれました。一体何が起こったのかすら、理解できない様子です。
「だから、痛い目に遭わない内にって言ったろう? 人の忠告を聞かないからこういう事になる」
レアロンは自慢するでもなく、嘲るでもなく、冷たい目で強盗団の方を見据えました。
普通ならこんなものを見せつけられては、一目散に逃げだすしかありませんが、良くも悪くも強盗団のメンツはプロでした。彼らの本能が「やらなきゃ、やられる」と強く、自らの心にささやきかけたのです。
先ほどのような侮辱をする者、仲間の仇とばかりに罵声を浴びせる者は、誰一人としておりません。只々、恐ろしいまでの殺気を発した数人の男たちが、無言のまま一斉にレアロン向かって走り出しました。
「だから、無駄だって」
レアロンがそう言っている間にも、目のくらむような速さで彼を取り囲んだ獣たちが、一斉に渾身の力を込めて各々の武器を振り降ろします。
使い魔執事は慌てず騒がず、先ほどと同じように指をそろえ、今度は目の前でクルリとそれを丸く回しました。
「ぎっ!」
恐ろしい殺人兵器と化していた強盗たちは皆、短い悲鳴と共にスキンヘッドの男と同じく青白い光に包まれ、これまた同じく地べたに這いつくばる事となりました。
そして凄まじい嗚咽。正に獣の断末魔といった様相です。
ただ、その中にリーダー格の髭面の男はいませんでした。彼の天性の勘は、勝負になるわけがない事を察し、その足を地に堅く留めていたのです。
暫し、その場にたたずんでいたレアロンの金色の目が、数メートル離れた場所に釘付けになっていた髭面の男を睨みつけます。
もうこうなっては、蛇に睨まれた蛙、いえ、ドラゴンに睨まれたネズミの如く、髭面の男の腰は砕け、カクンとその場にヘタリ込んでしまいました。
「おぉ、そりゃいい考えだ。もっとも連れて行く前に、腕の一本もへし折ってやるがな。コイツの生意気な態度には、ハラワタが煮えくり返るぜ」
と、スキンヘッドが拳をポキポキと鳴らし始めました。
「お、おい。やめ……」
髭面が制止しようとするのも聞かず、スキンヘッドは拳を振り上げレアロンめがけて突進していきます。
「バカが」
レアロンはそう言うと、右手の人差し指と中指の二本を立てて、熊のような大柄の男の突進を平然と迎えます。
「何だ、そりゃ? 何かのおまじないか?」
勝ち誇ったように怒鳴る、スキンヘッドの男。
その岩のような拳が、きゃしゃな執事の一メートル間近に迫った時、彼はその指を僅かに回しました。すると、その弧から放たれた青白い光が男を包み込みます。
次の瞬間、男の勢いはどこへやら、動きはピタリと止まりました。慣性の法則もへったくれもありません。間髪を入れず、レアロンは指を下へと軽く動かします。すると、まるで大きな金づちで上から殴られたように、スキンヘッドの男は地べたに叩きつけられました。
「はべっ!」
男が意味不明の言葉を発したかと思うと、彼は動物のような叫び声を上げます。そして、彼を包んでいた光が段々と収束するとともに、男はその場で気がふれたように悶え苦しみ始めました。
「うぎゃぁ! い、痛てぇ! 痛てぇ! 何だこりゃぁ!!」
地面に叩きつけられただけでは、こうも、のたうつはずはありません。これは明らかに、レアロンの技の効果です。
高みの見物と洒落込んでいた他の輩は度肝を抜かれました。一体何が起こったのかすら、理解できない様子です。
「だから、痛い目に遭わない内にって言ったろう? 人の忠告を聞かないからこういう事になる」
レアロンは自慢するでもなく、嘲るでもなく、冷たい目で強盗団の方を見据えました。
普通ならこんなものを見せつけられては、一目散に逃げだすしかありませんが、良くも悪くも強盗団のメンツはプロでした。彼らの本能が「やらなきゃ、やられる」と強く、自らの心にささやきかけたのです。
先ほどのような侮辱をする者、仲間の仇とばかりに罵声を浴びせる者は、誰一人としておりません。只々、恐ろしいまでの殺気を発した数人の男たちが、無言のまま一斉にレアロン向かって走り出しました。
「だから、無駄だって」
レアロンがそう言っている間にも、目のくらむような速さで彼を取り囲んだ獣たちが、一斉に渾身の力を込めて各々の武器を振り降ろします。
使い魔執事は慌てず騒がず、先ほどと同じように指をそろえ、今度は目の前でクルリとそれを丸く回しました。
「ぎっ!」
恐ろしい殺人兵器と化していた強盗たちは皆、短い悲鳴と共にスキンヘッドの男と同じく青白い光に包まれ、これまた同じく地べたに這いつくばる事となりました。
そして凄まじい嗚咽。正に獣の断末魔といった様相です。
ただ、その中にリーダー格の髭面の男はいませんでした。彼の天性の勘は、勝負になるわけがない事を察し、その足を地に堅く留めていたのです。
暫し、その場にたたずんでいたレアロンの金色の目が、数メートル離れた場所に釘付けになっていた髭面の男を睨みつけます。
もうこうなっては、蛇に睨まれた蛙、いえ、ドラゴンに睨まれたネズミの如く、髭面の男の腰は砕け、カクンとその場にヘタリ込んでしまいました。
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