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私はこのクランから抜け出して生きられない
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「仕方がないわね。私が一緒に行ってあげるわ」
「いらん」
「え? なんでよ」
「なんで? オレたちが直接話したのはこれが初めてだ。そんな奴と誰が一緒に行きたいと思う?」
その言葉に私は驚きで固まった。
同じクランに所属するメンバーで一緒にいた。
たしかにみんなと話していたが…………彼とは目を合わせたこともない。
一度だって真正面から会話をしたことがない。
大人数でもないのに二人っきりなんてない。
屋敷でも廊下をすれ違って挨拶を交わしたこともない。
今になって、そんなことに気が付いた。
『同じクランに入れば彼と仲良くなれる』
そう思っていた私だったけど、実際には好きでもないマスターのアキュートに擦り寄り、自分の居場所をまず確保した。
そしていざ! っというところでクランからの追放……?
私の今までの努力は何?
好きでもない男に身を預け、複数の男性に媚びを売り、ときには率先して気持ちいいこともしてあげた。
そんな私の涙ぐましい努力はいったい何だったの……?
全部あなたのためよ!
あなたに振り向いてもらい、私に夢中になってもらったら、長い一目惚れを、この想いを添い遂げるつもりで……そのために頑張ってきたのよ!!!
「アキュートの女を、いやクランの愛玩具を連れていく気はないよ。だいたい、ギルドの規則ぐらい知ってるだろ?」
不快そうに表情をゆがめられる。
クランは冒険者ギルドが管理している。
そのギルドが定めた『ギルドの規則』ならもちろん知っている。
・クランを抜けた時点でそのクランとはどんな些細なことでも関わってはいけない。
・クランも抜けた者を探し出して連れ戻すことはできない。
・なんらかの理由で追放処分にした場合、今後一切声をかけてはならない。
・同時にクランを抜けた(または追放された)者同士でなければ行動を共にしてはならない。
・元のクランに関する者、たとえ抜けた後にはいった者であってもフレンドから永久削除となる。
・たとえ両者が共にクランを抜けたとしても永久削除は解消されない。
ほかにもあるが、今回該当するのはその六項目くらいだ。
たった一滴の血液が冒険者カードに登録されている。
それだけですべてが管理される。
血液が反応するため、たとえギルドに報告していなくても何かしらのペナルティが発動する。
話せるのはこれが最後。
今回、クランから追い出された彼に罪がないのは明白。
そうなれば、不当に追放したクラン側にペナルティが発動する。
「二度と話しかけないでくれ、迷惑だ」
彼が……私が一番手に入れたかった愛情が……去っていく。
…………それも城門に。
この町から出ていくというの?
そう問いたくても声が出せない。
ペナルティが発動したからだ。
この町に残って。
遠くから見つめるだけでも許して。
そんな願いは彼に届かない…………
私は、私のすべてを拒絶された。
愛する人に。
『クランの愛玩具』
それを望んだのは私だ。
その称号がある限り私はクランを離れられない。
「おーい、レイシ。落ちこぼれを嘲笑うのは終わったか?」
「え? ……嘲笑う?」
「アイツ、面白いくらいに表情をゆがませていたじゃないか」
そう笑いながらアキュートが開いた胸元から手を差し込んで直接胸を揉む。
それだけで私の身体はアキュートを、彼の下半身を求める。
「アキュート、ここでは……」
そう拒否する私の口を自身の口で塞ぐ。
深く交わされるキスに私の身体ははしたなく反応する。
そんな私に満足したのか、アキュートは私を横抱きで抱えて屋敷へと戻る。
「あんなヤツと言葉を交わした口は消毒した。これからは全身を消毒しないとな」
アキュートは私を手放したりしない。
初めての頃、彼に捨てられるのをさけるために調教を受けた。
そのときに交わした約束がある。
「私をクランから捨てないで」
「ああ、お前は俺たちが死ぬまでクランの所有物だ」
自分の言葉が契約としてアキュートと絡み付いている。
逃げない、逃げ出せない、逃げられない。
その契約はアキュートが死ぬまででなくクランが続く限り有効だ。
エルフの私はこの先何十年このクランで愛玩具としてあり続けるのだろう。
そして、何人の子を生まされるのだろう。
すでに膨らみはじめた下腹部を撫でる。
この子が女の子だったら、私と同じ道を辿る。
男の子だったら、冒険者としてクランに囚われる。
バカな私は生まれてくる子どもたちの未来すら閉ざした。
………………私はこのクランから抜け出して生きられない。
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