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第一章
最後のエスコート
しおりを挟む「マーメリア嬢から身の潔白をしめす証拠の数々を間違いなく受け取りました。それではマーメリア嬢および『オルスコット君およびフルール嬢側の証言者』の皆さん、退席を願います。準備が済み次第、オルスコット君とフルール嬢の申し立てを始めます」
そう、マーメリアに有利な証言を繰り返した彼らは原告側の用意した証言者だった。
数で押し切れる。
王太子になる自分の不利になる証言をするはずがない。
ここで恩を売っておけば、のちの出世に優位になるのだから。
オルスコットはそう信じていたのだ。
これ以上の証人は用意していない。
あるのは『誰かに破られた教科書』や『誰かに汚された私物』などの証拠物品の数々。
マーメリアの手によるものというのはフルールの証言のみだ。
舞台上にいた証言者は舞台下に作られた証言者席へ。
被告のマーメリアは原告席とは反対側の席に腰掛ける。
すでにこれは冤罪裁判であることは火を見るよりも明らかだ。
それでも、このバカげた裁判を起こした二人は続けるしかない。
裁判が始まったときにマーメリアが座っていた場所に、椅子が二脚並べて置かれる。
「1学年Cクラス所属フルール嬢、同じく1学年Cクラス所属オルスコット君。中央のイスへ」
「はい。─── オルスコット?」
「フルール嬢、私語は慎みなさい。オルスコット君、君が原告席にいるということはこの裁判は両者連名による訴えだということではないのですか」
訴えの書類には代表者だけ記名すればよい。
そのため、裁判が始まったときに原告席に座っていれば連名だととられる。
しかし、オルスコットはここにきて自身の犯したいくつかの誤りに気付いたようで顔を俯かせたままだ。
すでに間違った裁判だと判明している以上、連名だと言ってしまうとフルールと共に堕ちていくだけだ。
それでも裁判が続いている以上、嘘は吐けない。
どちらを選んでも彼の未来に待ち受けるのは王太子への道ではない。
それが分かっているからこそ、彼は立ち上がることが出来ないのだろう。
「オルスコット君、発言を許可します。この訴えは連名か否か、答えなさい」
そこに座り続けることは出来ない。
始めてしまった以上、降りることは許されない。
それは見届け人でもわかっていることだ。
「───────── 連名です」
「それでは舞台に上がりなさい」
オルスコットの声は小さいものの、この会場は静まり返っているため立ち会っている全員の耳に十分届いた。
カタンと椅子が鳴りオルスコットは立ち上がった。
不安げに自身を見つめていたフルールに腕を差し出し、紳士らしく舞台上へとエスコートする。
フルールだけは気付いていない。
これが最後のエスコートになることを。
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