75 / 249
第六章
第75話
しおりを挟む元々、父は自国にいた時からリンカスタを避けていた。
その『理由』に成人してから気付いた。
リンカスタは『父の後妻』になろうとしていたのだ。
その計画のために自分たちを『懐柔』しようとしたのだ。
父はそのことに気付きつつ、母を亡くした子供たちのために『気付いていないフリ』をしてきた。
それなのに、幼い自分たちは『父は冷たい』、『自分たちをリンカスタに取られたから嫌っているんだ』という、リンカスタの言葉を鵜呑みにして信じていた。
しかし、親に甘えたい年頃だった末子のアムネリアはともかく、長子であるカトレイアはリンカスタの目論見に気付いていた。
そして『次期族長』ではなく『副族長補佐』を選んだ。
それは『王城に残り国を守れる』立場だからだ。
『次期族長』になれば父と共に他国へ行くこともある。
国内でも各地を巡るため、王城にいるのは『月の半分』もない。
シルバラートは『次期族長』として他国に行って父の仕事を見て勉強していた。
しかし、その間は王城を留守にする。
その留守を預かるのが『次期族長補佐』という立場だ。
実は『族長代理』として、『族長不在』のトラブルに対応出来るだけの手腕が必要なのだ。
『天罰騒動』の時に国内が混乱しなかったのは、姉カトレイアが自分の代わりにテキパキと動いてくれたからだ。
そのおかげで自分は国民の前で失態を演じることも醜態を晒すこともなかった。
そしてそのことを姉は「良い経験をしたわね」と笑って済ませてくれた。
・・・改めて自分が『族長を譲られた』と認識せざるを得なかった。
それからは必死だった。
時間ができると過去の記録を読んでいた。
そして改めて父の手腕の凄さに驚いた。
『当事者』やそれによって実質的な被害を被った者だけでなく、数に上がらないその周囲の些細な被害者にまで気を配っている。
そして『施設の整備』などにも気を配っていた。
それは『母のこと』があるからかと思い、軽い気持ちで過去まで遡って調べていき・・・
あの施設が『事故』の半年前に新築されたばかりだったことを知った。
『事故』の前に魔獣に襲われて壊滅したと思しき村がいくつもあり、あの施設はその『被害者』たちが身を寄せ合って生活していたのだ。
当時、自分の補佐だったカトレイアにその話をした。
カトレイアは驚いていたが「そう・・・『知ってしまった』のね」と悲しそうな表情を見せた。
そんな顔は母を亡くしてから一度も見たことはなかった。
だから「すべてを知る『覚悟』はあるの?」と聞かれてすぐに頷いた。
『姉が背負うもの』を自分にも分けてほしくて。
そしてカトレイア自身が自ら『現場』まで赴き、見聞きして調べてきたことを纏めあげた書類を見せてもらった。
あの頃。『魔獣に襲われ滅ぼされた村』があまりにも増えていた。
その半数近くが『生存者のいない村』だった。
しかし『その内容』に絶句してしまった。
「・・・コレって・・・」
「ええ。だから言ったでしょ?『覚悟はあるのか?』って」
・・・こんなこと口にすることはできない。
しかし父は『そのこと』を知っているのだろうか。
そんなことを考えていたら顔に出ていたのだろう。
自分の表情を読んだ姉は大きく息を吐く。
「父上ならここに書いてある内容全てご存知だったわ」
「・・・何時から?」
「『始め』から」
もう何も言えなかった。
父も姉もこのような『重い事実』を抱えていたのか。
「なに怖い顔してるのよ」
ベロニアに声をかけられて、『考えごとの海』から引きずり戻された。
もうすぐ『執務室』の前だ。
「みんなに『話したい』ことがある」
弟妹も既に成人を迎えている。
父に守られて『何も知らずにいられた幼い子供』ではない。
父に『信頼』されるには、いつまでも『子供』でいてはいけない。
自分たちはもう『国の代表』なのだから。
・・・たとえ『辛い真実』を突きつけられたとしても。
非公開の国際会議が行われた翌日。
各国で徹底的に調査がなされた。
全大陸で『家探し』がされたのだ。
それこそ空き家も山小屋も別荘も隠れ家も王宮も子供の秘密基地も。
そして見つかった子供たち。
中には我が子に恵まれず『望まれて養子として買われた子』もいた。
しかしどんな形で生活していたとしても、子供たちは『誘拐事件の被害者』なのだ。
「家族の待つ家に帰ろう」と言われて喜ばない子はいなかった。
救出されたすべての子供たちは、誘拐されてからの記憶を完全に消された上、『部屋に閉じ込められていた』『強制労働をさせられていた』などというニセの記憶を上書きされた。
そして子供たちの無事と帰りを信じて待っている家族のもとへと帰って行った。
もちろん『子供たちを売った』身内は、子供たちが帰る前に捕縛されて投獄されている。
また『子供を買った貴族』たちは、その目的に関係なく捕縛された。
役人に賄賂を渡して罪を逃れようとする者もいたが、誰一人として成功しなかった。
そしてその屋敷で働き、子供たちの存在を知りつつ黙秘していた者も捕縛された。
そしてコーティリーン国には『歯向かえば破滅』という脅しに近い信書が各国から届いた。
今でも危亡に瀕しているのだ。
ここで下手に歯向かえば完全に滅びてしまう。
コーティリーン国は無条件で受け入れるしかなかった。
各国から集められた捜索隊がコーティリーン国内を虱潰しに調べて回り、各家庭で『隷属の首輪』をつけられて『奴隷』として扱き使われていた子供たちを助け出すことができた。
研究所で『人体実験』にされていた子供たちも見つかった。
・・・このために集められた子供たちの中で『見栄え』の良い一部が『人身売買』で貴族たちに売られていた。
そして、そのお金が『研究費用』になっていたのだ。
今の『最優先』となっていた研究は『従順に従う奴隷を作る』ことだった。
成功すれば『真っ先に『さくら様』に使うつもりだった』と研究員のひとりが自白したため・・・その研究に携わっていた全員が、『知らないうち』に『半殺し』になっていた。
もちろん、すぐ『治療師』は研究員たちを回復させたが、また『切り刻まれた』状態で治療師の前に運び込まれてきた。
このことにハンドくんたちは『関与』していない。
ハンドくんたちが『手を下す』のは『さくらに悪意を持った者』に対してのみだ。
研究員たちは『まだ何もしていない』。
そのため、ボルゴたちへの『制裁』だけで済んでいるのだ。
一人も欠けることなく救い出す事ができたのは不幸中の幸いだった。
殆どの子供たちは口にするのも憚れるほど酷い扱いを受けており、子供たちはすぐに治療師たちの治療を受けるとともに記憶の書き換えが行われた。
各地で行方不明になった子供たちの名簿と保護された子供たちの名前を照らし合わせて、全員が助け出されたのが確認されて調査隊が解散したのは、ボルゴたちの投獄から半月後というスピード解決だった。
11
あなたにおすすめの小説
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる