ヴォルノースの森の なんてことない毎日

藻ノかたり

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魔女と奇妙な男 (84) 報復

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「もう、全部終わったんだ。クレオンが勝ち、お前はイモ虫のように惨めな姿で床に転がっている。それが現実だ」

レアロンが、冷たく言い放ちました。

「ふざけんな。そもそも、てめぇは何処のどいつだ!? 答えろ!」

メサイトの暴言は止まりません。今だに自分が置かれた状況を、正しく理解できてはいないようですね。

「俺はマダム・コリスの執事だよ。てめぇの仲間が押し入ろうとした屋敷のな」

面倒くさそうに、しかしとても冷たい目で、レアロンはメサイトの顔を睨みます。

「マダム・コリス? じゃぁ、あのネリスってガキの師匠の……」

レアロンの意外な答えに、少し戸惑うメサイトでした。

「あぁ、その強盗団も既に無力化した。お前を助けに来る奴は、もう誰もいないぞ」

レアロンがそう言うと、

「はぁ? 誰が、あんなザコどもを当てにするかってんだ。 俺はあのお方に選ばれた、メサイト様だぞ!」

と、彼は虚勢を張りますが、その時、三度レアロンの蹴りが、今度は若者の肩口に入ります。

ギャッとばかりに、情けない事この上ない悲鳴を上げる憐れな若者。

「な、何をしやがる! 許さん。許さんぞ、貴様!」

それでも虚勢だけは、未だに張り続けるメサイトでした。

レアロンはそんな若者の暴言などお構いなしに、仰向けに転がっている男の胸ぐらをつかみます。そしてグイッと、彼と顔を突き合わせました。

「てめぇが許すかどうかなんぞ、知ったこっちゃねぇんだよ。あと三十分もすれば、クレオンの通報で警察がお前を捕まえにやって来るが、このまま引き渡そうだなんて、俺は小指の先ほども考えちゃいねぇ」

メサイトの胸ぐらを握った拳にグッと力が入ったかと思うと、レアロンの体が青白く灯りはじめます。そして目は金色に光り、耳は段々と伸び、遂には翼も出現しました。彼は、悪魔の姿へと戻ったのです。

「ひっ、あ、悪魔……!」

メサイトの声が、何オクターブもあがります。

「ほぉ、悪魔の姿を知っているのか。そりゃ、意外だな。まぁ、しかしそんな事はどうでもいいさ。

……ところでよ、さっきクレオンに少し聞いたんだが、随分とネリスを可愛がってくれたみてぇだな」

氷のように冷たい息を吐きながら、レアロンが続けます。

恐ろしいその姿を見せつけられたメサイトは、本当の所、たいへん肝をつぶしておりましたが、

「あぁ、あのクソ生意気な小娘か。半殺しにしてやれなくて、本当に残念だよ。それに警察が来たって、俺は何にもしゃべらねぇぞ」

と、精一杯の憎まれ口をたたきました。

その一言に、レアロンの金色の目が、ひときわ妖しく光ります。

「そうかい。だが、てめぇには、タップリと礼をさせてもらうぞ。うちの大切な”家族”を可愛がってくれた礼をタップリとな……!」

彼の言葉を間近で聞いているメサイトの体は、既に凍傷を起こしそうなくらい冷え切っています。

しかしメサイトは、

「そ、それがどうしたってんだ。悪魔の姿なんぞ、今まで幾らだって見た事があらぁな、お、俺様がそんな事でビビるとでも……」

と、更に強気を装いました。

するとレアロンの体から発せられている青白い炎のような光が、今度は異様に赤黒くなっていきます。おっと、これはどういう事でしょう。レアロンの体が、見る間に膨れ上がっていきます。その大きさは、メサイトが変化した化け物の比ではありませんでした。

メサイトの胸ぐらをつかんでいたレアロンの手は、いつの間にか若者の体全体を握っています。彼の大きさは、ホールの天井を突き破らんとするばかりに、巨大化しておりました。
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