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逆襲の一手
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さっそく謎解きの一つ目が始まった。
「さっきも言ったように、あれは”妨害者”に対しての罠だったんだ。
妨害者は明らかにボクたちの実力を測るような行動をしている。妨害行動が極端ではあるけれど、だんだん強力かつ巧妙になっているからね。
それは警告の意味もあったんだろう。”ここらで進むのをやめておけ”っていう。
しかしボクたちは、それらを次々と突破していった。妨害者は焦ったろうし業をにやしていたと思うんだ。そこで考えたのは、奴はこの先ボクらを諦めさせる為に、どういう行動を取るだろうかって事なのさ……。
結論としては”安全地帯の破壊”
いつ来るかわからない救助を待つ身としては、安全地帯は物理的な頼みの綱であると同時に希望でもある。そこを破壊すれば、ボクたちの心はかなり萎えるよね。
だから、転ばぬ先の杖を実行したってわけなんだよ」
「それに、まんまと引っ掛ったという事なんですわね」
ポピッカは、少しだけ得心したようだ。
「だけどよ、確かにここは無事で済んだけど、他の安全地帯は危ないんじゃねぇのか」
ゲルドーシュが、もっともな意見を述べる。
「うん、全くその通り。だけどさ、ここに罠を仕掛けた後で、また上に昇って全部の安全地帯に罠を仕掛けてから再出発っていうのは難しいだろう? それだけ妨害者に次の一手を仕掛ける時間を与えてしまうからね」
「う~ん。確かにな。いくら何でもそれは無理だ」
ゲルドーシュが頷く。
「それにさ、妨害者は今すぐに是が非でもボクたちを殺そうとは思っていない事は明らかだ。だからいきなり全部の安全地帯を壊す事は、しないと踏んだんだよ。
今までの傾向からして、少しずつ追い詰めていくのが奴の手法だからね。まぁ、楽観的と言ってしまえば、それまでなんだろうけどさ。
そうなるとまず一番先に壊すのは、この地下8階の安全地帯と考えるのが普通だろ。実際、さっきの戦闘を経て、ボクたちはここへ戻って来たわけだからね。もし戻ってはみたものの、ここが滅茶苦茶になっていたとしたら、ボクたちは相当に落ち込んでいたと思うよ」
ゲルドーシュが、ウンウンと頷く。
「だから取りあえず、ここにだけに罠を仕掛けたんだ。安全地帯を守っている結界を破壊しようとする魔力を感じたら、かなり強力な炎が噴き出すようにね。だから正確には爆発ではないんだよ。爆発魔法にしてしまったら、それこそこの場所も崩落しかねないからさ」
「まぁ、でも苦労しましたよ。相手は隠ぺい魔法を得意とする奴ですからね。今まで収集した奴の隠ぺい方法のデータを解析していたので、更にその裏をかくようにしたわけです」
ボクの説明にザレドスが付け加える。もっとも、多少は自慢も入っているようだが。
「もしかして、さっき私の魔使具人形を使って、各界の安全地帯に設置させた四角くて小さい魔使具、あれと同じものがここの前にもあったんですの?」
さすが、ポピッカは既に全容を把握したようだ。
「どういう事だよ、それ」
それに引きかえ、ゲルドーシュはワケが分からぬといった表情をしている。
「あれはただ空中に浮かんでいるだけで、他に何をするものでもないんだけどね……。だが奴は間違いなくあれを見たはずだ。もしあの魔使具を奴が変に勘ぐって、安全地帯を破壊するのをやめれば、それはそれで良い事になる。
まぁ、実際にはあれを無視して安全地帯を攻撃したわけだけど、そのせいで妨害者は少なからずダメージを追ったはずだ。残った血糊と焼け焦げた布、恐らくは奴の服だと思うが、それが何よりの証拠さ。
で、そうなるとさ、奴もすぐには他の階の安全地帯を壊すのは無理だと思うんだ。ケガの治療をおしてまで、そっちを優先させるとは思えないからね」
「そうすると妨害者が他の階の安全地帯を壊そうとしても、実行するには時間が掛かるという事ですわね。その機を逃さずに、例の魔使具を各階の安全地帯の前に設置する……」
「……と、どうなるんだ?」
ポカンとした表情のゲルドーシュが、ポピッカに尋ねる。
「つまりですね。妨害者は空中に浮かんでいる魔使具を見ているはずですわね。でもそれを無視して、安全地帯を破壊する魔法を使ったわけですのよ。
で、その結果、相当なケガを負ってしまった。この状態で他の安全地帯の前にあの魔使具が浮いていたら、妨害者はどう考えると思います?」
「あぁ! また何か罠があると疑って、迂闊に攻撃できなくなるって寸法か!」
ゲルドーシュも、ようやく合点がいったようだ。
「もっとも、ポピッカに設置をお願いした魔使具の方には、簡単なセンサーがついていて、人間や亜人が近づいたら私の持っている受信機に知らせが来るようにはしているのですがね」
ザレドスが自慢の受信魔使具を手に、一つ目の謎解きを締めくくる。
「じゃぁ次は、ボクが廃魔法使いに仕掛けた罠の話」
「また、罠かい。旦那は本当に罠好きだなぁ」
捉えようによっては人聞きの悪い言い方だが、ゲルドーシュに悪気がない事は皆わかっている。
