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魔女と奇妙な男 (50) 戦闘開始
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「あり得ないね。この薬は一度でも使えば、元の姿に戻っても痕跡が残るんだ。自信に満ちあふれ、何ものをも恐れない。そんな”何か”がな。
だけど、一度だけあった強盗役の連中には、そんなもん、ひとかけらだって感じなかったね」
”自分は特別なんだ、他の奴らとは違うんだ”と言わんばかりに、メサイトは弁舌を振るいました。
「それにな。そもそも、あのお方が”あなただけに、分け与えます。あなたには、その資格がある”と、おっしゃったんだ。
あのお方が、嘘をつくわけがない。分かるか? オレ様は、特別なんだよ!」
ネリスの頭の中では、断片的な記憶が少しずつ繋がっていきます。これまでは恐怖のあまり、メサイトの言葉は聞こえても、それを余り上手く処理できていなかったネリスでした。
「あんた、さっきから”あのお方”って言ってるけど、それ、なんなのよ。あんたたちの親玉って事?」
強力な援軍が現れたせいか、ネリスの好奇心が再び活発になっていきます。
「ちょっと、ネリス君。それはさっき、私が尋ねた事なんだが……」
「そんなの、誰が聞いてもいいんです!」
「あ、あぁ、そう……」
新米魔女の立ち直りの早さに、クレオンは舌を巻きます。
「親玉? そんな下品なもんじゃない。あのお方は、このヴォルノースの森を、いや、ひいては世界を統べるに値する崇高な人物なんだ」
メサイトが遠くの方を見るように、淡々と話します。どうやら彼は、あのお方と称する者に、かなり心酔しているようですね。
「だから、その”あのお方”ってのは、どこの誰かって聞いてんのよ! やっぱりあんた、おつむはカラッキシのようね」
ネリスが、もどかしそうに言いました。
「あの方の秘密を、俺が易々と漏らすわけないだろ。このクソガキが!」
おやおや。”あの方”という言葉を発した時点で秘密の一端を漏らしているし、それに加えて禁忌の薬の話もしちゃってるんですけどねぇ。
「さぁて、話は終わりだ。実はな、今俺は結構喜んでいるんだ。サジルを殺っちまうのは邪魔されたがな、こんな中年男を八つ裂きにしたって大して面白くはないだろう?
その点、クレオンだっけか? そいつは、まぁまぁ楽しめそうだ」
メサイトが舌なめずりをしながら、黒づくめの男の方に視線を流しました。力が有り余ってしょうがないといった様子です。
ただこの反応は、クレオンにとって好都合でした。もしメサイトがその気になれば、まだネリスを人質に取って立場を優位にする事は十分に可能です。しかし今の言動からすれば、メサイトはクレオンとの戦いを欲しています。早急に片を付ければ、クレオンやネリスにとって望ましい結末となるでしょう。
「じゃ、お言葉に甘えて」
クレオンは、そう言い終えるか終えない内に、屋敷で見せたような猛ダッシュを発動します。いえ、あの時よりもずっと激しい突進です。やはりレアロンとの一戦は、本気ではなくじゃれ合いだったのです。
途端に間合いを詰められたメサイトですが、彼は薄ら笑いを浮かべます。
ドンという、肉と肉がぶつかり合う音がホールに響きました。見るとクレオン渾身の右ストレートが、両手をクロスさせた化け物に阻まれています。メサイトはニヤリと笑ったかと思うと、僅かにクレオンを押し戻した後、右の蹴りを繰り出しました。その勢いはすさまじく、当たれば全身骨折間違いなしの代物です。
「クレオンさん!」
ネリスが、思わず叫びます。
だけど、一度だけあった強盗役の連中には、そんなもん、ひとかけらだって感じなかったね」
”自分は特別なんだ、他の奴らとは違うんだ”と言わんばかりに、メサイトは弁舌を振るいました。
「それにな。そもそも、あのお方が”あなただけに、分け与えます。あなたには、その資格がある”と、おっしゃったんだ。
あのお方が、嘘をつくわけがない。分かるか? オレ様は、特別なんだよ!」
ネリスの頭の中では、断片的な記憶が少しずつ繋がっていきます。これまでは恐怖のあまり、メサイトの言葉は聞こえても、それを余り上手く処理できていなかったネリスでした。
「あんた、さっきから”あのお方”って言ってるけど、それ、なんなのよ。あんたたちの親玉って事?」
強力な援軍が現れたせいか、ネリスの好奇心が再び活発になっていきます。
「ちょっと、ネリス君。それはさっき、私が尋ねた事なんだが……」
「そんなの、誰が聞いてもいいんです!」
「あ、あぁ、そう……」
新米魔女の立ち直りの早さに、クレオンは舌を巻きます。
「親玉? そんな下品なもんじゃない。あのお方は、このヴォルノースの森を、いや、ひいては世界を統べるに値する崇高な人物なんだ」
メサイトが遠くの方を見るように、淡々と話します。どうやら彼は、あのお方と称する者に、かなり心酔しているようですね。
「だから、その”あのお方”ってのは、どこの誰かって聞いてんのよ! やっぱりあんた、おつむはカラッキシのようね」
ネリスが、もどかしそうに言いました。
「あの方の秘密を、俺が易々と漏らすわけないだろ。このクソガキが!」
おやおや。”あの方”という言葉を発した時点で秘密の一端を漏らしているし、それに加えて禁忌の薬の話もしちゃってるんですけどねぇ。
「さぁて、話は終わりだ。実はな、今俺は結構喜んでいるんだ。サジルを殺っちまうのは邪魔されたがな、こんな中年男を八つ裂きにしたって大して面白くはないだろう?
その点、クレオンだっけか? そいつは、まぁまぁ楽しめそうだ」
メサイトが舌なめずりをしながら、黒づくめの男の方に視線を流しました。力が有り余ってしょうがないといった様子です。
ただこの反応は、クレオンにとって好都合でした。もしメサイトがその気になれば、まだネリスを人質に取って立場を優位にする事は十分に可能です。しかし今の言動からすれば、メサイトはクレオンとの戦いを欲しています。早急に片を付ければ、クレオンやネリスにとって望ましい結末となるでしょう。
「じゃ、お言葉に甘えて」
クレオンは、そう言い終えるか終えない内に、屋敷で見せたような猛ダッシュを発動します。いえ、あの時よりもずっと激しい突進です。やはりレアロンとの一戦は、本気ではなくじゃれ合いだったのです。
途端に間合いを詰められたメサイトですが、彼は薄ら笑いを浮かべます。
ドンという、肉と肉がぶつかり合う音がホールに響きました。見るとクレオン渾身の右ストレートが、両手をクロスさせた化け物に阻まれています。メサイトはニヤリと笑ったかと思うと、僅かにクレオンを押し戻した後、右の蹴りを繰り出しました。その勢いはすさまじく、当たれば全身骨折間違いなしの代物です。
「クレオンさん!」
ネリスが、思わず叫びます。
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