学園裁判

アーエル

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第一章

果たして甘いと捉えるか厳しいと嘆くか

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「以上をもちまして学園裁判を終わります」

裁判官の言葉に会場内のあちこちから息を吐きだす音が聞こえた。
原告席にはオルスコットしかいない。
私語を繰り返したフルールは途中から退席させられたのだ。
今は学生牢で眠っているだろう。

積み重ねられたフルールの嘘はすべて証拠もなく、また論破される度に訴えが変わっていった。

「マーメリアがオルスコットと私との仲を嫉妬して……!」
「マーメリアが誰かに命令して……!」

フルールの言葉のほとんどはその二つで成り立っている。
訴えの内容も証拠は一切ないことに見届け人は驚いていた。
オルスコット自身も最初は驚いた表情をしていたが、時間が経つにつれておかしいと思ったのだろう。


判決は下った。
原告の訴えはすべて棄却。
冤罪による慰謝料として両家は通常の慰謝料の十倍の支払い命令が出された。
実際には三十件を超える訴えがあった。
それをフルールの退席後オルスコットがすべて取り下げた。
完全に言いがかりの訴えばかりだったのだ。
もしすべてをこのまま続けた場合、慰謝料だけで公爵家は破産し王家は崩壊する。



「最後に言いたいことはありますか?」
「はい、私はフルールから『マーメリアにされた』と言われる度に、事実確認もせずマーメリア嬢を問い詰めました」
「そのときにマーメリア嬢は何か反論していませんか?」
「─── しておりました。ですが私はフルールの言葉だけを鵜呑みにし、フルールの主張だけを信じ、マーメリア嬢を『嫉妬狂いの嘘吐き女』と思いこんでいました」

オルスコットの告白に見届け人の女生徒たちから睨みに似た視線を投げつけられる。
見届け人の男性たちも侮蔑の視線を向ける。

「フルールに何か訴えられる度に、マーメリア嬢のもとへ向かっては何度も怒鳴り、時として突き飛ばしたり頬を叩いたりという暴力も加えてきました。私は何をしても完璧なマーメリアに嫉妬していた。だから、苦痛で表情をゆがめる姿を見られて……嬉しかった。楽しかった。『ザマアミロ』と思い、もっと……『殺さなければ何をしても許される』と嘲笑ってきた」
「それを思い返した今、どう思っていますか?」

裁判官の言葉に一瞬だけ顔を下げようとして再び顔を上げた。
俯いたところで愚かさを露呈させたオルスコットには言い訳を口にするために残された時間はない。

「王子として以前に、人として。あの頃は自分を甘い言葉で優しくしてくれるフルールがすべてだった。『王子だから難しいことや困ったことは周りに押し付ければ良い。王子にはそうすることが許されている』。そんな言葉は私には優美に聞こえた。上手に下の者を顎で使える私は誰よりも王太子に相応しい。本気でそう思っていた」

そんなこと、上に立つ者として決して許されない考え方だ。
彼に側近はいない。
全員が彼に諫言したことで側近を解除されたのだ。

『諫言を嫌い、甘言を好むダメ王子』

それが学園内の総評価だ。
それでも王子でいられたのは、まだ学生の立場だからだ。
今回被害者として起こした裁判だったが、蓋を開けてみたら加害者側だった。
それも判決は有罪。


オルスコットは生誕祭の前でまだ12歳。
フルールは13歳だが公爵家、王族の一人だ。
だからといって許される立場ではない。
遅くても卒業と同時に廃籍されるだろう。
幽閉か平民落ちかは今後の態度で判断される。
15歳で幽閉という厳しさは果たして甘いと捉えるか厳しいと嘆くか。
それは国民の評価が決めることで、このまま幽閉だってあり得る。
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