ボクは先ほどの戦闘を思い出しながら、第二の謎について話し出す。
「さっきも言ったように、あれは”妨害者”に対しての罠だったんだ。
妨害者は明らかにボクたちの実力を測るような行動をしている。妨害行動が極端ではあるけれど、だんだん強力かつ巧妙になっているからね。
それは警告の意味もあったんだろう。”ここらで進むのをやめておけ”っていう。
しかしボクたちは、それらを次々と突破していった。妨害者は焦ったろうし業をにやしていたと思うんだ。そこで考えたのは、奴はこの先ボクらを諦めさせる為に、どういう行動を取るだろうかって事なのさ……。
結論としては”安全地帯の破壊”
いつ来るかわからない救助を待つ身としては、安全地帯は物理的な頼みの綱であると同時に希望でもある。そこを破壊すれば、ボクたちの心はかなり萎えるよね。
だから、転ばぬ先の杖を実行したってわけなんだよ」
「それに、まんまと引っ掛ったという事なんですわね」
ポピッカは、少しだけ得心したようだ。
「だけどよ、確かにここは無事で済んだけど、他の安全地帯は危ないんじゃねぇのか」
ゲルドーシュが、もっともな意見を述べる。
「うん、全くその通り。だけどさ、ここに罠を仕掛けた後で、また上に昇って全部の安全地帯に罠を仕掛けてから再出発っていうのは難しいだろう? それだけ妨害者に次の一手を仕掛ける時間を与えてしまうからね」
「う~ん。確かにな。いくら何でもそれは無理だ」
ゲルドーシュが頷く。
「それにさ、妨害者は今すぐに是が非でもボクたちを殺そうとは思っていない事は明らかだ。だからいきなり全部の安全地帯を壊す事は、しないと踏んだんだよ。
今までの傾向からして、少しずつ追い詰めていくのが奴の手法だからね。まぁ、楽観的と言ってしまえば、それまでなんだろうけどさ。
そうなるとまず一番先に壊すのは、この地下8階の安全地帯と考えるのが普通だろ。実際、さっきの戦闘を経て、ボクたちはここへ戻って来たわけだからね。もし戻ってはみたものの、ここが滅茶苦茶になっていたとしたら、ボクたちは相当に落ち込んでいたと思うよ」
ゲルドーシュが、ウンウンと頷く。
「だから取りあえず、ここにだけに罠を仕掛けたんだ。安全地帯を守っている結界を破壊しようとする魔力を感じたら、かなり強力な炎が噴き出すようにね。だから正確には爆発ではないんだよ。爆発魔法にしてしまったら、それこそこの場所も崩落しかねないからさ」
「まぁ、でも苦労しましたよ。相手は隠ぺい魔法を得意とする奴ですからね。今まで収集した奴の隠ぺい方法のデータを解析していたので、更にその裏をかくようにしたわけです」
ボクの説明にザレドスが付け加える。もっとも、多少は自慢も入っているようだが。
「もしかして、さっき私の魔使具人形を使って、各界の安全地帯に設置させた四角くて小さい魔使具、あれと同じものがここの前にもあったんですの?」
さすが、ポピッカは既に全容を把握したようだ。
「どういう事だよ、それ」
それに引きかえ、ゲルドーシュはワケが分からぬといった表情をしている。
「あれはただ空中に浮かんでいるだけで、他に何をするものでもないんだけどね……。だが奴は間違いなくあれを見たはずだ。もしあの魔使具を奴が変に勘ぐって、安全地帯を破壊するのをやめれば、それはそれで良い事になる。
まぁ、実際にはあれを無視して安全地帯を攻撃したわけだけど、そのせいで妨害者は少なからずダメージを追ったはずだ。残った血糊と焼け焦げた布、恐らくは奴の服だと思うが、それが何よりの証拠さ。
で、そうなるとさ、奴もすぐには他の階の安全地帯を壊すのは無理だと思うんだ。ケガの治療をおしてまで、そっちを優先させるとは思えないからね」
「そうすると妨害者が他の階の安全地帯を壊そうとしても、実行するには時間が掛かるという事ですわね。その機を逃さずに、例の魔使具を各階の安全地帯の前に設置する……」
「……と、どうなるんだ?」
ポカンとした表情のゲルドーシュが、ポピッカに尋ねる。
「つまりですね。妨害者は空中に浮かんでいる魔使具を見ているはずですわね。でもそれを無視して、安全地帯を破壊する魔法を使ったわけですのよ。
で、その結果、相当なケガを負ってしまった。この状態で他の安全地帯の前にあの魔使具が浮いていたら、妨害者はどう考えると思います?」
「あぁ! また何か罠があると疑って、迂闊に攻撃できなくなるって寸法か!」
ゲルドーシュも、ようやく合点がいったようだ。
「もっとも、ポピッカに設置をお願いした魔使具の方には、簡単なセンサーがついていて、人間や亜人が近づいたら私の持っている受信機に知らせが来るようにはしているのですがね」
ザレドスが自慢の受信魔使具を手に、一つ目の謎解きを締めくくる。
「じゃぁ次は、ボクが廃魔法使いに仕掛けた罠の話」
「また、罠かい。旦那は本当に罠好きだなぁ」
捉えようによっては人聞きの悪い言い方だが、ゲルドーシュに悪気がない事は皆わかっている。
ボクは先ほどの戦闘を思い出しながら、第二の謎について話し出す。
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