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第一章
『真っ直ぐに生きる者には神が祝福を与える』
しおりを挟むフルールの絶望は大きかった。
13歳といえば、まだ親を見本にして親を信じている年齢だ。
そんな父に裏切られたのだから。
とはいえ、フルールも公爵家の令嬢。
自身の行動に責任がついて回ることくらいは知っている。
死者をだした彼女は、自ら一番規律の厳しい修道院へ送られることを希望した。
彼女は自身が王太子の婚約者として内定していたことを聞いて驚いたが、安堵したように息を吐いて言った。
「よかった。私みたいな愚か者が王太子妃になんかならずにすんで」
彼女のその言葉から反省がみられるとし、望んだ修道院へ送られて終生神に仕えることとなった。
「最後に何か言いたいことはあるか?」
「私の愚かな行為で多数の人を傷つけ、中には死に追いやってしまった方もいます。謝って許されないことくらい重々承知しております。皆様の未来が少しでも明るくなるよう、そして殺してしまった方の鎮魂のために神の館で人生を捧げとうございます。今まで本当に申し訳ございませんでした」
改めて、幼いがために罪の意識もなく親のマネをした結果だと理解した。
その罪は、彼女が修道院へ送られてから公爵自身に向けられた。
貴族院裁判により、公爵家は有責で結審した。
公爵夫妻は離縁、まだ若い夫人は独立を目指す女性の職業訓練施設に入所。
貴族であっても縫製や刺繍、レースなど貴族女性の嗜みでできることがあるためドレス用品店で働くか、ハンカチなどの刺繍を刺す貴婦人の小物品店などで働くことはできる。
夫にすがって生きる時代ではないのだ。
そして公爵家は2ランクダウンで伯爵位に降爵、領地は没収されて王領地となった。
もちろん責任をとって当主は交代。
公爵家の子はフルールのみだったため、遠い親戚で無爵の青年たちから王城で文官として働いていたグリックが継いだ。
伯爵となっても領地がないため彼は文官のままだ。
ただ、爵位を得たことで文官をまとめる班長のその上、総班長の地位を得た。
能力があるにも関わらず、爵位がなければ立てない地位に爵位の方が寄ってきて上がれた彼を、同僚たちは驚天動地の出来事として国内外に広めた。
それは、この騒ぎの中で唯一の吉事として喜ばれ、『真っ直ぐに生きる者には神が祝福を与える』という教えが広がった。
…………その影で、元公爵の遺体が見つかった。
彼は当主交代後に姿をくらましていたが、場末の粗末な小屋で腐敗した状態で発見された。
それでも彼らしい身体的な特徴があった。
公爵の紋をあしらった金の指輪。
売れば幾らか生活の足しにはなったその指輪をはめた彼は、それが最終的に遺体の本人確認になった。
最後まで公爵にしがみついていたかったのだろうか。
そんなもののために、彼は残りの人生を喪ったのだ。
そして彼の象徴だった指輪は溶かされて新たな形となり、誰かの装飾品になっている。
(第一章 完)
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