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第10話
しおりを挟む彼らには『自らの力で切り抜ける』という頭脳はない。
誰かがいい案を出す。
それに従うだけ。
彼らの中で誰かが言った。
「有閑マダムに買われれば裕福な生活ができるさ」と。
別の誰かが言った。
「貴族に買われればふたたび貴族に戻れる」と。
そんな甘い認識は……奴隷の認識票チップを脳に埋め込まれたことにより霧散した。
労働奴隷となった彼らは兵士だった前職を活かして、魔物の討伐で自身の慰謝料など背負った借金を返済し続けている。
チップを埋められた奴隷には、二度と解放される未来は訪れない。
その仲間に、まもなくゲーヘンが含まれる。
バッフェンは死が訪れるまで奴隷であるものの、魔道具による制限であるため、何十年かのちに自我は戻るだろう。
ゲーヘンたち、脳にチップを埋められた奴隷には……死の安らぎすら与えられない。
ダンジョン島は、地上には問題がないものの、魔物の棲むダンジョンのうちいくつかは磁気が異常な数値を叩き出している。
そこに何度も入っていれば精神が異常をきたすのも当然。
異常をきたしはじめた者は脳にチップを埋めて『普通の人間のように働かせる』。
自我は残るものの、それを表に出すことができない。
それが、罰よ。
この世界で一番重い罰。
どこかで脳にチップを埋め込まれた奴隷はここに集められる。
これもまた、魔導具の研究による実験なのよ。
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