ヴォルノースの森の なんてことない毎日

藻ノかたり

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魔女と奇妙な男 (48) 颯爽と

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「クレオンさん!」

ネリスが、喜びとも驚きともつかない声を上げました。一時はクレオンが化け物ではないかと疑っていたネリスですが、今はクレオンが救世主のように神々しい光を放っています。ネリスは屋敷のロビーで見た、彼とレアロンとの一戦を承知していますからね。

「お待たせ、ネリス君。よく頑張ったね」

相も変わらない軽い口調も、今は心に染み入るネリスです。

「お待たせじゃありません! 今まで、何処をほっつき歩いてたんですか!」

涙が出るほど頼もしい味方の登場ですが、つい不満を垂れてしまうネリスです。

「何処も、ほっつき歩いちゃいないよ。僕はずっと君を監視し続けていたさ。もっとも上の婆さん連中に報告するためってよりも、そっちの化け物くんを探る目的でね」

クレオンが、場違いとも言える笑みを新米魔女に投げかけます。

その言葉を聞いたメサイトは、

「オレを探るだって? はぁ、お前はその小娘に付きまとっていた野郎だな。最近、見かけなかったがどういうこった?」

と、いぶかります。自分を一瞬でも怯ませた男に、興味をもったようですね。

「言葉の通りだよ、化け物くん。

君がネリス君をつけ狙っているのは、先刻承知だったんでね。取りあえずは君にわざと僕の姿を見せた後に姿を消せば、油断して大胆な行動に出ると思ったんだ。

そしたら案の定、こういう結果になったわけさ」

クレオンが、これまたにこやかに、化け物へと言葉を投げかけます。

「油断? 冗談じゃない。そんなものはしてないぞ。まぁ、確かにお前がいる内は正体も分からなかったんで、多少慎重にはなったがな」

自分の振る舞いを、見透かされたように思ったのでしょう。メサイトの口調が、少しきつくなりました。

「あぁ、やっぱり気づいてなかったわけね。僕は君がネリス君を尾行している時は、必ずその後ろから付いて行っていたんだけどね。ネリス君にも気づかれないよう、細心の注意を払ってさ。

もっとも暗闇の脇道でネリス君と君が鉢合わせした時は、さすがにヤバイと思ったんだが、そこはサジル商会長が助けてくれたんでホッとしたよ」

クレオンが化け物を、小ばかにするように言いました。

「う、嘘をつけ! 偉大な姿の時のオレが、誰かの尾行に気がづかないわけない!」

メサイトは、すっかりクレオンの挑発に乗ってしまったようです。

「本当さ。だからこそ、僕は今ここにいるんだよ。それに君、まだ変だと思わないのかい? 

君がいうところの”偉大な姿”だけどさ。さっきから何回かそうなっているわけだけど、僕の気配を感じなかったろ?」

化け物は、ハッとします。この姿の時、彼はかなり離れた場所にいるネリスとサジルの気配を感じ取り、更には会話まで聞こえておりました。それだけ感知能力が高いという事になります。

しかしクレオンの気配は、全く感じ取れませんでした。甕を持ち上げて、投げる音だってわからなかったんですからね。そうでなければ、甕の直撃を無防備のまま受けてしまうなんて事ありえません。

「て、てめぇ。一体何者だ!?」

メサイトはようやっと、彼が只の軽薄な男ではないと悟りました。

「あぁ、申し遅れた。僕は魔女協会の第三等級魔女、クレオン・ドスタールという者だ。以後お見知りおきを。……と言っても、君は捕縛されて二度と会う事はないだろうけどさ」

男の魔女が、満面の笑みを浮かべます。

「魔女? 男のくせに? それに、オレを捕縛だって?」

化け物は、相手の言動が理解できないといった風の、怪訝な顔つきになりました。

「君は見かけこそ、それなりに立派だが、おつむの方はカラッキシのようだね」

クレオンは、メサイトへの挑発をやめようとしません。

メサイトは顔を真っ赤にして、

「!!! 何だとぉ! もう一ぺん、言ってみろぉ!!」

と、激高しました。

「あぁ、これは失礼。正直なのが玉にキズって、よく言われれるんだ」

両手を開き、ヤレヤレといったポーズでおどけるレオン。
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