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魔女と奇妙な男 (74) 舞い戻ったネリス
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「じゃぁな、とぼけた戦闘魔女さんよ」
メサイトが、仇敵にとどめを刺そうと両足を踏ん張ったその時です。
「ちょっと、そこの醜い化け物! こっちを見なさい!」
ホールの上の方から、突如として声が響きました。
甲高い雄叫びで名指しされたメサイトは、クレオンめがけてダッシュするのも忘れ、首を振り振り、呼びかけた主を探します。
その声が、ホールの上の小窓から発せられていると分かった時にはもう、メサイトの眼前にキラリと光る薬びんがありました。
それを小窓から投げたのは、言わずと知れたネリスです。どうやら彼女、隠れる為に上階へ行ったわけではないようですね。
カシャン!
高いところから投げつけられたビンが砕け散る、きゃしゃな音がホールに響きました。すると、どうでしょう。メサイトの顔の周りには、パチパチと花火のような炎の煌めきが幾つも現れました。
傍流でありますが、一応こういった薬品も、魔女の仕事の範疇なのですね。特に、この手のイタズラに使えそうな薬品は、ネリスの好みにピッタリでした。いつも勝手に作っては、コリスに叱られていましたけれど……。
但しこんなもの、メサイトには蚊ほどのダメージも与えられません。しかし思いもよらぬハプニングであり、化け物の注意を少しの間、クレオンから遠ざけるには十分な仕掛けでした。
眼前の化け物の醜態を、呆気にとられた表情で見つめるクレオン。
あいつ、あんなものを作るために上の階へ逃げたのか? それで僕を応援しようとでも考えて……。
驚くやら呆れるやらのクレオンでしたが、彼の考えは間違っていました。
「クレオンさん、受け取って!」
ネリスは次に、クレオンめがけて薬の入ったビンを放ります。最初に彼女が化け物へ向かって、関尺玉のような薬を投げつけたのは、クレオンにこの薬を渡すための陽動作戦だったのです。
さて、化け物にぶつけた薬や、クレオンに渡した薬。いったいネリスは、どこから調達したのでしょうか?
メサイトは先ほど”あの上には薬の倉庫と、何だかがあるはずだが……”と言いました。倉庫があるのは正にその通りなのですが、問題は”何だか”の方です。結論から言うと、二階の上、つまり三階には薬の原料になる素材と、それを使って薬を作る、それなりに立派な調合室が整備されているんですね。
なぜ、そんな設備があるのかって?
理由はですね、薬を一人一人の体の特徴、そして病気や怪我の症状に合わせてカスタマイズするためなんです。ヴォルノースの森のあちらこちらにある魔女の薬屋では、汎用薬も売っていますが「魔女の薬相談所」へ行けば、個人に合った薬も調合してもらえるんですね。
そして同じものが欲しい時、その処方箋を近くの魔女の薬屋へ持って行くと、調合品を注文できる仕組みです。
好奇心旺盛なネリスは、この倉庫へ仕事で来るたびに、色々と悪さ……じゃなく”勉強”をするために、あちこち見て回っていたのです。もっともネリスに使いを頼んだ先輩魔女たちからは”遅い!”と文句を言われる事もしばしばでしたが、ネリスにとって暖簾に腕押しだったのは言うまでもありません。
つまり、この施設を熟知していたネリスが調合室を使い、先ほどの二つの薬を作ったのです。褒められた事ではありませんが、普段の行いが役に立ったというところでしょうか。
「クレオンさん、それ飲んで!」
ネリスが投げた薬をしかと受け取ったクレオンに向かって、彼女が叫びます。
さぁ、困ったのはクレオンです。いきなり何の薬やらわからないものを飲めと言われても、おいそれと承諾は出来ません。
メサイトが、仇敵にとどめを刺そうと両足を踏ん張ったその時です。
「ちょっと、そこの醜い化け物! こっちを見なさい!」
ホールの上の方から、突如として声が響きました。
甲高い雄叫びで名指しされたメサイトは、クレオンめがけてダッシュするのも忘れ、首を振り振り、呼びかけた主を探します。
その声が、ホールの上の小窓から発せられていると分かった時にはもう、メサイトの眼前にキラリと光る薬びんがありました。
それを小窓から投げたのは、言わずと知れたネリスです。どうやら彼女、隠れる為に上階へ行ったわけではないようですね。
カシャン!
高いところから投げつけられたビンが砕け散る、きゃしゃな音がホールに響きました。すると、どうでしょう。メサイトの顔の周りには、パチパチと花火のような炎の煌めきが幾つも現れました。
傍流でありますが、一応こういった薬品も、魔女の仕事の範疇なのですね。特に、この手のイタズラに使えそうな薬品は、ネリスの好みにピッタリでした。いつも勝手に作っては、コリスに叱られていましたけれど……。
但しこんなもの、メサイトには蚊ほどのダメージも与えられません。しかし思いもよらぬハプニングであり、化け物の注意を少しの間、クレオンから遠ざけるには十分な仕掛けでした。
眼前の化け物の醜態を、呆気にとられた表情で見つめるクレオン。
あいつ、あんなものを作るために上の階へ逃げたのか? それで僕を応援しようとでも考えて……。
驚くやら呆れるやらのクレオンでしたが、彼の考えは間違っていました。
「クレオンさん、受け取って!」
ネリスは次に、クレオンめがけて薬の入ったビンを放ります。最初に彼女が化け物へ向かって、関尺玉のような薬を投げつけたのは、クレオンにこの薬を渡すための陽動作戦だったのです。
さて、化け物にぶつけた薬や、クレオンに渡した薬。いったいネリスは、どこから調達したのでしょうか?
メサイトは先ほど”あの上には薬の倉庫と、何だかがあるはずだが……”と言いました。倉庫があるのは正にその通りなのですが、問題は”何だか”の方です。結論から言うと、二階の上、つまり三階には薬の原料になる素材と、それを使って薬を作る、それなりに立派な調合室が整備されているんですね。
なぜ、そんな設備があるのかって?
理由はですね、薬を一人一人の体の特徴、そして病気や怪我の症状に合わせてカスタマイズするためなんです。ヴォルノースの森のあちらこちらにある魔女の薬屋では、汎用薬も売っていますが「魔女の薬相談所」へ行けば、個人に合った薬も調合してもらえるんですね。
そして同じものが欲しい時、その処方箋を近くの魔女の薬屋へ持って行くと、調合品を注文できる仕組みです。
好奇心旺盛なネリスは、この倉庫へ仕事で来るたびに、色々と悪さ……じゃなく”勉強”をするために、あちこち見て回っていたのです。もっともネリスに使いを頼んだ先輩魔女たちからは”遅い!”と文句を言われる事もしばしばでしたが、ネリスにとって暖簾に腕押しだったのは言うまでもありません。
つまり、この施設を熟知していたネリスが調合室を使い、先ほどの二つの薬を作ったのです。褒められた事ではありませんが、普段の行いが役に立ったというところでしょうか。
「クレオンさん、それ飲んで!」
ネリスが投げた薬をしかと受け取ったクレオンに向かって、彼女が叫びます。
さぁ、困ったのはクレオンです。いきなり何の薬やらわからないものを飲めと言われても、おいそれと承諾は出来ません。
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