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第六章
第74話
しおりを挟むしかし国外追放処分になったボルゴたちには、『さくらの世界』のサルやイヌ、ネコなどの動物たちでさえ出来る『反省』が出来なかった。
そんな知能さえない『低級脳』だったのだろう。
そのような男が何故『賓客』としてエルハイゼン国にいたのか。
・・・それこそ『人身売買』が関係していた。
他国の貴族からの『口利き』で、その国の『外交官補佐』となっていたのだ。
その貴族も『顧客』なのだろう。
そして『外交官補佐』として『特権』を使って各国を出入国していた。
その荷物の中に『眠らされた子供たち』が隠されていたようだ。
ではその彼らを庇護していた国は何処か。
それがコーティリーン国・・・ここ最近、エルハイゼン国と確執を生み出した『エルフ族』の国だった。
エルハイゼン国は国交を絶った国に招待状は送っていない。
しかしアグラマニュイ国に駐在する獣人族の外交官に送られた招待状が、どのような経由を経てボルゴの手に渡ってしまったのか分からなかった。
後の調査で判明した事だが、ボルゴはセルヴァンが『女神に愛されし娘』召喚の話を聞いてエルハイゼン国に来る直前に、アグラマニュイ国に『外交官特権』を使って入っていたのだ。
本人の『なけなしの名誉』のために証言すると、決して『獣人族族長が怖くて逃げ出した』訳ではない。
・・・『新たな被害者』を物色するためにアグラマニュイ国に入国したのだ。
それはそれで『問題』だが。
そしてアグラマニュイ国では『獣人国の外交官補佐』を騙っていたらしい。
エルハイゼン国以外とは国交の少ないアグラマニュイ国では、国内にいる数少ない獣人族が『セリスロウ国以外の外交官補佐』になっているとは思いもしなかったのだろう。
そのため『獣人族の外交官が滞在している』とエルハイゼン国に伝えられ、間違って『セリスロウ国の外交官』宛に招待状が送られたのだ。
そしてエルハイゼン国でも『アグラマニュイ国に滞在しているセリスロウ国外交官宛の正式な招待状』を持った獣人一同が、まさか『ニセモノの外交官』だとは思いもしなかったのだ。
しかし、その招待状を受け取ったことで『コーティリーン国』へ直接戻ることが出来なくなった。
その結果、アグラマニュイ国で攫われる子どもが出ずに済んだ。
アグラマニュイ国が『セルスロウ国の外交官』を受け入れていたのは、国内に点在する『洞窟』の中にいる魔物の調査のためだ。
瘴気が強くなれば、その影響で洞窟内の魔物も強くなる。
その調査のため、瘴気に強い獣人族が各国の洞窟を調査していたため、ボルゴたちを受け入れてしまったのだ。
『人身売買』事件が発覚したことで、このまま招待客として来ていた各国の代表は非公式の『国際会議』を開いた。
これまた非公開で徹底的に調査されることで話は纏まった。
それはそうだろう。
彼らが大切に思っている「さくら様が狙われた」のだから。
さくらが自由に外を出歩けるようになったと聞いて喜んだものの、それが『さらなる危険を招く』事になっては意味がない。
初めて『国際会議』に参加した獣人族の新族長は『さくら様の人気』に驚いた。
しかし『天罰騒動』でさくら様の適切な指示がなかったら、どれほど多くの村や町が混乱した魔獣や動物たちに襲われ滅ぼされたか分からない。
それをさくら様が未然に防いだのだ。
『乙女の魔石』よりさらに高価な『さくら様の魔石』を、惜しげもなく無償提供してくださったとも聞く。
そのおかげで際限なく通信が可能となり、事細かな指示や対処方法を伝えることができた。
それが被害を最小限に食い止めることに繋がったのだ。
それはセリスロウ国でも同様だった。
何が起きているのかも理解出来ない状態だったシルバラート。
国内各地から届くのは、混乱して救いを求める国民たちの声。
偉大な父の影に隠れて『次期族長』という立場を甘く見ていた自分には『どうすればいいのか』なんて分からなかった。
そんな中で父セルヴァンから通信が入った。
その瞬間、すべての感情があふれ出して「父上!助けてください!」と泣きじゃくってしまった。
落ち着くように一喝された後、父の指示通りに動いた結果、国内の被害は混乱した魔獣との戦闘で数人が軽傷を受けただけで一人の犠牲も出すことがなかった。
それは他国でも同じだったようで、普段から魔獣や魔物の被害が多い地域では『救いの女神』としてさくら様を崇めている町や村もあるそうだ。
「シルバラート殿」
国際会議が終わると鱗族の代表『リンカスタ』がシルバラートに声をかけてきた。
セリスロウ国にある湖が海と地底湖で繋がっているらしく鱗族はよく国に来ており、代表であるリンカスタもよく王城に来ていた。
何より彼女の存在は母を早く亡くした自分たちにとって『母親同様』だった。
シルバラートは拳を握った右手を胸に当てて腰を折る『この大陸式の挨拶』をしようとしたが「そんな風に畏まらないで」と止められた。
「リン!お久しぶりです!」
補佐として控えていたアムネリアがリンカスタに駆け寄る。
「アムネリア殿は変わらず元気ですね」
そう言って微笑むリンカスタ。
「アムネリア。『此処』は『セリスロウ国』ではないよ」
そう。此処は『エルハイゼン国』だ。
自国と同じ感覚でいてはいけない。
自分たちは『国の代表』として此処にいるのだから。
シルバラートに注意されると、以前に同様の理由で父を激怒させてボコボコに殴られたことを思い出し、喜びで紅潮してた顔が一瞬で真っ青になった。
「アラアラ。セルヴァン殿に『厳しく叱られた』のね」
そんなアムネリアの様子を笑って見ていたリンカスタ。
その笑顔のままシルバラートに目を戻す。
「シルバラート殿。最近、セルヴァン殿と直接お会いされまして?」
「はい。先日のパーティーが最後ですが」
「私はお会いすることも出来なかったわ」
「父は『天花』が始まってすぐに王城へ戻られましたから」
リンカスタはシルバラートの返事に不快な表情を見せる。
『お披露目』の式では、他の賓客とは違う『一段高い場所』に父たちは列席していたのだ。
そのため自分たちも父と直接会えたのはパーティー会場に出てからだ。
そして自分たちも姉カトレイアと弟ソルビトールがセリスロウ国内の現状を伝え、父に「よく国の安寧に努めている」と誉められた時に『天花』があがり、父は王城へと戻ってしまったため話は出来なかった。
そうシルバラートが話しても不快な表情は変わらない。
「いいわ。セルヴァン殿とお会いすることがあったら、前もって教えてくださるかしら?」
「はい!」
元気よく返事するアムネリア。
リンカスタはそんなアムネリアの頭を優しく撫でて「カワイイ子ね。楽しみに待っているわ」と迎賓館へ戻っていった。
自分たちはカトレイアやソルビトールが待つ執務室に足を向けた。
「ねえ。後でリンの所へ遊びに行ってもいい?」と無邪気に聞くアムネリアに、ベロニアが「私たちは『仕事』で此処にいるのよ」と冷たく言い放つ。
大好きなリンカスタに会えてテンションが上がっていたアムネリアだったが、ベロニアに窘められて大人しくなる。
そんな様子をシルバラートは自分が冷たい目で見ていることに気付かなかった。
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