愛の負債《完結》

アーエル

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第7話


✽・:..。o¢o。..:・✽・:..。o¢o。..:・✽・:..。o¢o。..:・


「ねえ、お聞きになりまして?」
「ミュール・カルドラ様が第二王子から婚約を破棄されたそうですわね」
「仕方がありませんわよ。ほら、兄のソフィー様が捕まりましたもの。いくら婿入りなされて縁が切れたとはいえ実兄ですもの」
「それにあのソフィー様は教室で婚約破棄なさったでしょう? そのときにはすでに不貞相手を妊娠させていて」
「『慰謝料に出産祝いに養育費まで払え』でしょう? ちょっと常識を疑いますわ」
「ええ、それを理由にカルドラ家有責による婚約破棄。アンネローラ様への慰謝料で伯爵家は法外な慰謝料を支払ったんですって。それでミュール様の慰謝料はどうなったのかしら」
「寛大なお心で慰謝料は請求されなかったそうよ。ミュール様自身の問題ではないですから」
「でも、王城への出仕およびパーティーやお茶会への参加は三十年間禁止だそうよ。禁止が解けても社交界に復帰は難しいでしょうね」

女学生たちのお茶請け話は、第二王子との婚約を破棄されたミュールの話題。
それは女学生たちにとっては朗報だった。

『第二王子の隣が空きました』

伯爵位以上の令嬢たちにとって、今度のお茶会が事実上の婚約者選びだと信じ、互いに競い合っている。
しかし、だろう。
外見を磨いたところで性格は矯正できないところまでひねくれ曲がっているのだから。


「フィンキーのやつ、結婚が延期になったらしいな」
「四番目のソフィーが女にはしったからだろ?」
「筋肉が脳を侵食したって?」
「精神が女だったからなあ」
「女の子に『大丈夫でちゅよ~』って頭を撫でられると涙が止まる軟弱野郎だろ? 総大将に根性を叩き直してもらうために伯爵が頭を下げて婚約してもらったって話だよな」
「『ボク頑張ったからご褒美ちょうだい』ってキスをねだってたのをみたぞ」
「腕立て伏せを一回できた褒美にキス一回だっけ」
「だったら俺たち毎日何百回もキスしているよなー」

伯爵家のカワイイ筋肉ムキムキのソフィーちゃんは、女性以上に軟弱だったようです。
おやおや、あちらではさらに情報をお持ちの御子息たちが盛り上がっていますねえ。

「フィンキーのやつ、いなくなったらしいな」
「結婚ができなくなったからだろ」
「三男だから婿入りの予定だったけど『実弟が罪人ではこちらまで迷惑がかかる』と断られたらしいぜ」
「仕方がないだろう? ソフィーが侯爵令嬢よりも十五年前の事件でできた士爵の女にうつつを抜かしてさ。アイツだって婚約破棄されたにしてもまだ士爵だったらなれたかもしれないのに、練習しないで実技はダントツの最下位。そしてフィンキーが努力して勝ち取った高級文官の道も、身内から犯罪者を出したことで閉ざされたんだからな」
「しかし、フィンキーもバカだろ? 高級文官はムリ。王城への出仕はムリ。それでも領地の文官の道は残されているじゃないか」
「二番目の兄貴の補佐だろ? それで婿入りできなくても嫁をもらうことができるじゃないか」

フィンキーはエリート思想の固まりだ。
私の婚約時に「ソフィーより俺の方が……!」と喚いて、我が侯爵家および伯父の公爵家の出入りは禁止されました。
それに賛同した貴族もフィンキー自身およびカルドラ伯爵家との交流を絶っています。
それの打開策が、臣籍降下によって公爵家を興す第二王子とミュールの婚約。
彼女自身は末の女の子ということですが、甘くも厳しく育てられたのを知っています。

ミュールと長兄のクレイズだけです、私に謝罪をしてきたのは。
だからこそカルドラ伯爵家は褫爵ちしゃくも降爵もなく、譲位と慰謝料で許された。
社交界は魔の巣窟。
王都で失敗しても領地で幸せになればいい。
厳しいようで温情ある処罰もその隠された意図も二人は知っている。

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