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魔女と奇妙な男 (73) 死へ
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ただクレオンもネリスも、その事実を把握してはおりません。淡い期待を抱いても、クレオンと化け物の決着がつくまでに助けが来る望みはないのです。
しかし、何も知らないクレオンは、
”こうなったら、仕方ない。ネリスの考え通り、余りに帰りが遅ければ、コリスはレアロンを探しに来させるだろう。あいつの能力をもってすれば、この倉庫の異変に必ず気がつくはずだ。それまでは、何としてもこの化け物を押しとどめねば!”
と、覚悟を決めました。
あぁ、何という悲劇でしょう。
「さぁて、じゃぁ、メインディッシュを頂くとしようか。その後は、デザートの小娘を半殺しにしてから、強盗役と落ち合うとしよう」
メサイトが、至福の時を楽しみます。生死のわからぬアテロットの事など、微塵も気にかけてはいないようですね。
そして凄まじい風切り音と共に、化け物の拳が飛んできます。クレオンは、最初に見せた奇妙なステップと体裁きを組み合わせた技を駆使して、まずは殺人兵器と化した拳を避けました。
「ほぉ、まだ、そんな技を隠し持っていたのか。しかし、それがいつまで続くかな?」
メサイトはここぞとばかりに連打を放ち、まるで無数の岩の塊が、嵐のように乱舞する光景を見せつけます。一つでもまともに食らえば、クレオンとてお陀仏間違いなしの破壊力です。彼は防御技を駆使し、避けたり、いなしてはおりますが、ダメージは確実に蓄積されていきました。
”くそっ、レアロンの野郎、さっさと来やがれってんだ”
クレオンは心の底で悪態をつくものの、使い魔執事が彼を助けに来る事はありません。
それから二十分も経ったでしょうか。かろうじて有効な一撃を貰わないで済んでいたクレオンも、さすがに疲労困憊といった状況です。
「しつけぇ、野郎だぜ。だが、これでどうだ!」
イラつくメサイトは、いい加減にしろとばかりに、今までよりも高速でパンチを繰り出します。体力は著しく消耗しますが、彼の忍耐ももはや限界でした。
動きの鈍ったクレオンは、メサイトの拳を完全にはかわし切れず。間一髪のところで直撃だけは免れたものの、まるで小石のように勢いよく床をころがります。
「こなくそ!」
クレオンはそう口にすると、右手を強く床に打ちつけました。次に回転する力を利用して、その手を支点に体をくるりと回します。彼の動きは横から縦への回転に切り替わり、辛くもその場に留まる事が出来ました。
「ほぅ、そういう技も使えるのか。いや、面白い曲芸を色々と見せてもらったよ。だが、それも飽きた」
メサイトは面倒くさそうに言うと、膝を曲げて体をグッとかがめます。一気にクレオンとの間合いを詰めてとどめを刺す気なのです。残念ながらクレオンに、この化け物の攻撃を、避けたり受け止める力は既に残されておりません。
”ちくしょうめ。レアロンの野郎、結局間に合わなかったか。あいつがあの世に来た時にゃ、散々愚痴ってやるから憶えとけ。
もっとも、悪魔のあいつが死ぬのは何百年も先だろうか”
人は死の直前、結構どうでも良い事を考えるものなのですね。クレオンも、己の死に際の言葉に苦笑します。
あぁ、もうこれで全てが終わりです。クレオンは死に、ネリスは酷い目に遭ったあと人質にとられ、更には強盗団が既に倒された事をメサイトが知れば、当然、彼自らがコリス邸へと乗り込むでしょう。そして人質の為に、コリスもレアロンも抵抗できない。その先の事は、想像すらしたくありません。
しかし、何も知らないクレオンは、
”こうなったら、仕方ない。ネリスの考え通り、余りに帰りが遅ければ、コリスはレアロンを探しに来させるだろう。あいつの能力をもってすれば、この倉庫の異変に必ず気がつくはずだ。それまでは、何としてもこの化け物を押しとどめねば!”
と、覚悟を決めました。
あぁ、何という悲劇でしょう。
「さぁて、じゃぁ、メインディッシュを頂くとしようか。その後は、デザートの小娘を半殺しにしてから、強盗役と落ち合うとしよう」
メサイトが、至福の時を楽しみます。生死のわからぬアテロットの事など、微塵も気にかけてはいないようですね。
そして凄まじい風切り音と共に、化け物の拳が飛んできます。クレオンは、最初に見せた奇妙なステップと体裁きを組み合わせた技を駆使して、まずは殺人兵器と化した拳を避けました。
「ほぉ、まだ、そんな技を隠し持っていたのか。しかし、それがいつまで続くかな?」
メサイトはここぞとばかりに連打を放ち、まるで無数の岩の塊が、嵐のように乱舞する光景を見せつけます。一つでもまともに食らえば、クレオンとてお陀仏間違いなしの破壊力です。彼は防御技を駆使し、避けたり、いなしてはおりますが、ダメージは確実に蓄積されていきました。
”くそっ、レアロンの野郎、さっさと来やがれってんだ”
クレオンは心の底で悪態をつくものの、使い魔執事が彼を助けに来る事はありません。
それから二十分も経ったでしょうか。かろうじて有効な一撃を貰わないで済んでいたクレオンも、さすがに疲労困憊といった状況です。
「しつけぇ、野郎だぜ。だが、これでどうだ!」
イラつくメサイトは、いい加減にしろとばかりに、今までよりも高速でパンチを繰り出します。体力は著しく消耗しますが、彼の忍耐ももはや限界でした。
動きの鈍ったクレオンは、メサイトの拳を完全にはかわし切れず。間一髪のところで直撃だけは免れたものの、まるで小石のように勢いよく床をころがります。
「こなくそ!」
クレオンはそう口にすると、右手を強く床に打ちつけました。次に回転する力を利用して、その手を支点に体をくるりと回します。彼の動きは横から縦への回転に切り替わり、辛くもその場に留まる事が出来ました。
「ほぅ、そういう技も使えるのか。いや、面白い曲芸を色々と見せてもらったよ。だが、それも飽きた」
メサイトは面倒くさそうに言うと、膝を曲げて体をグッとかがめます。一気にクレオンとの間合いを詰めてとどめを刺す気なのです。残念ながらクレオンに、この化け物の攻撃を、避けたり受け止める力は既に残されておりません。
”ちくしょうめ。レアロンの野郎、結局間に合わなかったか。あいつがあの世に来た時にゃ、散々愚痴ってやるから憶えとけ。
もっとも、悪魔のあいつが死ぬのは何百年も先だろうか”
人は死の直前、結構どうでも良い事を考えるものなのですね。クレオンも、己の死に際の言葉に苦笑します。
あぁ、もうこれで全てが終わりです。クレオンは死に、ネリスは酷い目に遭ったあと人質にとられ、更には強盗団が既に倒された事をメサイトが知れば、当然、彼自らがコリス邸へと乗り込むでしょう。そして人質の為に、コリスもレアロンも抵抗できない。その先の事は、想像すらしたくありません。
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