異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜

アーエル

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第六章

第75話

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元々、父は自国にいた時からリンカスタを避けていた。
その『理由』に成人してから気付いた。
リンカスタは『父の後妻』になろうとしていたのだ。
その計画のために自分たちを『懐柔』しようとしたのだ。
父はそのことに気付きつつ、母を亡くした子供自分たちのために『気付いていないフリ』をしてきた。
それなのに、幼い自分たちは『父は冷たい』、『自分たちをリンカスタに取られたから嫌っているんだ』という、リンカスタの言葉を鵜呑みにして信じていた。

しかし、親に甘えたい年頃だった末子のアムネリアはともかく、長子であるカトレイアはリンカスタの目論見に気付いていた。
そして『次期族長』ではなく『副族長補佐』を選んだ。
それは『王城に残り国を守れる』立場だからだ。
『次期族長』になれば父と共に他国へ行くこともある。
国内でも各地を巡るため、王城にいるのは『月の半分』もない。
シルバラートは『次期族長』として他国に行って父の仕事外交を見て勉強していた。
しかし、その間は王城を留守にする。
その留守を預かるのが『次期族長副族長補佐』という立場だ。
実は『族長代理』として、『族長不在』のトラブルに対応出来るだけの手腕が必要なのだ。

『天罰騒動』の時に国内が混乱しなかったのは、姉カトレイアが自分の代わりにテキパキと動いてくれたからだ。
そのおかげで自分は国民の前で失態を演じることも醜態を晒すこともなかった。
そしてそのことを姉は「良い経験をしたわね」と笑って済ませてくれた。

・・・改めて自分が『族長を譲られた』と認識せざるを得なかった。


それからは必死だった。
時間ができると過去の記録を読んでいた。
そして改めて父の手腕の凄さに驚いた。
『当事者』やそれによって実質的な被害をこうむった者だけでなく、数に上がらないその周囲の些細な被害者にまで気を配っている。
そして『施設の整備』などにも気を配っていた。
それは『母のこと』があるからかと思い、軽い気持ちで過去までさかのぼって調べていき・・・
あの施設が『事故』の半年前に新築されたばかりだったことを知った。
『事故』の前に魔獣に襲われて壊滅したとおぼしき村がいくつもあり、あの施設はその『被害者』たちが身を寄せ合って生活していたのだ。

当時、自分の補佐だったカトレイアにその話をした。
カトレイアは驚いていたが「そう・・・『知ってしまった』のね」と悲しそうな表情を見せた。
そんな顔は母を亡くしてから一度も見たことはなかった。
だから「すべてを知る『覚悟』はあるの?」と聞かれてすぐに頷いた。
『姉が背負うもの』を自分にも分けてほしくて。

そしてカトレイア自身が自ら『現場』までおもむき、見聞きして調べてきたことを纏めあげた書類を見せてもらった。
あの頃。『魔獣に襲われ滅ぼされた村』があまりにも増えていた。
その半数近くが『生存者のいない村』だった。
しかし『その内容』に絶句してしまった。

「・・・コレって・・・」

「ええ。だから言ったでしょ?『覚悟はあるのか?』って」

・・・こんなこと口にすることはできない。
しかし父は『そのこと』を知っているのだろうか。
そんなことを考えていたら顔に出ていたのだろう。
自分の表情を読んだ姉は大きく息を吐く。

「父上ならここに書いてある内容全てご存知だったわ」

「・・・何時いつから?」

「『始め』から」


もう何も言えなかった。

父も姉もこのような『重い事実』を抱えていたのか。



「なに怖い顔してるのよ」

ベロニアに声をかけられて、『考えごとの海』から引きずり戻された。
もうすぐ『執務室』の前だ。

「みんなに『話したい』ことがある」

弟妹も既に成人を迎えている。
父に守られて『何も知らずにいられた幼い子供』ではない。
父に『信頼』されるには、いつまでも『子供』でいてはいけない。
自分たちはもう『国の代表』なのだから。


・・・たとえ『辛い真実』を突きつけられたとしても。



非公開の国際会議が行われた翌日。
各国で徹底的に調査がなされた。
全大陸で『家探やさがし』がされたのだ。
それこそ空き家も山小屋も別荘も隠れ家も王宮も子供の秘密基地も。

そして見つかった子供たち。
中には我が子に恵まれず『望まれて養子として買われた子』もいた。
しかしどんな形で生活していたとしても、子供たちは『誘拐事件の被害者』なのだ。
「家族の待つ家に帰ろう」と言われて喜ばない子はいなかった。

救出されたすべての子供たちは、誘拐されてからの記憶を完全に消された上、『部屋に閉じ込められていた』『強制労働をさせられていた』などというニセの記憶を上書きされた。
そして子供たちの無事と帰りを信じて待っている家族のもとへと帰って行った。

もちろん『子供たちを売った』身内は、子供たちが帰る前に捕縛されて投獄されている。
また『子供を買った貴族』たちは、その目的に関係なく捕縛された。
役人に賄賂を渡して罪を逃れようとする者もいたが、誰一人として成功しなかった。
そしてその屋敷で働き、子供たちの存在を知りつつ黙秘していた者も捕縛された。

そしてコーティリーン国には『歯向かえば破滅』という脅しに近い信書が各国から届いた。
今でも危亡きぼうひんしているのだ。
ここで下手に歯向かえば完全に滅びてしまう。
コーティリーン国は無条件で受け入れるしかなかった。

各国から集められた捜索隊がコーティリーン国内をしらみ潰しに調べて回り、各家庭で『隷属れいぞくの首輪』をつけられて『奴隷』としてき使われていた子供たちを助け出すことができた。
研究所で『人体実験』にされていた子供たちも見つかった。
・・・このために集められた子供たちの中で『見栄みばえ』の良い一部が『人身売買』で貴族たちに売られていた。
そして、そのお金が『研究費用』になっていたのだ。
今の『最優先』となっていた研究は『従順に従う奴隷を作る』ことだった。
成功すれば『真っ先に『さくら様』に使うつもりだった』と研究員のひとりが自白したため・・・その研究にたずさわっていた全員が、『知らないうち』に『半殺し』になっていた。
もちろん、すぐ『治療師』は研究員たちを回復させたが、また『切り刻まれた』状態で治療師の前に運び込まれてきた。

このことにハンドくんたちは『関与』していない。
ハンドくんたちが『手を下す』のは『さくらに悪意を持った者』に対してのみだ。
研究員たちは『まだ何もしていない』。
そのため、ボルゴたちへの『制裁』だけで済んでいるのだ。


一人も欠けることなく救い出す事ができたのは不幸中のさいわいだった。
殆どの子供たちは口にするのもはばかれるほど酷い扱いを受けており、子供たちはすぐに治療師たちの治療を受けるとともに記憶の書き換えが行われた。

各地で行方不明になった子供たちの名簿と保護された子供たちの名前を照らし合わせて、全員が助け出されたのが確認されて調査隊が解散したのは、ボルゴたちの投獄から半月後というスピード解決だった。



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