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第二章
この裁判は伝説に残るものとなる
しおりを挟む「ただいまより学園裁判を始めます」
今回、裁判官に選ばれたのは3学年の女生徒。
彼女は文官試験を合格し、書記官採用が内定している。
卒業間近のこの時期、彼女のように将来のレールが敷かれた生徒はいても、卒業論文まで提出して二ヶ月後の卒業まで特に予定がない生徒は少ない。
こんな時期に呼び出されて裁判に参加させられる生徒は迷惑でしかない。
…………しかしこの裁判は伝説に残るものとなる。
「ホンジョラス先生、舞台へ」
「はい、はい」
紺色のマントをつけた男性教師が舞台へ上がるとそのまま椅子に座る。
このやる気のなさを醸し出す男は、今年推薦採用によって教師になった。
専門は物理学。
しかし、実際に得意なのは『物理的な暴力』だ。
……これでなぜ教師に、それも採用試験が免除された推薦枠の教師に選ばれたのか。
学生や彼らの親たちの訴えに、学園側は彼の成績を公開した。
在学中の成績は間違いなくトップである。
さらに同級生だった者たちも声を揃えて彼を讃える。
そんな優等生の評価を貼られた彼はある日挫折する。
父親の選んだ婚約者が別の男性と駆け落ちしたのだ。
そのときから表舞台から姿を消した彼は、学園への教師、それも推薦枠という高待遇に背中を押されて表舞台に現れたのだ。
「ホンジョラス先生、宣誓がまだです。お立ちください」
「先生の宣誓が……ププッ。面白い冗談だ」
「私語は慎みなさい」
ふざけた態度は教師に就任してからそうだ。
授業も自分たちで本を読ませ、問題集を解かせる。
「この程度も理解できないのか!」
そう言って、殴る蹴る。
『睨みつけた』
『反抗的だ』
『教師をバカにしているのか!』
そんな言いがかりがまかり通る。
それが推薦教師だった。
この裁判も、そんな暴行事件を受けた生徒たちによる集団告訴だ。
通常通りに関係者、学生の保護者たちも別室にてこの裁判をモニター越しに見守っている。
ただ通常と違うことは、貴族院から裁判官も別室で同席しているという点だ。
それは教師は大人、裏を返せば貴族院裁判によって罪が問われることもある。
特に今回は教師による暴行事件が主であり、内容如何によっては貴族院裁判に委ねられる。
その線引きを裁判官役は見極めなければならない。
裁判官の言葉にカチンときたようで睨みをきかせる。
その目を裁判官の女生徒はまっすぐ見返し、「ホンジョラス先生、お立ちなさい」と命じる。
ホンジョラスはそれが気に食わないらしく、「フンッ」と鼻を鳴らして立ち上がる。
「ホンジョラス先生は学生ではありません。よって、如何なる言動もすべて証拠となり、学園裁判以外では不利になることもございます。それを承諾しますか?」
「や~だね」
ホンジョラスは宣誓を拒否する。
そうすれば裁判が始まらないと思っているのだろう。
……愚かな考えだ。
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